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【コラム】「あきらめない姿勢」で勝ち取った優勝…U-16日本代表は「大きな財産」を手に次のステージへ

2017.06.19

優勝を果たしたU-16日本代表 [写真]=川端暁彦

 この結果を予想できたかと言えば、できていなかった。6月14日から18日まで宮城県仙台市で開催されたU-16インターナショナルドリームカップの第3回大会。オランダ、アメリカ、そしてギニアを招いて行われた4カ国の総当たり戦を制したのは、地元の日本だった。もっとも、その優勝は薄氷を踏んで渡るどころか、一度は池に落ちながら這い上がってきたような流れで掴み取ったものだった。

 第3戦、日本とギニアの試合を前に、オランダとアメリカは第1試合を消化。この段階で首位に立ったのは2勝1敗のオランダだった。2位のギニアは2勝なので、最終戦を同点で終えればPK負けでも勝ち点が入るルールなので優勝決定。逆に日本が勝つと2勝1敗で3チームが並ぶことになるが、この時点でオランダの得失点差は「+4」で、日本は「0」。つまり4点差勝利でようやく得失点差が並ぶのだが、4-0では総得点で日本が負けてしまう。このため、5点以上を取って4点差で勝つことが求められるシチュエーションだった。

 森山佳郎監督が「まず勝つことだけを意識した」と言うように、現実的にシミュレーションするのは難しい点差である。5点取ることばかりを意識してバランスを崩して3失点しましたというのでは話にならないわけで、まずは血気にはやる選手たちを抑えながら「普通に戦う」ことを意識させて試合に入った。後半開始早々にPKが決まって2-0になった時点で「ひょっとすると」という可能性は感じたそうだが、ここでもそれは口にしない。後半30分で3-0になって相手の心が折れたと観た段階からついに「あと2点!」と選手を煽ってゴールへの大攻勢を始めた。

 結局、大会MVPに輝いたFW斉藤光毅(横浜FCユース)のハットトリックなどで日本が5-0と完勝。まさかのミラクルを起こし、日本が得失点差を大逆転しての優勝を勝ち取ることとなった。オランダとの第1戦では何ともつたない試合運びで1-0から逆転負けを喫していたイレブンだが、米国との第2戦では0-2のビハインドを力強く跳ね返し、「今大会で最も力のあるチーム」(森山監督)と目されたギニアとの第3戦ではミラクルゲームを演出。日本人の特長とされる「あきらめない姿勢」を全員で示して勝ち取った結果は、選手たちの今後にとって「大きな財産になる」(森山監督)勝利経験だった。

 今回の代表チームは2001年以降に生まれた選手たちを対象にしたチーム。直接的なターゲットはなく、継続的な代表活動は行われていない年代だ。ただ、将来的には2021年のU-20ワールドカップで主軸を担い、2024年の五輪では最上級年代となる世代である。そこに国際大会での勝利経験という刺激を加えられた意義は小さくない。将来への“種まき”という意味でも、初代表の選手がズラリとそろうラインナップで成果を出したことは小さからぬ意味があった。

 そして同時に、今年秋に予定されているU-17ワールドカップに向けた人材発掘という意味でも価値のある大会だった。今回のメンバーでU-17W杯予選である昨年のAFC U-16選手権に出場していたのはMF谷本駿介(セレッソ大阪U-18)のみ。だが、大会を通じて「何人か新しく上の年代で試してみたい選手が出て来てくれた」(森山監督)。MVPを獲得した斉藤はもちろん、上の年代にいない長身ターゲットマンであるFW栗原イブラヒムジュニア(三菱養和ユース)、貴重な左利きの左SBとして能力の高さを見せた橋本柊哉(市立船橋高)といった選手たちが、その候補となりそうだ。

 充実した3試合を通して自信を深めた選手もいれば、課題を痛感した選手もいる。U-16という年代は良くも悪くも「まだまだこれから」の年代。今回得た刺激を糧として、所属チームでさらに化けてくる選手が出るかどうか。その点も楽しみにしてきたい。

文・写真=川端暁彦

By 川端暁彦

2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

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