2014.06.26

日本代表総括 意志あるところに道は開ける…今こそW杯優勝を目標に

3試合フル出場を果たした内田篤人【写真】=Getty Images

 2度目の屈辱である。

 85分に、GKファリド・モンドラゴンがピッチに立つと、スタンドは大いに盛り上がった。スタジアムを埋めたコロンビアサポーターは、43歳と3日でワールドカップの最年長出場記録を更新した大ベテランを拍手喝采で迎えたのだ。

 8年前のドイツ・ワールドカップでも、同じ光景があった。相手こそブラジルだったが、当時もリードを奪われた終了間際に控えGKだったロジェリオ・セニを投入されている。

 コロンビアに敗れたことで、アルベルト・ザッケローニに率いられた日本代表は、4年に及ぶ旅路をひとまず終えた。粒ぞろいのメンバーで、優勝を公言する選手もいたこともあって大会前は大きな期待感に包まれていただけに、1分け2敗のグループ最下位という結末は拍子抜けするほどあっけないものと言えるかもしれない。8年前と同様に史上最強という枕詞がつき、奇しくも結果までなぞる形となったことは、ドイツ後同様に大きな失望を生み出す可能性もある。

 ならば、歴史は繰り返されたのか。8年前からの進歩はなかったのか。

 優勝には遠く及ばなかった。自分達のサッカーを出せたとも言い難い。ただ、彼らは今大会、能動的に世界に挑むことを公言していた。そして、最後まで自分達のスタイルを崩そうとはしなかった。

 もちろん、その姿勢には賛否両論あるのは当然だ。単純な実力不足という声や、スタイルを貫くことを固執と言い換える声もあるだろう。世界の厳しさや日本の甘さという言葉も出てくるかもしれない。結果が結果だけに、おそらく批判が大きく上回るのだろう。

 しかし、判断基準は結果だけではない。結果のみで判断することが正しいとも思えない。

 前回王者のスペインは、連覇を狙った今大会で無残にも敗れ散った。ワールドカップとユーロのメジャー大会3連覇という偉業が忘却の彼方に追いやられたかのように、国内では既に大批判が巻き起こっているともいう。ただ、結果は木端微塵でも、彼らの戦いぶり、スタイルまでが打ち砕かれたわけではないはずだ。毎大会優勝候補に挙げられながらもあっさりと敗退してきた過去も、近年の黄金期でも、彼らのサッカーはパスを基調にした攻撃性とともにあった。

 それは一時代の終わりを感じさせた今大会以降、変わるのか。

フィジカル重視の選手選考や、流行りのカウンターを軸に据えることに舵を切るとは到底思えない。彼らは今後もパスを繋ぎ、また繋ぐことで、相手を凌駕しようとするはずだ。

 流行り廃りに関係なく、立ち返るものがある国はやはり強い。

 だからこそ、日本には今後も自分達のサッカーを貫くことを望みたい。時の流れは早いというものの、やはり4年は長い。軽々しく言えることではないし、現状がそれを許さないかもしれない。嘲笑や批判、あるいは怒りを買うかもしれない。それでも、再びワールドカップの優勝を目指して欲しい。大真面目に今回同様に4年後も、自分達のサッカーで世界の頂点を目指してもらいたい。

 大会前、優勝を公言した選手は、相当な覚悟あったはずだ。それこそ、逆風や反論は山ほど受けてきただろうし、今回を機に風当たりは強くなるだろう。それでも、一度結果が出なかったことで、翻すような覚悟ではなかったと思う。

 優勝を口にしていたかどうかに関わらず、今回の敗退は、選手達にとって当然ながら耐えがたい屈辱や悔恨となっただろう。

 コロンビア戦の84分。左サイドでボールを受けた香川真司は、左足でのシュートを外すと、言葉にならない声を叫んだ。全身で悔しさを露わにしたが、直後に清武弘嗣と交代したことで、彼にとっての初めてのワールドカップは終わった。

 ベンチ横で仰向けに倒れ込んだ際、彼の胸に去来したのは己への失望か、無念さか。よほど堪えたのだろう。タイムアップのホイッスルが鳴った後も、スタッフに促されるまでしばらくしゃがみこんだままだった。

 88分に右サイドでスライディングを仕掛けた後、内田篤人はすぐには立ち上がれなかった。2月に右太腿裏の肉離れと右ひざ裏の腱を断裂して何とか大舞台に間に合わせた状態である。やはり、痛むのだろう。立ち上がって自陣に戻る際の右足は、少し引きずられていた。

 1秒もピッチに立てずに終わった前大会から4年。今大会は3試合にフル出場したものの、試合終了後にベンチに座り込むと、表情こそ分からなかったが何度もユニフォームで顔を拭っていた。

 コロンビア戦後に代表引退も示唆した内田、さらにザッケローニ監督退任が発表された。ただ、今回の強烈に苦い経験を糧に各選手には成長を、一方でチームには選手が変わろうが変わらなかろうが進むべき道は不変であることを期待したい。

 例え惨敗と表現されようと、何も残らなかったわけではない。もちろん、今大会ですべてがリセットされたわけではないし、今後をイチから始める必要もないのでないか。

 歴史は繰り返されていない。積み重ねられているのである。そして、進歩もしている。しかも、長足の進歩である。

 20年前、日本はプロリーグができた直後だった。ワールドカップには、もちろん出場していなかった。25年前、日本はアジア王者になったことがなかった。ワールドカップでは、アジア一次予選で敗退していた。

 4年後のロシア、8年後のカタール、あるいはその先かもしれない。しかし、必ず、日本がワールドカップで優勝するときがやってくる。多くの先人による礎があり、夢のまた夢のような存在だったワールドカップが目標となり、悲願となり、実際に出場を果たした。そして、ついには優勝を目標として口にするところまできたのである。

「意志あるところに道は開ける」とは、第16代アメリカ合衆国大統領のエイブラハム・リンカーンの言葉である。

 ブラジルでの挑戦は、確かに終焉を迎えた。しかし、黄金のトロフィーへの道はおぼろげながら開いてきた。日本サッカーの戦いは終わらない。そして、どんな困難も承知の上で、自分達が誇る表現方法で挑戦の継続を願いたい。いつか、必ず訪れるワールドカップを抱く、その時まで。

文=小谷紘友

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