2016.04.14

オリンピックのオーバーエイジってどんなルール?

U-23日本代表
ロンドン五輪では吉田(後列右から2人目)と徳永(前列左端)がオーバーエイジで出場した [写真]=Getty Images
「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まったグループ。

 11日から13日まで静岡県でトレーニングキャンプを行ったU-23日本代表。数カ月後に迫るリオデジャネイロ・オリンピックの登録メンバー18名に選ばれるためのサバイバルレースは、いよいよ佳境を迎えている。

 その一方で気になるのが、オーバーエイジの選手選考だ。日本サッカー協会の霜田正浩技術委員長は、2月の時点でオーバーエイジを招集する方針を打ち出している。すでに国内外でプレーする複数の選手が候補者として挙がっており、「一体誰が選ばれるのか(選ぶべきか)?」という議論は、正式発表があるまで尽きることがないだろう。

ところで、「オーバーエイジとは?」と尋ねられて、あなたは即答できるだろうか。

 オリンピックの男子サッカー競技の出場資格には、「本大会開催前の12月31日時点で23歳未満」という規定がある。だからオリンピック代表は別名「U-23代表」と呼ばれるわけだが、本大会に限っては、「24歳以上の選手を3名使える」という“特別ルール”が適用される。この「24歳以上の選手」をオーバーエイジ(overage)という。ただし、オーバーエイジは女子サッカーにはなく、男子サッカーにしか存在しない。元なでしこジャパンMF澤穂希さんがオリンピックに4大会出場することができたのも、そのためだ。なおオーバーエイジの使用は義務づけられておらず、3名以内であれば良い。つまり、オーバーエイジは2名でも1名でも、あるいは登録メンバー全員が23歳以下でもルール違反には当たらない。

 オーバーエイジのルールが誕生したのは、1996年のアトランタ大会からだった。そもそも、オリンピックには「勝つことではなく参加することにこそ意義がある」という有名なフレーズがあるように、昔はアマチュア選手にしか参加資格が与えられていなかった。しかし時代が進むにつれて、プロスポーツが盛んになってくると、観客たちはプロの世界で活躍する一流選手のプレーを見たいと思うようになり、運営者である国際オリンピック委員会(以下、IOC)も大会のブランド力向上のためにプロの参加を認めざるを得なくなった。そこで、1974年にオリンピック憲章から「アマチュア」の言葉が削除され、以降、各競技でプロ選手の出場が進んだ。サッカー競技においても、1984年のロサンゼルス大会からプロ選手の出場が認められた。

 しかし、この決定を不服に思う組織があった。それが、ワールドカップを主催する国際サッカー連盟(以下、FIFA)である。FIFAにとって、プロ選手が無条件でオリンピックに参加することは、「真のサッカー世界一を決める大会」としてのワールドカップの権威、プレミア感を貶めるものでしかなかったからだ。平たく言えば、FIFAにとってオリンピックは“邪魔者”であったのだ。ただし、プロ選手への門戸を開放することで興行収入を上げたいというIOCの姿勢は変わらない。以降、FIFAとIOCの利害の対立が激しさを増していくのは当然だった。

 そこでFIFAは、プロ選手のオリンピック出場を認める代わりに「23歳以下」という年齢制限を設けることを“妥協案”として提案する。その狙いは、オリンピックを当時すでに存在したU-17ワールドカップ、U-20ワールドカップに次ぐ“年代別ワールドカップ(=U-23ワールドカップ)”という位置づけにすることだった。そして協議の結果、1992年のバルセロナ大会から現在まで続く、「オリンピック開催前の12月31日時点で23歳未満」という参加資格が導入された。

 もっとも、これで一件落着とはならなかった。地元のスペイン代表は、若きジョゼップ・グアルディオラらを擁して、オリンピックのサッカー競技で初優勝を果たしたが、大会全体の観客動員数が過去の大会のそれを大幅に下回ったのだ。バルセロナといえば、反中央政権の意識が強い土地柄で知られ、それが同大会での人気低迷に拍車をかける原因の1つになったとされたが、やはり「若く知名度に劣る選手だけは魅力に欠ける」という事実は否定しようがなかった。皮肉にも“サッカーどころ”のバルセロナであったが故に、起こった現象だったと言える。大会後、IOCは再びFIFAに働きかけ、新たな“妥協案”としてオーバーエイジが誕生。アトランタ大会から始まったオーバーエイジは、今夏のリオ大会でも引き続き採用されることが決まっている。

 とはいえ、FIFAはIOCに対して完全に譲歩したわけではない。2009年には年齢制限を23歳から21歳に引き下げることを提案したり、リオ大会からはオーバーエイジのみならず、23歳以下の選手にも代表チームによる拘束権を認めない方針を示したりするなど、基本的には非協力的な姿勢を貫いている。7日には、Jクラブからの選手派遣はオーバーエイジを含めて1チーム3人までとすることが日本サッカー協会から発表されたばかりだ。

 結局のところ、オーバーエイジとはIOCとFIFAによる“妥協の産物”である。だが、これを享受する側の代表チームにとってはメンバー選考の選択肢が増え、また我々ファンにとってもスター選手のプレーも見られるチャンスが増えるとあって、悪いことはほとんどない。

 ちなみに、日本代表はオーバーエイジのルールが誕生したアトランタ大会以降、リオ大会で6大会連続のオリンピック出場となるが、オーバーエイジが1人でも出場した過去3大会中2大会ではグループステージを突破している。4年前のロンドン大会では、当時VVVフェンロ所属だった吉田麻也(現サウサンプトン)とFC東京所属の徳永悠平がオーバーエイジとして招集され、4位入賞を果たしたのは記憶に新しい。なお、歴代のオーバーエイジをポジション別に分類すると、GKが2名(楢崎正剛、曽ヶ端準)、DFが3名(森岡隆三、吉田麻也、徳永悠平)、MFが2名(三浦淳宏、小野伸二)であるのに対し、FWは1人も選ばれていない。守備的な選手が多く招集されるのは、ポジションの特性上、ある程度の経験値が求められるからだろう。

 ただし、オーバーエイジを使うことが必ずしもベストとは言い切れない事実もある。オーバーエイジを招集せずに全員23歳以下の選手で臨んだ2大会を振り返ってみると、アトランタ大会では、ベベット、リバウド、ロベルト・カルロスとオーバーエイジをフルで活用したブラジル代表から金星を挙げる“マイアミの奇跡”を起こした。また北京大会に出場したメンバーからは、長友佑都、本田圭佑、香川真司、岡崎慎司ら、多くの選手がフル代表で長らく主力として活躍している。オーバーエイジの使用による功罪は確かに存在するのだ。

 いずれにせよ、冒頭で述べたとおり、リオ大会ではオーバーエイジを招集する方針であることが示された。そして注目の組み合わせ抽選会は、14日にブラジルのマラカナンスタジアムで行われる。アジア最終予選では対戦相手に合わせて積極的にメンバーの入れ替えを行った手倉森誠監督だけに、オーバーエイジの選手選考もグループステージの相手次第といったところだろう。

 果たして、オーバーエイジは何名招集され、そして誰が選ばれるのか。もちろん、そこに誰もが納得する答えは存在しない。ただし、いろんな予想をすることができ、またベストメンバーについて想像するという楽しみがあるのは間違いない。

(記事/Footmedia)

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