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中島翔哉。“正直な技巧派”が貫く姿勢と、常に変わらぬたった一つの目的地

2014.09.17

9月14日のクウェート戦でフル出場を果たした中島翔哉 [写真]=Getty Images

9月14日から手倉森誠監督率いるU-21日本代表がアジア競技大会へと臨む。U-23+オーバーエイジという大会レギュレーションの中であえて年下のチームで臨む理由は2年後の五輪に向けてチームを作り、そして個人を鍛えるためだ。『J論』ではそんなU-21代表から注目の個性をピックアップ。順番に紹介していく。今回はチーム屈指のテクニシャン・中島翔哉。この独特の個性をユース時代から追い掛ける、熱き軍曹・平野貴也が解剖する。

■純然たるサッカー小僧


 背番号10の小さな体がボールに触れた瞬間、チームはゴールへ向かう力を持つ。

 9月14日に開幕したアジア大会サッカー男子競技。U-21日本代表は初戦でU-21クウェート代表に4-1で勝ち、幸先の良いスタートを切った。もっとも、序盤の試合内容は手倉森誠監督が「私が手堅く入りたかった初戦だったので、選手の動きも前半は硬かった」と話した通り。チームが良いリズムを作れないでいる中、キレのある動きで攻撃を活性化する小柄なドリブラーの姿があった。8月にレンタル期間の終了に伴い、富山からFC東京へ籍を移したばかりのMF中島翔哉である。

 前半、左から再三にわたって好機を演出。前を向いて積極的にボールを運び、周囲のリズムを引き上げていた中島。個で鋭い立ち上がりを見せた背景には、彼なりの準備が隠されている。

「ボールを自分で(日本から)持ち込んだんです。代表の調整だと、自分にとっては少し物足りないときがあるので、部屋で牡川(歩見=磐田)にリフティングボールを投げてもらって蹴っていました。リフティングはボールタッチの感覚を磨くのにすごく大事。初戦でタッチの感覚が悪くなかったのは、成果だと思う」

 そんなちょっと変わった調整法を明かした。常にボールを触り、相手を手玉に取る喜びを純粋に追い求める、サッカー小僧といった感じがプロになってからもまるで失われていない選手だ。

■目標への正直さ

 中島の長所として挙がるのは、そのドリブルや運動量だろう。だが何よりも彼を特徴付けている要素は、理想に対する率直な姿勢ではないか。

 中島は決して周囲を使うことのできない選手ではないが、ドリブルへのこだわりは強い。クリスチャーノ・ロナウド、メッシ、ネイマール……。彼らのようにパスサッカーの中でドリブルによって違いを見せる、そんな存在になることが、中島の目標だ。

 育成年代におけるドリブラーの多くは「ドリブルだけでは、この先は通用しない」と制限をかけられ、パスによってより効率的にゴールへ近付くプレーを要求されている。両立のバランスは難しく、指導されたことはできるようになっても、かつてのドリブルの輝きは失ってしまったという例も少なくない。しかし中島はちょっと違う。常に自分の憧れに対して直線的な発言を繰り返してきた。

 高校時代にU-17ワールドカップでブラジルと対戦すると、「日本では3人に囲まれたら『味方がフリーだからパスを出せ』と言われる。でも、ブラジル人は3人抜く。だから、すごい。僕もそういう選手になりたい」と言い切った。プロになったばかりの時期には「最近の日本は『オフ・ザ・ボールの動きが大事だ』とよく言う。それも大切かもしれないけど、『サッカー選手ってボールを蹴る職業じゃないのか?』と思う。僕はプロになって改めて、もう一度ドリブルを磨きたい」と変わらぬこだわりを堂々と言い放った。

■目指すのは、一つだけ

 怖いもの知らずの発言は、実力不相応のビッグマウスだと捉えられることもある。

 前線の選手は、ゴールを取り続けなければ評価されない一面もある。初戦も好機を作るまでは良かったが、決定機を外す場面もあり、得点は奪えていない。

「チームとしては連覇という目標があるけど、僕個人にとっては欧州に行くための大会。世界の誰が見ているか分からない。大会のベストプレーヤー、得点王になりたい。開幕前にメディアを含めてみんなに『俺にボールを預けてくれれば点を取る』と言ってきた。次の試合では恥をかかないようにしたい」

 今回も例に漏れず、最高到達点を宣言した。

 初戦は1トップを張った鈴木武蔵(新潟)が「翔哉が仕掛けるためのスペースを空ける動きを一度してから、翔哉がドリブルの中でパスを狙えるときに動き出すようにしている」と言う通りの動きでスペースを作ってくれたし、5バックの布陣は守備の負担を軽減してくれている。中島にとっては持ち味を発揮しやすい状況が用意されていた。第2戦のイラク戦以降もスムーズに行くとは限らない。その中で、こだわりのドリブルを発揮しつつ、明確にゴールという結果を導き出せるかどうか。

 その目標はボールを蹴り始めたころから少しも曲がることがない。「世界一のサッカー選手になりたい」という夢に向かって、中島の挑戦は続く。

文●平野貴也

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