メンバーに指示を出すザッケローニ監督 [写真]=瀬藤尚美
最終日に集まった報道陣は、実に176人。7日から9日まで千葉県内で行なわれた日本代表候補トレーニングキャンプは、ワールドカップイヤーらしく高い注目度の中で実施された。
ブラジル・ワールドカップに臨む日本代表メンバー発表前では、最後となる代表活動だったが、海外組はもちろんのこと、国内組の遠藤保仁や柿谷曜一朗らといった常連とともに、代表での実績のある選手やベテラン勢も招集外となった。11選手が国際Aマッチの出場歴がなく、その内7選手は初代表というフレッシュな顔ぶれが並んだ。
しかし、合宿は初々しさを微塵も感じさせずに始まった。メンバー最多の国際Aマッチ14試合出場の槙野智章が、「モチベーションはみんなワールドカップのところに置いていると思いますし、それに向けて短い時間でもどう爪跡を残すのか」と語れば、最年長の豊田陽平も、「しっかり選んでいただけるように短い時間の合宿でアピールしていくしかないと思っているので、悔いの残らないように最善を尽くしてやりたいと」とコメント。1カ月後に発表されるメンバーへの滑り込みを狙うべく、各選手が意欲をみなぎらせた中で行なわれた。
3日間の短期合宿で、最大の注目を集めたのは、最終日の9日に行なわれた流通経済大学との練習試合。前後半にわかれて23選手全員が出場したが、後半に川又堅碁と南野拓実が得点して、2-0と勝利した。ただ、絶好のアピールに成功したと思われる2選手にも、安堵の様子は一切ない。「ただ単に点を取っただけなんで、あんまりだったと思います」とは、川又の弁。最年少の19歳で招集された南野も、「攻撃のところで特徴を出せた場面はあったので、そこは手応えとして感じた」と認めながらも、満足とは程遠いように言葉を続けた。
「最後のところで、もう少し高い質で存在感を出していきたい。そこでボールを受ける回数がすごく少なかったと感じている」
“ラストサバイバル”や“生き残り”と報じられた今合宿終了後、アルベルト・ザッケローニ監督は、「情報量がすでにたくさんある選手がここにいないのは偶然ではない。情報量が少ない選手を手元で見たかった」と、目的について言及した。「当然4年間やっているので、あくまでもコンディションがいいという前提でベースとなるグループはある」と語ったように、最終メンバーの大部分は指揮官の頭でイメージされているはずだ。
ただ、今合宿をわざわざリーグ戦の真っ只中に組み込んだことから、指揮官がいわゆる“ラストピース”を求めていることも明らかである。指揮官の考えるチームに当てはまる選手は、不測の事態に備えたバックアッパーなのか、切り札になり得るジョーカーなのか。それは、ザッケローニ監督のみぞ知るが、“ラストピース”探しは今合宿で終了ではなく、まだまだ続くようだ。
指揮官は既に欧州視察に向かい、情報収集に余念がない。「本当に360度、全面的に情報を何一つとして疎かにすることなく集めていきたいと考えている。だからこそ、平等に海外組と国内組全員を見ていく」と語ったように、選手見極めはこれからが本番。候補合宿のメンバー発表の際、原博実専務理事兼技術委員長が、「大久保(嘉人)や(中村)憲剛とか、そのクラスは今更呼んでどうかというよりは、力は十分わかっている」と口にしたように、そじょうには多くの選手達が載っている。
運命の日となる最終メンバー発表は、5月12日。
南野は合宿中に、「ここに来て技術がうまくなるわけではないし、自分にできることは全力を出して自分のプレーをするだけだと思っている。チームに帰っても時間はありますし、一戦一戦結果を出すことがそういうところにつながってくる」と、残り1カ月に向けた決意を語った。
「できる限りギリギリまで悩みたい」と指揮官が口にしたように、門戸は決して閉ざされていない。国内組や海外組、新鋭やベテランの垣根のない本当の意味での“ラストサバイバル”が、ついに始まった。
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