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【コラム】点取り屋としての真価が問われる岡崎…シリア戦で“覚醒のきっかけ”を掴めるか

2017.06.04

代表合宿でトレーニングを行う岡崎慎司 [写真]=野口岳彦

 5月28日から千葉県内で行われていた日本代表欧州組合宿が4日、最終日を迎えた。

 午前練習1回のみだったこの日は、右足アキレス腱痛の浅野拓磨(シュトゥットガルト)が前日に続いて欠席したものの、臀部の痛みを訴えていた香川真司(ドルトムント)は復帰。総勢14人で2人1組のパス交換やサーキットトレーニングを交えたシュート練習、狭いエリアでの7対7などを1時間半にわたって消化した。

 練習後には300人の子どもたちとの交流が行われ、本田圭佑(ミラン)が幼い少女に年齢を聞いたり、サッカー少年の頭をなでたり、岡崎慎司(レスター)が満面の笑みでサインをするなど、選手たちの素の表情が垣間見えた。7日のキリンチャレンジカップ2017・シリア戦(東京)、13日の2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選・イラク戦(テヘラン)に向け、彼らは新たな活力を得たようだ。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「今回は体を少し再生させるという意味の『リ・ジェネレーション』と言っている部類のトレーニングをやった。人数が少ない中、だんだん合流してくる形での調整になったので難しさはあった」と語りつつも、少なからず手ごたえをつかんだ様子。5日からは国内組も合流する予定で、いよいよ本格的に臨戦態勢へ入ることになる。

 イラクとの決戦を前に行われるシリア戦は日本代表にとって貴重なテストの場。クラブで出場機会の少なかった本田、ケガ上がりの今野泰幸(ガンバ大阪)や乾貴士(エイバル)、香川、浅野の状態はどうなのか、吉田麻也(サウサンプトン)とセンターバックコンビを組むのは誰なのか、長谷部誠(フランクフルト)不在のボランチの構成をどうするかなど、確認事項は山積している。

 攻撃陣の組み合わせもチェックしておきたいポイントの1つだ。3月のUAE戦(アルアイン)は大迫勇也(ケルン)を1トップに据え、右に久保裕也(ヘント)、左に原口元気(ヘルタ・ベルリン)という構成で、次のタイ戦(埼玉)は大迫の負傷離脱に伴い岡崎が先発復帰。「サコのプレーを見ていて自分が何をすればいいか明確にイメージできた」と言う岡崎は前線で起点を作り、自らゴールという結果も残した。ハリルホジッチ監督も大迫で行くべきか、それとも岡崎を再び抜擢すべきかは大いに頭を悩ませる点に違いない。だからこそ、シリア戦で岡崎を最前線に置く形に再チャレンジする可能性が少なからずあるだろう。

「前で自分がやることになった場合はある程度(ボールを)収めなければいけないと思うし、戦わないといけない。収まった後に速い攻撃ができるメンバーなんで、落としてもう1回裏を狙うとか、裏を狙って起点を作ってもいいけど、とにかく前に起点がないと攻撃が一切機能しなくなってしまう。そこは意識してやる必要がありますね」と岡崎自身もターゲットマンとしての役割を重視していくつもりだ。

 とはいえ、岡崎自身は大迫以上にゴールを奪うことに力を割くタイプ。それは原口も認めていた点だ。日本代表通算50ゴールという傑出した実績を残したFWが、単に相手を背負って落とすだけの仕事をしていたら、あまりにももったいない。本人も「今シーズン、レスターでの自分はほとんど中盤の選手だった。でも代表に来たら役割が違う」と言うだけに、周りをうまく使いながら、自分も輝く方法をこれまで以上に考えていくべきだ。

 アルベルト・ザッケローニ監督時代は左右のサイドをこなしていた岡崎だから、久保・原口の両サイドとポジションを入れ替えながらプレーすることは可能だ。久保を中に入れてマークを引き付けておいて、自分がフリーでフィニッシュに持ち込むようなパターンを出せれば、彼自身の得点可能性も上がる。今シーズン、レスターではプレミアリーグ3得点に終わった悔しさもあるだけに、何としてもゴールハンターとして覚醒するきっかけを得たいという思いは強い。

「何かをつかむ時は絶対にきっかけがある。それは誰にでも巡ってくると思うし、それを見逃さないために工夫し続けなきゃいけない。ケルンでサコと2トップを組んでいた(アントニー)モデストだって、ホッフェンハイム時代は苦労していたと僕は思うけど、今シーズンはケルンで25得点した。自分もきっかけをつかめるようにやりたいです」と背番号9をつける男は闘志を燃やした。

 もちろん右サイドが本田、左サイドが乾だったとしても、レスターの2年間で臨機応変さと柔軟性を養った岡崎なら巧みにバランスを変えられるはず。「今は面白い選手が沢山いるし、そのタイプによって攻撃の形は変わってくる」と目を輝かせる31歳のベテランストライカーが、多彩な攻めを構築するリーダーとして君臨してくれれば最高だ。

 まずは3日後のシリア戦で岡崎慎司の存在価値を再確認したいものである。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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