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【コラム】本田圭佑が隠しながらも明かした2つのトライ…サウジ戦に向けた攻撃面の収穫とは

2016.11.12

“2つのトライ”の存在を明かした本田圭佑(右) [写真]=兼子愼一郎

 4日後に迫るFIFAワールドカップ ロシア アジア最終予選、グループ首位のサウジアラビア代表との大一番。その準備試合として組まれたオマーン代表とのテストマッチで、本田圭佑ミラン)はある試みにトライしていた。

 試合後のミックスゾーンで開口一番、「次(サウジアラビア戦)のほうが大事なので、あまり多くしゃべらないほうがいいかなと思います」と語ったが、そこはサービス精神旺盛な本田である。それでもいくつかのヒントを残した。

「一番やりたかったことは“自分のポジショニング”なので、周りとの連係もそうなんですけど、なんとなく“自分の立ち位置”をいつも(のプレー)に加えたっていうところで、それはできたと思っています」

 こう語った本田は“自分のポジショニング”と“自分の立ち位置”について、もう少し踏み込んだ説明を加えた。

「わりとやれたと感じるのは、立ち位置が良かった分だけ、サイドに起点を作って、“中途半端なポジション”を取ってチャンスをクリエイトしたこと。日本の戦い方のストロングポイントの一つとして、立ち位置はすごく大事かなと。正確に言うと、“サポートの位置”は、ものすごく大事だと改めて感じましたね」

 一方、本田は周りの選手たちとの“距離感”についても言及した。

「周りとのコンビネーションはどうだったかというと、キヨ(清武弘嗣/セビージャ)も同じようなことを考えていたから、たまたまうまくいった部分もあったし、事前にその点について話してもいたので、“距離感”をそう(うまくいったと)感じたってことは意図的な部分もあったのかな」

“中途半端なポジション”と“サポートの位置”、そして“距離感”。それによってチャンスが生まれたシーンがある。それが大迫勇也(ケルン)が42分に決めた2点目の場面だ。

 中盤で永木亮太(鹿島アントラーズ)と山口蛍(セレッソ大阪)がパス交換をしているうちに右ウイングの本田がふらふらとインサイドに潜り込み、代わって右サイドに出た清武弘嗣にパスが渡る。その瞬間、飛び出した山口に清武からパスが出ると、山口のフリックを受けた本田がタメを作り、中央に走り込む清武にパス。それを清武が前線に通し、大迫が切り返してコースに流し込んだ。

 ワンタッチ、ツータッチの素早いパス交換でバイタルエリアを攻略し、最後は中央をこじ開けたこのシーンについて、本田は「(これまで)ああいうシーンは最近、皆無だった」と語って表情を緩ませた。さらに「テストマッチが組まれたことでやれたこと。それが得点につながったのは……」と続けると、サウジアラビア戦で実現できなければ意味がないと思ったのか、「でも、次が本当に大事なので。これくらいにしておこうと思います」と語って、取材を切り上げた。

 このシーン以外でも、本田がややインサイドにポジションを取ることで清武や酒井宏樹(マルセイユ)がフリーになったシーンや、清武のパスを中央で受けて山口に預けた18分のプレーや、齋藤学(横浜F・マリノス)のクロスをシュートにつなげた25分のように、本田がいつの間にかゴール前に潜り込んだりしたことで生まれたチャンスがいくつかあった。

 中盤では、指揮官が望むように手数を掛けず、シンプルにボールを前線に入れる。一方、アタッキングサードでは失われつつあったコンビネーションによる崩しにトライする――。これが、本田のトライしている試みだろう。

 最終予選に入って以来、選手たちから「ピッチでプレーするのは自分たち」といった言葉が聞かれるようになり、一方で、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も「私はあくまでもアイデアを与えているだけ」と選手の自主性を重んじるようになっている。監督の指示を実行することに精いっぱいだった段階から、指示に従いながらもアドリブを加える段階に入ってきているのだろう。

 オマーン戦でトライした攻撃パターンをどこまで突き詰めることができるか。それがサウジアラビア戦を迎えるまでの重要なテーマになる。

文=飯尾篤史

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