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決定機で明暗分かれた川又と岡崎…雑草系FWが見せた“楽しみな競争”

決定機で明暗が分かれた川又(左)と岡崎(右)  [写真]=東和正

文=元川悦子

 ザックジャパン時代からチーム最大の得点源となっていた本田圭佑(ミラン)、香川真司(ドルトムント)、岡崎慎司(マインツ)の3枚看板を外すという大胆采配で27日の初陣・チュニジア戦(大分)に挑んだヴァイッド・ハリルホジッチ新監督。この試合はあくまでテスト色が強かったとはいえ、ハビエル・アギーレ監督率いる前体制でようやく1トップの定位置をつかんだ岡崎にとっては、危機感の募る選手起用だったことだろう。

 しかし、本人は決して動じなかった。

「もちろん途中出場は望んでないけど、そういう状況になったとしても自分はこの代表のために戦える。監督も今後、そういうチーム作りをしていくっていう話だし、勝てさえすれば自分がサブだろうが先発だろうがいい。なりふり構わずロシアに向けて成長したい。それにもう1回みんなにチャンスが与えられるべき。国内組も結果を出してるやつは試合に出るべきだし、じゃないと経験できないことがいっぱいあるから」と、岡崎は進境著しい川又堅碁(名古屋)の先発抜擢を受け入れつつ、イザという時が来たら、自分にできる最大限の仕事をしようと心に決めていた。

 川又にしてみれば、小林悠(川崎)の負傷離脱で巡ってきた千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかない。「強い気持ちを持って挑んだ。次はないと思って俺は出た」と彼自身も言う。実はその川又は昨年11月のホンジュラス戦(豊田)をスタジアムで観戦している。その試合で1トップに入った岡崎の一挙手一投足を脳裏に焼き付けていた。

「岡崎さんは1個目に動き出して球が出てこなくても、2個目、3個目まで行ける。俺だったら1個目に出てこないと止まってもう1回出て行こうかなと考えるけど、岡崎さんはそれを2回3回できる。あの動き出しがあるから相手のDFもつかみづらいし、相手のディフェンスも疲れるしね。ホントにすごいと思った」と本人もしみじみ語っていたことがある。そのイメージを浮かべながら、前々からの念願だった代表デビュー戦に臨んだはずだ。

 前半はチュニジアもタイトな守備を見せていて、川又には思うようにボールが収まらなかった。それでも彼らしい身体能力の高さを随所に垣間見せ、前半21分には清武弘嗣(ハノーファー)の左CKを打点の高いヘッドで合わせる。これは先制点かと思いきや、シュートはまさかのクロスバー。こういうワンチャンスを決めなければ、FWは生き残っていけない。先輩・岡崎はそれを実践してきた。川又はその現実をひしひしと受け止めたことだろう。後半立ち上がりの6分に酒井宏樹(ハノーファー)の縦パスにプルアウェイの動きで反応した場面もビッグチャンスになりかけたが、あと一歩足りない。結局、点を取るという最大のテーマを果たせないまま、背番号20は岡崎との交代を強いられた。

 国際Aマッチ90試合目の記録した生粋の点取屋は川又ができなかったゴールという結果をすぐさま残す。後半33分、一足先に切り札として投入されていた香川と本田が絡み、本田が左サイド深い位置までえぐって折り返したクロスを嗅覚の鋭い岡崎は逃さなかった。

「相手のDFが向かって来て、それが視野に入ったんで、その分、難しかった。ただ、あれを決めないとFWとしては厳しいんで、決められてよかったですね」とブンデスリーガ2年連続2桁ゴールを叩き出した男は絶対的な武器であるヘディングでの先制点に安堵感をのぞかせた。

 これで代表42得点目。カズ(三浦知良=横浜FC)の55得点も視野に入ってきた。本人は「いやあ、厳しいでしょ」と苦笑しつつも「出場数をもっと伸ばしたいですね。単純にゴールを決めるってことは、試合に出るためのアピールだと思ってるんで。点を取ってきたからこれだけ出てるし、結局はゴール数が伸びないと試合にも出れないんだろうなと。これからもっと厳しい競争になりますからね」と得点を重ねることで生き残ってきたFWらしい発言をした。その生きざまは無名だった宝塚ジュニア時代から全く変わらない。ゴールを取って取りまくってキャリアを切り開いてきた岡崎らしい物言いだった。

 その考えを、同じ雑草育ちの川又は痛いほど理解できるはず。だからこそ「いいスタート? いや、ゴール決めてないから全然意味ないよね。誰がどう評価するか分かんないけど、俺は結果を出すのがFWやと思ってるから。クロスバーに当たったシーン? それも決めなかったら全然意味ないからね」と川又は自身にダメ出しをした。

 決めるべきところで決めた岡崎、決められなかった川又……。ハリルホジッチ新監督初陣で2人の叩き上げFWの明暗はクッキリと分かれた。が、まだ発展途上の川又は岡崎のゴール前の鋭さを改めて自分の中に刻み込んだはず。そうやってお互いにいい刺激を与え合えば、1トップの選手層も厚くなる。彼らくなる。もともと無名で粗削りさを秘める似た者同士の2人のストライカーの今後の競争がより一層楽しみになってきた。

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