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【WEリーグインタビュー】女子サッカーを憧れの職業に…長野から改革に挑む

WEリーグ開幕へ練習に励む選手たち ©2008 PARCEIRO

 日本初の女子プロサッカーリーグ『WEリーグ』(Women Empowerment League)が2021年9月に開幕を迎える。

 AC長野パルセイロ・レディースは、1部経験はあるものの、昨年のなでしこリーグ2部から新設されるトップリーグへの参入という形となる。

 WEリーグで長野がどのような立ち位置を取るか、どのようなチームを作っていくのか。芸能事務所のアミューズでマネジメントを行っていた加藤久美子さんはプロリーグ準備室長として迎え入れられ、現在はレディース本部長として最前線で奮闘している。

 現段階での準備状況や今後のビジョンを聞いた。

インタビュー=小松春生

長野の加藤久美子本部長 ©2008 PARCEIRO

―――改めてWEリーグ参入の理由からお聞かせください。

加藤久美子(以下、加藤) 日本女子サッカーの頂点としてWEリーグが位置づけられるので、チーム、選手の成長につながると思い、「この先に新しい未来が待っている」期待感を込めて参入を決定しました。

―――プロクラブとして活動していく点において、進捗はいかがでしょう。

加藤 選手に対しては、アマチュア契約からプロ契約になるので、選手としての意識付けも今までとは違う、と伝えています。初のプロリーグになるので、選手たちも不安があると思いますが、安心してプレーできる環境を整えるのが私たちの仕事ですね。

―――プロ契約に対する選手のリアクションはいかがでしたか。これまで仕事や学業と並行してサッカーをしていた生活から、変わる部分が多くあります。

加藤 選手によって考え方が異なります。サッカーに専念できることがモチベーションになる選手もいますし、仕事とサッカーのバランスでやっている選手、仕事を続けたい意向の選手もいます。昨シーズン、長野はプロ契約選手が一人だけでしたが、その選手にもクラブ業務の手伝いをしてもらっていた状況でした。未知の世界ではあります。

―――男子チームもあるというところで、ノウハウをクラブ内で共有することもあると思います。

加藤 はい。チーム(現場)のマネジメントはもちろん、運営や広報、営業など、いわゆるフロント業務のノウハウがありますので、心配していません。

―――クラブの受け止め方はいかがですか。

加藤 昨シーズンはなでしこリーグ2部でしたので、トップリーグ参加のプレッシャーはあります。それがいいプレッシャーになり、選手たちのいいプレーにつながると思っています。WEリーグ参入は前向きなことですし、クラブ全体として喜んでいます。地域全体が盛り上がるきっかけになればと思っています。新たなファン獲得やいろいろな可能性を秘めているリーグなので、頑張ってPRしていきたいですね。

©2008 PARCEIRO

―――プロリーグへの参加ということで、選手への給与など金銭面での規模が増えるなどもします。財政面ではいかがでしょうか。

加藤 当然、クラブ収益の拡大に努めます。一方で、プロリーグですから試合に勝つこと、一人でも多くの方にファンになっていただくことが、WEリーグに参入した使命だと思っています。応援に来ていただき、感動をお届けしたいので、新たなファンを作ることから始めていくことを目標に頑張っていきたいです。

―――スタジアムに足を運んでもらうには、興味・関心を持ってもらうところから始まります。現時点での方向性があれば教えてください。

加藤 まずは地域の方に応援していただくことです。選手一人ひとりを知ってもらうこと、ホームタウンである16市町村の皆様との接点を増やしていくことが大切です。単発のイベント参加だけでなく、長野ならではの果物や野菜といった特産物を絡めた継続的な事業も考えられると思います。地域との連携を考えていきたいですね。

 女性の社会進出や女性問題についても、スポーツを通じて取り組んでいきたいと考えています。“問題”といっても、定義などは国や地域でも違います。行政や企業の皆様とも連携して、長野市や地域における問題は何なのかを、選手とともにヒアリングして、ディスカッションの場を作り、解決法を考える。そのきっかけをパルセイロ・レディースができればいいと考えています。

―――行政や企業と課題解決へ向かうことで、意識共有して、関係性も深まることが考えられますね。

加藤 意識は変えようとしないと変わりません。それは女性の意識かもしれないですし、男性の意識かもしれません。そこすらも曖昧だと思います。女性がもっと活躍する機会を得られる社会にするために求められるテーマを話し合い、響くことがあれば、行政や企業にも反映されると思います。小さなところから始めたいですし、生きにくさを感じる女性がいるならば、それは解決していきたいですね。

―――加藤さんの起用は、つなぎ役を期待されたり、これまでの経験を活かしてほしいという期待もあってのことかと思います。

加藤 私は前に出るより、誰かの陰にいて支えたいタイプです。でも、立場は人を変えます。東京で仕事をしていた際は、自分が前に出て発信することはありませんでしたが、長野に戻ると、発言をしないといけない機会が増えました。WEリーグに長野パルセイロが参入することになり、過去の仕事の経験や長野青年会議所で地元のお祭りの事務局長をしていた私を「元気のいい人間がいる」ということで、声をかけてもらったのだと思っています。見つけてもらえるきっかけも大事ですし、女性の声を集めることで変われるかもしれません。

 今がダメということではありませんが、私の周りを見ても管理職や社長に就いている女性は少ないです。例えば10代の学校生活では女子がしっかりしているケースが多いのに、社会に出るとなぜ変わってしまうのか。男性が活躍することになるきっかけが、過程のどこかにあると思っています。学校時代は運動能力の差はあるにせよ、立場においては男女平等であると思います。それが社会に出たら変わっていく。みんなが活躍できる社会になってほしいですね。

©2008 PARCEIRO

―――選手へのアプローチも重要になります。今回でプロ契約を初めて結ぶ選手が多くいる中、プロ選手とはどうあるべきかという意識付けが必要となります。

加藤 私は芸能事務所でマネージャーをしていましたが、アーティストも社会に出ないまま、事務所に入る人もいます。学校に行きながら演技や歌などをしている子もいて、ある意味、アルバイト感覚の子もいたと思います。大人でも一般的な常識に触れてこなかった人を見てきました。それは、サッカー選手も近い部分があると思っています。サッカーしか知らない、芸能界しか知らないだけだと、長い人生を生きてはいけません。そこは意識付けしたいです。WEリーグに参画するにあたり、私たちが道筋を作っていきたいと考えています。選手が現役を辞めてもサッカーに関わりやすくしていきたいですし、サッカーから離れる人もいるので、社会人としての教育や常識を伝えていきたいですね。お金をいただいて仕事をする意味を、急に突きつけられる選手もいるので、その部分をアプローチしていきたいと思います。

―――WEリーグ参入クラブが決まった一方、選手とのプロ契約ルールや監督資格、スタッフの枠組みなどを急ピッチで整えているので、開幕までに体制が整うのかといった部分が気になる点です。

加藤 WEリーグへの参入条件だったり、今後整備されるリーグのレギュレーションに沿って準備を進めていきます。女性スタッフの数も増やす計画をしていますし、現場(チーム)とフロント(ビジネス)が車の両輪として機能するよう整備をしていきます。男子チーム、Jリーグの試合運営ノウハウがありますので、9月の開幕に向けてまだ時間がありますので、良い準備ができると思います。

©2008 PARCEIRO

―――外の世界を経験してきた加藤さんだから感じるWEリーグの可能性もあると思います。開幕だけでなく、5年、10年と見据えて、どういったクラブにしていきたいと考えていますか?

加藤 “女子サッカー”という職業ができたことは大きいことですが、現時点ではサッカーをしている人しか知らないと思います。男子はプロだけど、女子は働きながらプレーしていたと知っている人がどれだけいるのかと。このことは、さらに言うと、その状況を知っている両親に「プロ選手になれない」と断念させられた子もいるかもしれません。これが職業になったことは新たな道です。もっとPRをして状況を知ってもらい、女子サッカーの競技人口やファンが増えてほしいです。

 子どもたちの憧れの職業になってほしいですね。そして憧れてもらう存在になるにはどう伝えるか。選手にもいろいろな個性がありますし、競技以外の部分が隠されている選手もいると思います。競技面とどうバランスを取るかは大切ですが、そういった魅力も発信していきたいと思っています。

―――最後に開幕に向けての意気込みをお願いいたします。

加藤 AC長野パルセイロ・レディースは「女子サッカーというエンターテインメント」をアピールしていきたいと思っています。試合の勝敗や内容で感情は生まれるものです。それはライブでないと触れられないものですし、一人でも多くの方に長野Uスタジアムに足を運んでいただくことが目標です。観ていただかないと始まらない部分もありますし、どうやって地域に愛されるチームになっていくのか。愛されるには私たち、選手たちも愛していかないといけません。愛し、愛されるチームになっていきたいと思っています。課題を挙げるだけでなく、皆さんとクリアしながら、いいリーグにして成功させたいと思っています。

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