2015.06.16

【シンガポール戦プレビュー】キックオフからの畳み掛ける攻撃に刮目せよ!

日本代表
イラク代表との親善試合に臨んだ日本代表 [写真]=兼子愼一郎

文=青山知雄

 6月16日、いよいよロシア・ワールドカップに向けた戦いの火蓋が切って落とされる。

 シンガポール代表をホームに迎える日本代表は15日、埼玉スタジアム2002で前日練習を行い、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が記者会見を実施。「ワールドカップは1カ月で準備できるものではない。我々のワールドカップは明日から始まる」と強い口調で意気込みを語った。

 まず、今回の大会方式を確認しておこう。このアジア2次予選から参加する日本代表(FIFAランク52位)はシンガポール(同154位)、シリア(同121位)、アフガニスタン(同151位)、カンボジア(同178位)を含めた5カ国によるホーム&アウェイのリーグ戦を戦い、ここで1位に入るか、他グループの結果次第で2位でも最終予選行きの切符を獲得することになる。日本にとっては実質的に格下の相手ばかりとなるだけに、1位抜けは至上命題と言っていい。

 選手や監督を含めた関係者も間違いなく同様に考えているはずだが、指揮官は「監督しては罠が仕掛けられていると思っている」と手綱を締め直す。

「相手を過小評価してはいけない。そうなれば集中と丁寧さに欠けてしまう。普通に考えたらポゼッションは我々が上回るが、守備のことも考えなければならない。シンガポールは前線に足の速い選手がいて、カウンターからチャンスを作ることができる。フランス代表は歴史上負けたことのないアルバニア代表に負けてしまった。すべての可能性を考えなければならない。試合が始まって100パーセントでない選手がいたら、10分で交代させるかもしれない。常に100パーセントの力を出さなければならない。これは絶対にやってもらわなければ困る」

 この熱弁に影響を受けたのか、前日練習後に取材エリアへ出てきた選手たちも、口々に世界中で起こっている波乱について触れていた。川島永嗣は「サッカーに絶対はない」と語り、長友佑都は「ワールドカップ予選はこれまでも簡単な試合はなかった。また難しい試合が始まる」と言葉を紡ぐなど、指揮官の引き締めがプラスに作用していることは容易に想像できる、もちろん彼ら以外にも経験豊富な選手がそろっており、これまで苦戦してきたワールドカップ予選の初戦とはいえ、決して浮つくことなく試合に入ることができるだろう。

 では、そのピッチで日本代表チームはどんなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。

 しばしば「試合内容」について良し悪しが語られるが、それにはこの試合で何を目指していたかを把握しておかなければならない。いくらシンガポール戦が本番だからと言っても、まだまだ発展途上のチーム。練習が実ってできたこと、練習しながらできなかったこと、練習していなくてもできたこと、練習せずにできなかったことに分けて評価を下す必要がある。ハリルホジッチ監督も今回の代表活動に際して、ことあるごとに「まだ来日して3カ月。まだチームを作り上げるには時間が掛かる」とエクスキューズを口にしてきたが、確かに見る側としても現状のチーム作りがどの段階にあるのか、この試合のテーマにしているものは何なのかに注目していくべきだろう。

 今回のシンガポール戦に向けたトレーニングでは6月1日から海外組を先行して順次招集し、フィジカル面で厳しいトレーニングを課してシーズンを終えた選手たちのコンディション向上に務めた。そこに国内組が合流し、6月8日にようやく全員がそろう。3月のチュニジア戦(大分)、ウズベキスタン戦(東京)では奪ってから素早く攻めるというコンセプトを植え付けることを中心に取り組んだが、今回は選手たちのコメントを総合すると、もう少し具体的な落し込みに入っていると見られる。イラク戦まで3日間、そこからシンガポール戦まで4日間のトレーニングを積んだが、ウォーミングアップを兼ねたトレーニングでもコンセプトワークをしっかり取り入れた練習をしており、取材側にもその意図は伝わってくる。

 では、具体的にシンガポール戦の狙いはどこにあるのだろうか。

 11日のイラク戦でも見られたように、ボールを奪った瞬間に前線の複数選手が一気に相手ゴールへ襲い掛かる攻撃には迫力があった。この形はシンガポール相手にも大きな狙いの一つとなるはず。イラク戦後の練習でもパスを出した選手を必ず違う場所に動くようにさせたり、複数の選手が絡んでダイレクトで縦へ速い攻撃を意識させる練習を多く組み込んでいた。特に縦パスからのダイレクトプレーで3人目、4人目が飛び出すパターンが印象に残っている。くさびのパスも1トップに当てるだけでなく、両ウィングの本田圭佑や宇佐美貴史が中央に絞ったり、少し引いたところで相手DFを引き付けながら受けてダイレクトでボランチに落とし、そこから一気にサイドバックのオーバーラップを引き出すべく最終ライン裏のスペースを狙ったロングスルーパスも注目すべき形の一つとなるだろう。また、トレーニング中に何度も「グラウンダーで!」と叫んでおり、正確なつなぎを求めて浮き球を避けるよう指示していた点も見どころとなるかもしれない。いずれにしても指揮官が基本コンセプトに掲げるハードワークと堅守速攻の継続は大きなポイント。その上でトレーニングしていたパターンがどう生かせるかもチェックしておきたい。

 ハリルホジッチ監督はイラクとの前哨戦でもしっかり相手を分析し、大量得点と白星を手繰り寄せた。この試合ではイラクがセットプレーの守備でボールウォッチャーになってファーサイドが空くことを見つけ、まんまと槙野智章の追加点を導き出している。シンガポール戦でも分析チームを含めた“チーム・ハリルホジッチ”の手腕の見せどころとなるが、今回のゲームでカギを握ることになりそうなのが、キックオフからの一気呵成の攻撃だ。

 前日会見で「イラク戦ではキックオフからのプレーに問題があった」とした指揮官は、両チームの22人がセットされた状態から攻守をスタートさせることができるキックオフに秘策を練った模様。前日練習を終えた永井謙佑は「詳しくは明日見れば分かりますよ。今までとは多少違うし、笛がなってどう動き出すかですね」と微笑んでいた。マイボール時のキックオフでは畳み掛けるように縦へ攻め込み、相手のキックオフでは素早く追い込んでボールを奪い、そのままゴールを陥れる形を狙うと見られる。ここも大きな見どころとなるだろう。

 すべての国がロシア行きの切符を目指して気迫のこもったプレーを見せてくるワールドカップ予選。シンガポールが前へ出てくれば、指揮官が目指す鋭い攻守の切り替えが威力を発揮するだろうが、主導権を握る中で守りを固められた場合にどう崩すか。日本代表が積年の課題としてきた部分にハリルホジッチ監督がどう着手したかも確認すべきポイントとなる。

 まだまだハリルジャパンは発展途上。指揮官は確実にワールドカップ本大会を見据えたチーム作りを進めている。世界と互角に戦うために必要なものを考え、チームの現状を把握し、2018年の本大会開幕から逆算して直近のトレーニングや課題を設定しているという。霜田正浩技術委員長も「ヴァイッドは僕たちが想定していたよりも緻密に考えている」と話すなど、目標に向けた道のりを明確に見据えているようだ。それが選手個々への課題明示と意識付けにも現れている。

 ブラジルでの苦闘から約1年。アジアカップ敗退から約5カ月。思うように結果が出ない現状について。川島永嗣が現在の心境を語ってくれた。

「ブラジルでの結果……アジアカップもありましたし、その結果がすごく心に残っている部分はあるけど、明日から新たな自分たちのチャレンジが始まる。自分たちが積み重ねてきたものだけじゃなく、もっと自分たちが上に行くんだという気持ちをしっかり出して明日の試合に臨みたいし、新しい自分たちを積み上げていくきっかけの試合にしたい」

 選手たちに自信を取り戻させることも大きなテーマに掲げているハリルホジッチ監督。その第一歩となる真剣勝負こそが、このシンガポール戦となる。

 なお、スタメンに関して指揮官は「決まったメンバーはいません。どの選手も自分の席を取るために戦わなければならない。もっともっと競争意識を高めたい」と話しながらも、「まだ分からないが、イラク戦と同じチームにする可能性が高い」としており、GK川島永嗣、DF酒井宏樹、吉田麻也、槙野智章、長友佑都、MF長谷部誠、柴崎岳、香川真司、FW本田圭佑、岡崎慎司、宇佐美貴史の11人が有力と見られる。イラク戦のスタートポジションでは長谷部と柴崎がボランチに入っていたが、シンガポール戦の前日練習では長谷部がアンカー、柴崎と香川がインサイドハーフを務めており、こちらのフォーメーションを採用する可能性もある。

 指揮官が「ここからワールドカップが始まる」と強調したシンガポール戦から、2018年6月14日のロシア・ワールドカップ開幕まで1094日。ハリルジャパンの壮大な旅が、ついにスタートする。

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