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世界大会を前に大きな宿題 U16日本、激闘の末の敗戦は「次の試合へのキックオフ」

2016.09.30

U-16日本代表はイラクに敗れ、ベスト4で大会を去ることとなった [写真]=JFA

 AFC U-16選手権準決勝。アジア制覇を狙ったU-16日本代表“00ジャパン”のチャレンジは強健なイラクの前に砕け散り、2-4での敗退を余儀なくされた。逆転しながらも再逆転を許すという浮き沈みの激しいゲームは、チームにとって本意な流れではなかった。

 世界切符獲得を決めた準決勝の激闘から中3日。負傷で2選手が帰国した上に、FW久保建英(FC東京U-18)も別メニュー調整が続くなど、「選手のコンディションは難しくなってきている」(森山佳郎監督)のは一目瞭然。練習を見ていても、特に中3日の真ん中の日の練習では疲労感が見え隠れし、フィジカル面で落ちてきているのは否めなかった。世界大会出場を決めたことで精神的な達成感と安堵感を得たことで、より疲労を意識するようになった部分もあったかもしれない。

 そして向けた相手は、イラク。A代表もワールドカップ予選での対戦を控えるアジアの強国は、この世代も質の高い選手をそろえる好チームに仕上がっていた。「相手のレベルとしては、これが決勝戦」と指揮官が警戒を深め、選手も「こんなにレベルの高い相手は今までいなかった」(MF鈴木冬一=セレッソ大阪U-18)と今大会最強の対戦国と認めるクオリティを持っていた。指揮官は積極的なプレスが持ち味の相手に対して、よりボールを動かせるようにという意図と、コンディション的にフレッシュな選手をということから谷本駿介(C大阪U-18)を左MFに大抜擢。博打の要素もある起用で、この試合に備えた。

 いざ、試合のフタを開けてみると、予想どおりに難しいゲームとなった。18分には最も警戒していたイラクMFムハンマド・ダウードにDFに当たってシュートコースが変わる、やや不運な形からゴールを許してしまう。

「前半なかなか自分たちのリズムでやれない中で事故のような失点をしてしまった」(森山監督)

 それでも30分にMF平川怜(FC東京U-18)のパスからFW山田寛人(C大阪U-18)が決めて同点とすると(これが日本の初めての決定機だった)、43分にも山田のクロスボールをFW宮代大聖(川崎FフロンターレU-18)がスルーする形でゴールが生まれ、前半の内に逆転してみせた。

 ただ、イラクの心は折れなかった。後半、日本が立て続けにチャンスを外したことで流れが傾く。「決定機を逸していると、しっぺ返しを食らう。それがサッカー」(森山監督)。66分にDFのハンドで与えてしまったFKの流れから同点ゴールを奪われると、攻めに出る中で相手のカウンターを許すより難しい流れに。久保を投入して攻勢を強めていたことで、「逆手に取られてしまった」(同監督)。81分、抜け出した相手FWを瀬古歩夢(C大阪U-18)がスライディングタックルで倒し、これがPKの判定。さらに瀬古は2度目の警告で退場となり、このPKを決められて2-3と再逆転を許した上に、一人少ないという状況に陥ってしまった。

 ここからも日本は諦めないで戦う姿勢を見せたが、イラクも足を止めることなく奮闘。「最後まで止まらなかった、これまで対戦した中で一番の“個”」(森山監督)であるダウードの抜け出しを許し、またもPK献上。これが決まって2-4となり、直後の日本攻勢も実らず、試合終了のホイッスルを聞くこととなった。

 ハイレベルなタレントをそろえたチームだったが、連戦の消耗もある中で後半勝負と見ていながら、その後半に力負け。世界大会を前に大きな宿題を出される、そんな結末を迎えることとなった。

 もっとも、これで手にした世界切符が消滅するわけでもない。来年秋のU-17ワールドカップ本大会へ向けて、もう一度切磋琢磨を重ねながら強くなるしかない。「失敗して強くなるのがこの年代」(森山監督)である。まだ若い彼らには、日本サッカー界が大切にしてきた古い言葉を贈りたい。

「試合終了のホイッスルは、次の試合へのキックオフの笛である」と。

文=川端暁彦

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