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【コラム】本田圭佑の“険しい表情”が物語る危機感…日本代表に求められる戦い方とは

2017.06.11

現地イランでの練習に臨んだ本田圭佑(左から2人目)[写真]=元川悦子

 2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選・イラク戦(13日=イラン・テヘラン)に向け、9日から現地入りしている日本代表。10日夕方にはテヘラン郊外のコッズ・スタジアムで現地2回目のトレーニングを行った。

 この日の参加者は23人。前日ランニング途中に右足内転筋痛を訴えた長友佑都(インテル)は練習に戻って別メニューで調整したが、右下肢痛の山口蛍(セレッソ大阪)はこの日も不在。これで3日連続の練習欠席となり、イラク戦出場が危うくなってきた。

 そんな日本に追い打ちをかけるのが、テヘランの猛暑。この日も17時時点の気温は36度、湿度11パーセント。立っているだけで目まいがしそうな気象条件だった。練習開始前にピッチ上で円陣を作って気合を入れるのが通例のヴァイッド・ハリルホジッチ監督も灼熱のコンディションを回避。室内で約30分間、選手たちと話し合いの場を持った。

「監督はこうしたいけど、選手はこうしたいっていうディスカッションで長引いた。こういう(猛暑の)環境だからボールを回さないと難しいという話は選手側から出ました。全て前へ前へ急ぐことよりも、ゆっくりとボールを動かす時間帯が必要だという話もあった。まだ整理はついてないけど、(お互いの)かけあいはありましたし、いい時間だった。大丈夫だと思います」と槙野智章(浦和レッズ)はミーティングの内容をかいつまんで説明していた。

 彼が少し触れたように、凄まじい暑さの中で相手に主導権を握られようものなら、日本は間違いなく後半からバテて足が止まってしまう。1シーズンを戦い抜いた欧州組がメンバーの大半を占めるうえ、遠い日本から長時間移動してきた疲れも溜まっているだけに、その戦い方を避けるべきという選手側の考え方もよく理解できる。逆に日本がボールを支配してイラクを疲れさせることができれば、ラマダン中の相手は確実にペースダウンする。そこがまさに狙い目なのだ。

 ハリルホジッチ監督は前線からのプレッシングとデュエルを重視し、ボールを奪ってからの速い攻めを信条としているが、今回は異なる引き出しが求められる。「敵の出方や環境に合わせた戦い方をする」というサッカーの原点に立ち返って、冷静かつ慎重にイラクと対峙する術を見出すべきだろう。

 ボール保持時間を長くするアクションサッカーにシフトするのであれば、やはり本田圭佑(ミラン)の存在が非常に重要になってくる。ハリル体制では4-2-3-1の右FWを長く担ってきた彼だが、7日のシリア戦(東京)では4-3-3の右インサイドハーフで後半の30分弱プレー。新境地を開拓したと言っていい輝きを放った。今回の日本がその布陣を継続するのか、4-2-3-1に戻すのかは定かではないが、前者のインサイドハーフでも、後者のトップ下でも本田がいればボールは落ち着く。

 香川真司(ドルトムント)、長谷部誠(フランクフルト)という中盤の重要なピースを欠く今、中央のポジションで確固たる起点を作れる選手は彼しかいないと言っても過言ではない。彼自身もそういう自覚を胸に秘めているはずだ。

「(これだけ暑いんで)攻守においてコントロールしないといけないと思います。ボールを持たれている時も持たせているという意識にさせることが非常に重要かなと。それには経験が必要。若い選手が多いですし、新しい選手もいるんで、試合までのアプローチも重要になってくるかなと思います」と本田も険しい表情で言葉少なにコメントした。

 7日の欧州組合宿最終日に少し口を開いてから、メディアにほとんど話をしていなかった本田はずっと険しい表情をしていた。シリア戦後もミックスゾーンを素通りした。その胸の内には、“ハリルホジッチ監督と多少の意見の相違があっても、ボールを支配するサッカーを取り入れなければ、日本をロシアへ導くことができない”、という危機感でいっぱいだったのかもしれない。

 2014年のブラジル・ワールドカップでの惨敗以降、日本は3年がかりで方向転換を図ってきた。が、まだまだ完成形が見えていないのが実情だ。ハリルホジッチ監督の下、正解を求めて模索を続けることも大事だが、今はまず勝利という結果、ワールドカップ出場権獲得というノルマを果たすことが先決だ。そのための近道を本田ら選手たちが示してくれるのなら、それはそれで認めてもいいはずだ。今回のイラク戦は日本代表が臨機応変な戦い方のできる集団へ飛躍するための重要な試金石になりそうだ。

文=元川悦子

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