2015.06.17

「悔しい以上の言葉が見つからない」…トップ下としての岐路に立たされた香川真司

香川真司
シュートを放つ香川真司(中央) [写真]=浦正弘
日本代表から海外まで幅広くフォローするフリーライター。

文=元川悦子

 61分、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が大迫勇也(ケルン)投入と引き換えにベンチに下げたのは、エースナンバー10をつける男・香川真司(ドルトムント)だった…。

 16日に埼玉スタジアムで超満員の大観衆を集めて行われた2018年ロシア・ワールドカップ・アジア2次予選初戦のシンガポール戦。3度目の世界舞台挑戦がスタートする前日の15日、彼は「10番とつきあって4年になるが、結果としては物足りない。次の4年に向けて勝つためにやらなきゃいけないし、自分も今のままじゃダメだと思ってるんで、厳しくやっていきたい」とあえて苦言を呈することで、自らを奮い立たせていた。

 2014ブラジル・ワールドカップまでのアルベルト・ザッケローニ監督体制では左サイド、直後のハビエル・アギーレ監督体制ではインサイドハーフと慣れないポジションでの起用が続いたが、今回は本職のトップ下で先発出場。香川はここまでの戸惑いと悪循環を断ち切る絶好のチャンスを得た。しかもハリルホジッチ監督の志向する戦術は、ドルトムントが実践してきたゲーゲン・プレッシングに似たところが多い。2008年から日本代表でプレーする彼にとって、これ以上に恵まれた環境はなかったはずだ。

 キックオフ直後はそこまで悪いリズムでもなかった。10番のファートシュートは12分、柴崎岳(鹿島アントラーズ)のタテパスを寄り位置で受け、反転して右足を振りぬいた形。枠は外したものの、動き自体は軽快だった。4~5本得た左CKの精度もまずまずで、得点に絡めそうな予感も強かった。23~24分にかけては立て続けに2度、フリーの場面も訪れる。前者は左からドリブルで強引に打ったが枠の外。後者もゴールラインまでえぐった酒井宏樹(ハノーファー)のマイナスクロスに反応した絶好のシーンだったが、右足シュートはまたもクロスバーの上に飛んでいった。

 結局、60分間の出場にとどまった香川のシュートはこの3本だけ。決定機を外したのを境に消える場面が増えていき、尻すぼみの結果に終わったのだ。

「立ち上がりの時間帯で先制できるチャンスはありましたし、僕も含めて、そうなってくると相手もやっぱりリズムに慣れてきたのかなと。特に後半に関してはそう思います。結果に関してはもちろん悔しいですし、それ以上の言葉が見つからない。シュートチャンスはあったんで、そこで決めるように練習していくしかない。あとはペナルティエリアでもっと決定的なチャンスを生み出す個の力の向上をしていかないといけないのかなと。これが自分たちの現状だし、自分の実力だから」と、香川は厳しい現実をひしひしと受け止めるしかなかった。

 11日のイラク戦(横浜)でもそうだったが、2列目右に本田圭佑(ミラン)、左に宇佐美貴史(ガンバ大阪)が陣取り、中へ中へと動くことで、香川が出て行く前線のスペースが少なくなったのは事実だ。自陣に引いて守るシンガポール相手だと、その傾向が一段と強いように感じられた。本人は「僕は貴史のところで数的優位を作れると思ってたんで、そこを経由地点にしてボールを呼び込みたかった」と言うように、宇佐美を生かしつつ自らも生きようと考えたが、2人のホットラインは狙い通りには機能しなかった。

 ボールを受ける回数が減れば、香川真司という選手は輝かない。バイタルに飛び込めなければ、本人が強くこだわるゴールという結果も遠ざかる。実際、彼は1月のアジアカップ・ヨルダン戦(メルボルン)から半年間も得点を奪えていない。ザック時代は岡崎慎司(マインツ)、本田とともに「日本の3大得点源」と位置づけられた男にしてみれば、この実情は納得いかないはずだ。「みんな個性がありますから、それをどうやって融合してやっていくのか。もっと意思統一であったり、お互いのよさをもっと引き出せるようにやっていきたい」と彼は自分に言い聞かせるように話したが、他のアタッカー陣と共存共栄する道を見出さない限り、香川の宙ぶらりん状態は続くだろう。

 この「中途半端感」は、本人にとってもやはりマイナスだ。アタッカーとしてゴールを狙うのか、それともゲームメーカーとして得点のお膳立てをメインにしていくのかを、香川は真剣に模索すべき時期に来ているのではないか。本人の迷いが消えないのであれば、ハリルホジッチ監督は一時的に彼を代表から外してクラブでのパフォーマンスに専念させた方がいいのかもしれない。

 苦しい中でも彼自身はつねにひたむきにサッカーと向き合い、努力を厭わない。そういう人だからこそ、何とかこの停滞感から抜け出してほしい。香川問題はある意味、日本代表の今後の苦境脱出の大きなカギになると言っても過言ではないだろう。

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