合宿2日目を行った日本代表。負傷した本田以外の24名が練習に参加した [写真]=三浦彩乃
6月3日のキリンカップ初戦・ブルガリア戦(豊田)まで3日。日本代表は豊田スタジアムでの31日のトレーニングから報道陣を締め出して非公開調整に乗り出すなど、本番ムードが日に日に高まっている。そんな中、30日の練習を早退したエース・本田圭佑(ミラン)がこの日も欠席。本人は「明日(6月1日)は(練習に)行くんじゃないですか」と日本代表メディアオフィサーに語ったというものの、初戦欠場の可能性は非常に高いと言わざるを得ない。
そこで問題になるのが、本田の定位置・右サイドを誰が担うかだ。今回のメンバーを見ると、所属クラブで主にサイドアタッカーを務めている原口元気(ヘルタ・ベルリン)、「FWもサイドもできる」とヴァイッド・ハリルホジッチ監督から期待を寄せられている小林悠(川崎フロンターレ)が有力候補。ただ、本田と同じレフティで、特徴も似通っている小林祐希(ジュビロ磐田)を右に回すという奇策もある。現時点では混とんとした状況なのは確かだろう。
原口は25日から参加した欧州組合宿(千葉)の期間中に指揮官と個人面談を実施。各ポジションでどのような動きをしなければならないかを確認し合ったという。「監督ともサイドやボランチの可能性があるという話をして、どちらでもできるようにイメージしながらやりたい。自分が出たら得点に必ず絡みたい。そうしないと上には行けないので。守備の部分を減らすとかはないですけど、守備も攻撃も欲張ってやっていきたい」と原口は意欲的にコメントした。実際、ヘルタでのプレーを見ていても、彼はダイナミックさと力強さ、前への推進力を強く押し出している。これはレフティの本田には出せない部分。右から一気にドリブルで持ち込んでクロスを上げる、あるいはゴール前へ抜け出すといった形が出せるのはメリットだ。

合宿2日目の練習に臨んだ小林悠。「いい準備ができている」と手応を明かした [写真]=三浦彩乃
一方、小林悠は原口よりゴールに近いところでプレーする選手。川崎でサイドに位置した時も背後に飛び出したり、サイドチェンジに鋭く反応したりと、得点に直結する仕事を担っている。それは彼の最大の長所だが、本田のように右サイドでタメを作ってリズムを変えるような仕事は期待できない。こうした役割は中央の香川真司(ドルトムント)、あるいは清武弘嗣(ハノーファー)に託して、彼はゴールに突き進むことになる。
「背後を狙うのが僕の特徴でもありますし、パスを出せる選手、崩しがうまい選手も多いので、自分の色を出すのは裏への飛び出しだったり、(ゴール前の)いいところにいること。そこはしっかり意識してやれればいいかなと思います」と本人もやるべきことを明確に頭に描いている様子だった。

代表初招集の小林祐希。合宿初日に「自分の色を出していければ」と意気込んでいた [写真]=武藤仁史
小林祐希は本田と全く同じような仕事をこなせる存在。もちろん代表経験が皆無で、周りとの連携不足といった課題はあるものの、チーム全体のバランスを崩さずにメンバーを入れ替えるという意味では彼がベストチョイスなのは事実。本人も「自分は積極性を出すしかないので、ボールを持ったらシュート、スルーパス、前へのパス、出した後に動く、守備でも厳しく行く。全てにおいて自分のマックスのクオリティを出して、ようやくみんなと同じくらいだと思う」と話していたが、それが本当にできるなら興味深いピースと言えるだろう。
この3人のいずれかが本当に本田の穴を感じさせないパフォーマンスを示してくれれば、ハリルホジッチ監督にとっても代表にとっても朗報だ。とはいえ、過去の戦いぶりを振り返ると、本田が右ひざ負傷で1年近くチームを離れた2011年9月から2012年5月までの間は相当な苦戦を余儀なくされている。2014年ブラジル・ワールドカップのアジア2次予選ではアウェーでウズベキスタンに引き分け、ホームでは敗戦、北朝鮮にもアウェーで黒星と本田不在の影響がクッキリ表れる結果となった。当時の本田は4-2-3-1のトップ下を担っていて、右サイドに固定されている現在とは起用法が異なるが、ハリルホジッチ監督も困った時には最前線に回すなど「本田依存症」の傾向は依然として強い。だからこそ、最終予選に向けて本田不在のオプションを見出しておく必要がある。

清武は「今の若い選手はすごい堂々としてる」と新戦力に期待を寄せた [写真]=三浦彩乃
「圭佑君が日本代表にとって重要な選手というのは変わりないけど、『本田がいないと…』と言われ続けるのは僕たちとしてはまずいこと。そういう選手が出なかっただけでチームが崩れるんじゃ意味がない」と清武は改めて危機感を募らせた。トップ下に入るであろう香川も「他の選手とはまだ試合や練習を重ねないと分からないところがあるんで、この3~4日間の練習でお互いの意思疎通を高めていきたい。(原口、小林悠、小林祐希は)みんなホントに能力が高いんで、真ん中の自分は生かして、自分も生かされることを意識したい。お互いの良さを引き出せるようにやっていきたいです」と中央でやるべき仕事を整理していた。
新たな構成になるであろう攻撃陣がブルガリア戦で新たな効果を示してくれるのか。もちろん本田の回復次第ではあるが、今回はあえて本田不在の右サイドを見てみたい。
文=元川悦子