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【コラム】“ピッチ外”以上の注目度を示したい長友…求められる強さと頼もしさ

2017.06.02

日本代表に合流した長友佑都 [写真]=元川悦子

 6月7日の親善試合シリア代表戦(東京)、13日の2018 FIFAワールドカップ・アジア最終予選イラク代表戦(テヘラン)の日本代表2連戦が間近に迫ってきた。千葉県内で行われている欧州組合宿も6日目に突入。2日午前練習からは香川真司(ドルトムント)と長友佑都インテル)の2人も合流。バックアップメンバーの宇佐美貴史(アウグスブルク)を含め、欧州組15人全員が揃った。

 午前練には香川、長友、本田圭佑(ミラン)、原口元気(ヘルタ)の4人が参加。21分間走の後、速度の緩急をつけたダッシュ、合流順に負荷を上げたインターバルトレーニング、体幹強化が1時間半にわたって行われた。クラブで試合に出ている原口と香川、断続的に出場機会を得ている長友は軽快な走りを見せていたが、終盤ラスト2戦のみ出場の本田はやや体が重そうな様子。歯を食いしばってダッシュを繰り返す姿が目についただけにコンディションが心配だ。

 一方、午後は川島永嗣(メス)、吉田麻也(サウサンプトン)ら11人も加わり、15人でのトレーニングとなった。右足首痛が懸念される乾貴士(エイバル)はボールコントロール練習、7人ずつ2組に分かれてのビルドアップからのシュート、ハーフコートでの7対7+GKなど全メニューを消化。「やれる範囲の痛み。何でまあできるかなという感じ」と前向きな感触を口にした。この調子ならシリア戦出場は問題なさそうだ。

 同日合流の2人はサプライズ招集された加藤恒平(REC・ベロエ・スタラ・ザゴラ/ブルガリア)と初めて一緒にプレー。実戦形式で激しく削ってくる彼を目の当たりにして、長友は新たな刺激を受けたという。

「全然物怖じなくガンガン練習もやってるし、これまで厳しい経験も沢山してきたと思うんで、プレーヤーとしても人間としてもそれを感じる部分はあります。自分も雑草魂でここまで来たんで、なんか似てる部分もあるのかな」と2008年に代表入りした当時を思い出したようだ。

 そういうフレッシュな気持ちでこの2連戦に挑まなければ、国際Aマッチ93試合出場という実績を誇る彼と言えどもウカウカしてはいられない。同じ左サイドを争う酒井高徳(ハンブルガーSV)は所属クラブでキャプテンマークを巻いてブンデスリーガ1部残留の原動力になった通り、目覚ましい成長を遂げている。加えて、今回は宇賀神友弥(浦和レッズ)という新顔も参戦してくる。今季のインテルでセリエA16試合出場と在籍7シーズンでワーストに近い結果に終わったこともあり、本人も危機感は非常に強いはずだ。

「今季のインテルは監督が3回代わったんで(ロベルト・マンチーニ、フランク・デブール、ステファノ・ビオリ、ステファノ・ヴェッキ)、まずそれが大きな問題。監督が代わるたびに最初出れなかったし、長く出れないこともあった。最終的に最後の7試合は出れたんで、コンディション的にはいい形で代表に入れましたけど、この経験は今後の人生に必ず生きてくるのかなと思いますね。

 (ポジションを巡る)競争は常にある。今回だけではないし、新しい選手も来るし、そこで負けないって強い気持ちは持ってるんで、まずは練習からしっかりとアピールしないと。ガツガツやらないと(ヴァイッド・ハリルホジッチ)監督も使ってくれないし」と長友はここから一気にギアを上げていくつもりだ。

 3月のUAE代表戦(アルアイン)・タイ代表戦(埼玉)の2連戦では続けて先発フル出場を果たし、クラブでの出番が減った影響を感じさせなかった。しかし、今回も同じように行くとは限らない。最近は今年1月に結婚した妻・平愛梨さんにまつわる話題の方が世間を騒がせているだけに、今こそ本業で奮起しなければいけない時だ。6月2連戦の直後には披露宴も控えているだけに、不甲斐ない仕事ぶりを見せるわけにはいかない。長友は長友らしく、どんな状況でもブレることはない……。そんな強さと頼もしさを改めて印象付けてほしいところだ。

 代表での活躍は2018年のロシアW杯を直後に控える来季の動向に直結する。イタリアでは「長友はインテルを出るのではないか」と再三報じられ、同じセリエAのサンプドリアなどが移籍候補と言われている。本人はそれについて「クラブが必要ないのであれば荷物をまとめて出ていくだけ」と割り切っているが、来季はより出場機会にこだわらなければいけないことも理解している。

インテルのことは好きだし、僕を育ててくれたクラブという思いはありますけど、僕はサッカー選手なんで100%(残留)はない。出場可能性がそれなりに高いところでプレーするのが一番大事なことだと思っています」と率直な思いを吐露した。

 移籍か残留かは現時点では不透明だが、とにかく今回の代表戦で長友健在を強烈アピールすることは必要不可欠なテーマ。同じく去就問題の揺れる本田らとともに大いなる奮起を求めたい。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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