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“大分に帰ってきたベテラン2人”梅崎&金崎がJ1復帰請負人に

2022.10.11

梅崎(左)と金崎(右) [写真]=J.LEAGUE

 横浜FCの1年でのJ1復帰決定が懸かった9日の明治安田生命J2リーグ第40節、大分トリニータ戦。横浜FCはエースの小川航基が2ゴールを叩き出し、J2得点ランキングトップを独走する24得点目を記録したが、逆に主役の座を相手に明け渡す格好となる。アウェイの大分が目の覚めるような3ゴールを奪い、3-2で勝利。6位以内を確定させ、J1昇格プレーオフ出場権を手にしたのである。

 壮絶な一戦の口火を切ったのが、開始5分の大分の先制弾だった。右ウイングバックの井上健太からのアーリークロスに鋭く反応したのが、2シャドーの一角を占める梅崎司。昨季13年半ぶりに古巣復帰した35歳のアタッカーが打点の高いヘディングシュートをお見舞いし、見る者の度肝を抜く1点目を挙げたのだ。


「立ち上がりから押し込まれる展開が続いていましたが、その中でしっかりとしたビルドアップから右サイドに展開できて、井上がクロスを入れてくれた。(長澤)駿がニアに行った裏にいいボールが来ればと信じて入ったら、うまく流し込むことができました」と彼は満面の笑みを浮かべた。

 ドリブル突破が印象的な梅崎のヘッドは、かなり珍しい印象だ。本人も湘南ベルマーレ時代の2018年以来だという。

「ただ、割と得意というか、練習はここ数年ずっと積んできて、決めていたので、その賜物ではあると思います」

梅崎司

[写真]=J.LEAGUE

 このヘディングのみならず、この日の背番号27は前後左右に幅広く動いてゲームメイクにも関与。下平隆宏監督体制で確実にプレーの幅を広げている様子だ。

「大分に戻って1年目だった昨季は正直、難しかったですね。(片野坂知宏監督の)サッカーにうまく入れなかったし、コンディションも上げ切れなかった。でも今年から下平監督が就任して、シーズン半ばからコンスタントに先発で出るようになり、状態もどんどんよくなっています。それにゲームを作る部分の立ち位置や関わり方も今、すごく勉強していて、面白さも感じています。ただ歳を取っているだけでは意味がないと思うし、日々成長し続けるべく、アグレッシブに取り組んでいます」と35歳のベテランは初心に返ったように目を輝かせた。

 その梅崎同様に今夏、13年ぶりに大分に戻ってきた金崎夢生もチームにいい刺激を与えていると言っていい。横浜FC戦は67分からの出場だったが、自ら持ち込んで思い切りのいいシュートを放ったり、3-2でリードした終盤にはハイネルとぶつかり合ってイエローをもらうなど、勝利への闘争心を前面に押し出した。

「夢生の加入はメチャクチャ大きいです。僕以上に海外含めて高度な経験を持っている選手だし、『勝利への意思』を発してくれている。最後のイエローの場面なんかはメチャメチャ欧州っぽい(笑)。去年久しぶりに大分に来て、キレイにやろうとしているところがあるなと感じていたので、ああいう熱さはすごく大事だと僕は思います」と、梅崎は2007年に共闘した2つ年下の後輩に敬意を払っていた。

 金崎自身も、梅崎や西山哲平GM、上本大海スカウト、市議会議員としてクラブに関わっている高松大樹氏ら、かつての先輩たちのサポートを受けながら、古巣への恩返しをしたいと熱望しつつ、日々、ピッチに立ち続けている。

「今は途中から出て最後のところで決める役割を求められている。自分もゴールを狙いながら、チームを勝たせることを第一に考えてやっています。僕自身、2009年に大分をJ2に落として移籍しているので、負い目もありましたし、何か手助けをしたいという気持ちはずっと持っていました。久しぶりに戻ってきて、昔と変わらない部分もあったので、うまくチームに入れたと思う。少しでもチームに貢献して、恩返しできるように頑張ります」と彼もまた原点回帰を図りつつ、新たな道を切り開いている様子だ。

金崎夢生

[写真]=J.LEAGUE

 2人のベテランに求められるのは、リーグ終了後に始まるJ1昇格プレーオフで力強くチームをけん引すること。「昇格請負人」として圧倒的な存在感を示すことに他ならない。

 40節終了時点で大分は5位。3位ファジアーノ岡山とは勝ち点6差あるので、そこまで順位を上げるのは難しいが、勝ち点1差のロアッソ熊本を抜いて4位でフィニッシュし、プレーオフ1回戦をホームで戦える権利をまずは確保したいところだ。プレーオフはJ2組との2試合を勝ち上がったうえでJ1の16位チームにも勝ち切ることが必須。それで初めて1年での最高峰リーグ復帰が現実になる。

 ある意味、トーナメント戦と同じような戦いを勝ち抜く術を梅崎と金崎は過去の多彩な経験から理解しているはず。それを今こそチームに還元してほしいのだ。

「最終的にJ1との入れ替え戦に勝たなければいけないので、そこも見据えていかに自分たちのボールをつなぎながら攻めるというスタイルを貫けるかが大事だと思います。プラス、際(きわ)の部分。勝利を左右するのは常にそういう小さい部分だと僕は思います」

 梅崎は語気を強めていたが、そのあたりは金崎が非常によく心得ている部分。長澤や町田也真人、三竿雄斗ら他の30代選手たちと共有しながら、したたかに勝てるゲームを見せていくことが肝要だ。

 頼もしい両ベテランが今季終盤にどんな一挙手一投足を見せてくれるのか。J1昇格争いの行方も含めて、見逃せない。

取材・文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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