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【WEリーグインタビュー】多様な生き方の選択肢を示せるよう…マイナビ仙台は「一丸」で挑む

体制を一新し、初年度に向かうマイナビ仙台 ©mynavisendai

 日本初の女子プロサッカーリーグ『WEリーグ』(Women Empowerment League)が2021年9月に開幕を迎える。

 マイナビ仙台レディースは、株式会社ベガルタ仙台より経営権の譲渡をうけ、WEリーグ参戦のタイミングで、新体制で臨む。

 どのようなクラブを目指していくのか。2020年12月に新代表取締役社長に就任した粟井俊介氏に聞いた。

インタビュー=小松春生

粟井社長(左)と松田新監督(右) ©mynavisendai

―――改めてWEリーグ参入の決断に至った経緯からお聞かせください。

粟井俊介(以下、粟井) クラブとしてプロ化をして続けていくには、マイナビグループに引き受けてもらうのがいいのではという、ベガルタ仙台さんからのお話が起点となっています。スポンサーとしての関係も年を重ね、ご縁が重なったこともありました。一方で、マイナビは様々な競技も支援をしてきました。もう一歩、踏み込んでスポーツを盛り上げていく、支援していこうとしていくことが、お話をいただいたタイミングとも重なりました。体制移行の点はWEリーグさんとも緊密にコミュニケーションを取っていました。参入への審査では、運営移譲が成立すればという仮定もあり、他のクラブさんとは違うヒアリング内容などもあったと思います。

―――コロナ禍において、経営面でのリスクも考えられたと思いますが、社内の意見はいかがでしたでしょうか。

粟井 まず、株式会社マイナビの社長である中川信行の決断がありました。コロナ禍での業績面での難しさはマイナビも同様でしたが、どこかのタイミングで反転することも考えられますし、その起爆剤とする考えもありました。マイナビという会社とスポーツの関係性においても、一つの大きな機会だと捉えて決断したと思います。

―――ベガルタ仙台から離れるということで、ある意味、一からプロクラブを作っていくことにもなります。

粟井 私自身、マイナビに籍を置いてきて、縁あってクラブに関わらせていただき始めたのが昨年8月くらいからです。それまでは、人材系の新卒採用支援の事業部に在籍していました。ただ、今回マイナビがプロクラブの経営に乗り出したのは、先ほどのきっかけだけではなく、人のキャリアや人生を応援してきたマイナビこそやることができる部分もあったからだと思います。

 社会的なメッセージの発信や、次世代の人たちに対して勇気を与える、後押しをする存在でありたいというメッセージは、選手やチームスタッフの一人ひとりに面談で丁寧に伝えさせていただきました。選手であれば、チームの中でどういう働きを求められているのか、サッカーを磨く環境としてどうなのかなども、契約に際して比較、検討されていたと思います。ただ、それに加えて、クラブとしてこういう方向で運営をしていく、という点が多少なりとも影響したと感じるところではあるので、それに違わぬ活動を着実にやっていくことを考えていきたいです。

選手たちには社会人としての教育プログラムも実施 ©mynavisendai

―――ご自身としてクラブにこういったものを落とし込みたい、というものはありますか?

粟井 1シーズンをやってみないと見えないものがたくさんあると思っています。一方で、サッカーから少し離れたところから入ってきた人間なので、新しい風、視点や発想をうまく持ち込んで融合させ、新しい価値に結びつけたいと考えています。これまでは女子サッカー自体が、男子チームの付属のような位置付けで運営されてきた事実は否めないと思います。男子チームで当たり前にやっていることが女子ではできていないケースもあります。私が今までやってきたビジネス領域から見ても、改善の余地が多々あると見受けられます。実行するにはお金や労力がかかりますが、女子領域においてプロサッカー市場を持続的に成立させようと思えば、誰かがグッと踏み込まないと前に進めません。地に足をつけて、着実に改善していくことをメンバーと共有してやっていきたいです。

―――仙台は全選手がプロ契約となります。これまでは日中に別の仕事をしたり、学業と並行していた選手もいましたが、個人事業主になり、どういったことが必要かの教育も必要となります。社会人としてのあり方は、マイナビさん得意な領域でもありますが、選手へのアプローチはいかがでしょう。

粟井 第一にプロとは何かを自分なりの解を持って臨んでいくことが必要です。24時間、365日を自分のサッカーのため、マイナビ仙台のためにどう使っていくのか。そして、何よりも選手個々の人間性をどう成長させて、スタッフも含めて、一人ひとりが外に対してどういう影響を与えていくのかを意識しながら取り組むことが重要だと思っています。マイナビという会社としてもアスリートキャリア支援事業もしているので、必要な人間力を育成する点でプログラムの連携を図りながら、プレーだけでなく、オフ・ザ・ピッチでもいい影響を与えられる取り組みをしていきたいです。

マイナビアスリートキャリア協力のもと実施 ©mynavisendai

―――スタッフの比率は女性が5割以上いることが義務付けられています。マイナビさんは女性が多く働かれている企業ですが、スタッフへのアプローチはいかがでしょう。

粟井 まず、女子サッカーを盛り上げていくために、どういうファンマーケティング、集客、認知を上げていくかという課題があります。同姓から見た女子サッカーの魅力を多面的に発信することが重要だと思っています。もともとサッカーが好き、経験がある人だけではなく、そうではない人たちの意見もきちんと反映させ、そういう人から見た魅力にもスポットを当てることが、多面的な魅力発信につながります。就業者の半数強が女性であるマイナビグループ全体の力を使いながら、発信をしていくことが重要だと考えています。

―――リーグ戦はこれまで集客に苦戦をしてきました。集客はどのようにお考えでしょうか?

粟井 奇策は正直ありません。トリッキーな手は1回しか通用しないので。持続的に人気を高めるには時間がかかる可能性もあります。ただ、WEリーグも掲げている1試合5000人という観客数を一つの目標としてステップを刻んでいきたいですね。企画の本数を立て、ブラッシュアップをして、データを分析してPDCAを回せるようにするというように、ビジネスとしての基本的なサイクルを着実に実行することが重要だと思っています。なでしこジャパンがワールドカップで優勝した時、試合によっては1万を超える観戦者が来たこともありますが、振り返っても仕方がありません。未来に向けての流れの中でやれることをしっかりと整備して、最後までやりきる。それを次につなげていくことを、サイクルとして回していくだけです。

 もちろん、チームとしての人気、スタジアムに行ってみたいと思っていただけるクラブになるには、おもしろいサッカーをする、結果を出すという、スポーツ観戦の本質であるエキサイティングな部分を見せるべきだと思っています。そこに加えて、どれだけの打ち手を我々が考え抜いてやりきるか、ですね。

―――地道な活動という点では地域との連動が欠かせません。

粟井 仙台は街をあげてスポーツ全体を盛り上げる気風があります。他競技もそうですし、ボランティアさんを含め、スポーツを後押しする動きは仙台市や宮城県が中心となる組織体も含め、あると思っています。その輪の中に入れさせていただき、取り組んでいこうと考えています。私は2月の新会社発表会見で仙台に「新しいプロスポーツチーム」と言わず、「4つ目のプロスポーツチーム」ができたとお話ししました。地元にプロスポーツチームができることは、そうあるわけではありません。2021年は東日本大震災から10年の節目でもあります。仙台という地でプレーすることの意味を改めて確認し、メッセージを胸に、一緒になって盛り上げていきたいです。

新戦力の一人、長野風花 ©mynavisendai

―――開幕へ向けてのチーム作りはいかがでしょう。

粟井 まずは、初代WEリーグ優勝を目指すという大きな目標があります。そのために選手やクラブに関わるスタッフ全員が一つの方向を向く必要があります。合言葉は月並みな言葉かもしれないですが、「一丸」です。1シーズンを戦い抜くことを共通認識としています。9月の開幕まで期間がありますが、松田岳夫監督以下、スタッフが話し合って決めてやることは当然の部分でしょうし、注目度を上げていくために私たちと現場のコミュニケーションは欠かせません。

―――初年度だけでなく、長期的な視点で仙台、WEリーグが成長するためのビジョンはいかがでしょう。

粟井 WEリーグが掲げている理念の一つでもある、女子プロサッカー選手という生き方が人生の選択肢の一つにきちんと入る世界を作るということに、心の底から共感しています。その一助となる存在としてやっていきたいです。それは何のためかと言いますと、細かい話で言えば男子に比べ、女子はプロアスリートとして生きていく選択肢があまりにも少ないという現状の問題意識もあります。

 さらに、私自身はこれまで新卒の就職支援や採用支援の事業部で仕事をしてきて、サラリーマンとして生計を立て、キャリアを積み重ねていく価値観が崩れつつあり、生き方、将来の描き方がもっと多様になってきていると感じてきました。次世代を担う若い世代にとって、少しでも視点を広げ、多様な生き方の選択肢が見える世界を作る一翼を担えたら、と思っています。

 人間性を豊かにしたり視野を広げたり、前向きに生きていくか、明るく生きていくか、という視点においてスポーツは非常に重要な要素です。今までの私の経験も全てを注ぎ込み、そういう世界を実現できるように頑張っていきたいですね。いろいろと手が回らないことも、あるかもしれません。一歩一歩前に進み、歩みを止めないことでしか解決には近づかない気もします。一生懸命頑張っていきたいと思っています。良くも悪くもわかっていないこともあるので、ある意味で「無邪気に」と頭のどこかに置いて、取り組んでいきたいですね。

松田新監督のもと、初年度から優勝を目指す ©mynavisendai

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