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【コラム】世界に挑むU-16日本代表、理想を描くため「相手のサッカー」に対応する力を

2017.06.16

オランダ代表との初戦に臨んだU-16日本代表 [写真]=川端暁彦

「前半は日本のモノだった」

 U-16オランダ代表・ファンデルフェーン監督の言葉を借りるまでもない。6月14日に仙台で行われたU-16インターナショナルドリームカップ第1戦において、U-16日本代表は前半45分を終えた段階で1-0と相手をリード。「前半は守備も攻撃もコンパクトにできて、いい形で先制点も取れて、決定機も与えなかった」(森山佳郎監督)。前半だけ観れば間違いなく日本の完勝だ。しかし終わってみれば、1-3の敗戦だった。

 前半の日本には複数の決定機があったのだから、この試合について「前半のうちに2点目を決めておけば」という総括でも別に間違ってはいないだろう。日本の敗因は決定力不足。お馴染みの結論でいい。ただ、元よりサッカーはすべての決定機でゴールが生まれるようなスポーツでもない。決まらないなら決まらないなりの試合運びが必要で、ましてやこの日は1点決まっていたのだ。本来ならば、心理的余裕も持ちながらホームゲームを進めていくこともできたはずだ。だから、こう言うべきだろう。

「後半は日本の課題が出た」

 柔軟性の欠如、観察力の不足は、歴代の年代別日本代表監督が国際試合を通じた日本人の課題として挙げてきた。リオ・デ・ジャネイロ五輪を率いた手倉森誠監督然り、2014年までU-15~U-17日本代表を率いた吉武博文監督然り、2014年のU-19日本代表を率いた鈴木政一監督然り、そして先日のU-20日本代表を率いた内山篤監督然り。サッカー観や選手へのアプローチ法もそれぞれ異なる指導者たちがそろって言うのだ。「相手を観てサッカーをすることができない」と。

 練習してきた攻撃の形や準備していた戦術があるのは当然のこと。ただ、相手は人間であり、ゲームもまた生き物である。状況は変わるし、当然ながら変えてもくる。後方からしっかりパスをつなぐやり方に取り組んできたチームだとしても、相手がラインを上げて強引なプレッシングをかけてくるなら、別に裏へ蹴ってもいい。相手の守っていないところを突くのは当然のこと。また相手がこちらの守り方に合わせて攻撃のやり方を変化してきたなら、そこに対応していく必要がある。もちろんベンチワークもあるが、ハーフタイムを除けばそこを頼みにするのは限界があるし、それが前半ならばハーフタイムが来る前に食われることもしばしば起きる。

 U-16のオランダ戦は相手が後半から4-3-3の布陣を3-4-3に切り替えて日本のプレッシングを外してきた上で、さらにサイドプレーヤーにタイプの異なる選手を入れて変化を付けてきたのに対し、日本は同じ形の中で対応できぬまま敗戦に至った。FW栗原イブラヒムジュニア(三菱養和ユース)は「相手が3バックになったことでうまく追えなくなっていた。2トップの追い方を縦関係にするとか、話をして変えれば良かった」と悔やんだように、こうした戦術的な変化に対応できるかどうかは、しばしば試合の分かれ目となる。

 また左SBの橋本柊哉(市立船橋高校)は「対面がタイプの違う選手になったのに、同じ守り方をしてしまった」と振り返ったように、個の対応についても相手によって変わってくるのは当然のことだが、どうも日本人選手は相手を観ないでサッカーをしてしまう傾向がある。日本の育成年代は「自分たちのサッカーを貫く」ことがあるべき姿勢として語られることが少なくないが、この考え方はやはり狭すぎる。サッカーは己と戦う記録競技ではなく、相手あってのスポーツ。「相手のサッカー」を意識しなければ、自分たちの理想も描けない。

 U-16インターナショナルドリームカップは残り2試合。パワフルでソリッドなアメリカ代表と、アフリカ勢のギニア代表という国内では絶対に味わえないような特長を持つ、願ってもない2チームとの対戦を残している。今回のU-16代表は急造チームなので難しい要求なのは百も承知なのだが、残る2戦はピッチ上に起こる変化に対して選手たちがアクティブに対応してもらいたい。「逆境に強い選手」こそが代表チームにふさわしいのは誰もが認めることだろうけれど、それは単に根性があるとかそういうことではなく、変化に気付いて対応できる「サッカー脳」を持っているかという点も大きい。残り2試合で期待したいのは、未来の日本代表選手たちがそうした本当の強さを見せてくれることだ。

文・写真=川端暁彦

By サッカーキング編集部

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