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90歳のサッカーライター賀川氏、“トゥルーフレンド”の故クラマー氏を偲ぶ

2015.09.25

ブラジルW杯を取材した賀川氏 [写真]=FIFA via Getty Images

 サッカーライターの賀川浩氏が、17日に亡くなった“日本サッカーの父”、ドイツ人のデットマール・クラマー氏について、自身のブログ『賀川浩の片言隻句』(http://kagawa.footballjapan.jp/)を24日に更新し想いを綴った。

 現在90歳の賀川氏は、1974年の西ドイツ・ワールドカップから2014年のブラジル・ワールドカップまで、10大会連続で取材するなど、ジャーナリストとして62年間活躍を続けている。今年1月にはFIFA(国際サッカー連盟)主催のバロンドール表彰式で、日本人初となるFIFA会長賞を受賞していた。

 一方のクラマー氏は、現役引退後の1960年に日本代表のコーチとして招へいされると、基礎的な部分から熱心に指導を行い、チームの強化に成功。4年後の東京オリンピックではベスト8に入り、“日本サッカーの父”として尊敬集めた。その後、アメリカ代表監督などを経て、1975年に就任したバイエルンではUEFAチャンピオンズカップ(現・UEFAチャンピオンズリーグ)で2連覇を達成。2005年に第1回日本サッカー殿堂入りし、2011年にはドイツサッカー連盟(DFB)からDFB名誉賞を受けていた。

 90歳だったクラマー氏が亡くなってから1週間。同い年の賀川氏は、「クラーマーさんの業績について、人柄について、皆さんとともに語り合わなければならないのだが、彼を失ったという心の空白は大きく、しばらくペンを持つことも出来なかった」と深い悲しみを明かしつつ、「遅すぎる感はあるが、デットマル・クラーマーとの55年間の交流、私にとってもサッカーの師匠であり、得難い友人であった彼との日々を思い、その珠玉の言葉を反すうすることで、クラーマーさんを偲ぶことにしたい」として、クラマー氏について綴っている。

 賀川氏がクラマー氏に初めて会ったのは、1960年10月29日。クラマー氏が日本代表のコーチとして招へいされ、初来日した時だったという。「その記者会見で、有名になった『ヤマトダマシイ(大和魂)を日本選手に植え付けたい』という話が出たのだが、私にはスピーチの前に壇上に上がった彼が、自分の前に置かれた飲料水のビンを見て『この飲料水は合成飲料でピュアなオレンジジュースではない。体のためには全く役に立たない。プロフェッショナルコーチである私はこういうものは飲まないのです』と言ったのが印象に残った」と賀川氏の視点からクラマー氏の第一印象を振り返った。

 そして、「東京オリンピックでのアルゼンチン戦で1勝をあげるまでの4年間の代表の努力とクラーマーの指導のうまさについては、私は何度も書き、またその4年後のメキシコオリンピック銅メダル獲得にも、彼の直接間接の指導やアドバイスがあったことはよく知られている」とクラマー氏の貢献を称え、「日本代表の成長と、日本サッカー界全般の向上は、クラーマーの卓見と、彼の直弟子、長沼健(故人、第8代日本サッカー協会会長)、岡野俊一郎(第9代日本サッカー協会会長)たちをはじめとする多くのサッカー人の努力の賜物」と、日本代表コーチを退任後も大きな影響を残したと綴っている。

 また、賀川氏自身もクラマー氏との関係は続いた。「面白いのは、いつも会うたびに彼が最初に言う言葉は『トゥルーフレンドが来た』だった。ミュンヘンでも、九州でもそう言った。2006年のドイツワールドカップで彼の家を訪ねた時も、そう言った。74年大会の時もそうだった」

「それは1961年に日本代表が東京での日韓戦(63年ワールドカップチリ大会アジア予選)で敗れた日に、私が本郷の合宿所を訪れた時の話に由来している。部屋へ行くと、フトンの上でごろ寝をしていたクラーマーが私の顔を見て言った。『トゥルーフレンドが来た。ドイツでも勝った時にはたくさん人が来るが、負けると来ない。負けた時に来てくれる人こそ真の友人(トゥルーフレンド)なのだ』と、初来日以来の努力にもかかわらず、なかなか代表強化の成果の見えないころだったから、彼には心に残ったのだろう」と、親密な関係のきっかけを明かしている。

 続けて、「私にとっては、デットマル・クラーマーは1954年のワールドカップ優勝以来、長く世界のトップに立っていたドイツサッカーのトップコーチであり、FIFAのコーチとして世界90か国で指導した“世界”のコーチだった。いつも豊富な話題の持ち主であり、サッカーの技術、戦術史の生きたテキストでもあったから、彼と会った後はいつも頭がすっきりし、心が大きく膨れるのだった」とクラマー氏の人柄を語っている。

 1月にバロンドール表彰式に出席するため、スイスのチューリッヒを訪れた際、賀川氏は、「クラーマーさんの病状がよくない、と聞いていたので、ぜひ見舞にゆきたいとFIFAにスケジュールの調整を頼んで、授賞式の後、オーストリアとの国境に近い彼の自宅を訪れた」と、再会を果たしていたという。そこで、「『4月4日にはあなたの90歳の誕生日が来る。私も昨年12月に90歳になったところだ。元気になって90歳の2人のトークショーを日本でしようじゃないか』と言った。彼は「じゃあ、4月までがんばる」と言い、二人の90歳を約して別れたのだった」と、日本での再会を誓っていたと明かしている。

 そして最後に、「4月にバイエルン・ミュンヘンFCが90歳の誕生日を祝ったと聞いた。そして9月に訃報が届いた。折にふれて、デットマル・クラーマーとの日々と、彼の珠玉の言葉を書き残してゆきたいと思っている」と、締めくくっている。

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By サッカーキング編集部

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