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41歳の“昇格請負人”遠藤保仁 いぶし銀の働きで2年ぶりのJ1が射程圏内に

FC琉球戦で勝利に貢献した遠藤保仁 [写真]=J.LEAGUE

 2021年の明治安田生命J2リーグもラスト10試合あまり。2枠というJ1昇格への狭き門をこじ開けようとしているのが、京都サンガとジュビロ磐田だ。30試合を終えた段階でそれぞれ勝ち点64と63を確保。3位以下に10ポイント近い大差をつけてリードしている状態だった。

 一角を占める磐田は8月9日のヴァンフォーレ甲府戦から7戦無敗。しかしながら、9月18日のファジアーノ岡山戦を1-1で引き分け、京都に首位の座を明け渡してしまった。

「J2優勝」という目標を掲げている彼らにこれ以上の取りこぼしは許されない。25日のFC琉球戦は是が非でも勝ち点3を奪わなければいけなかった。

 奇しくもこの琉球とは今季開幕戦で対戦。シュート20本を放ちながら、0-1の黒星を喫した苦い過去がある。山田大記も「上位対決でもあるし、開幕戦の借りを返したい。選手たちもヒリヒリした空気で準備しています」とリベンジに燃えていた。

 最前線にJ2得点ランキングトップに立つルキアンを据え、山田と大津祐樹を2シャドウに配置する強力攻撃陣で挑んだ磐田。序盤からハイプレスを仕掛け、高い位置でボールを奪い、敵陣に襲い掛かった。大津と左ワイドの松本昌也がポジションを入れ替えながら縦への推進力を出すなど相手を圧倒。すぐにでも先制点が入りそうな雲行きだった。

 だが、その通りにならないのがサッカーの難しさ。それを知り尽くす41歳のボランチ・遠藤保仁は全く動じることなく戦況を冷静に見極め、周囲に指示を出し続けた。味方のポジションを細かく修正し、自らがボールを持つと巧みに緩急をつけ、ゲームを落ち着かせる。

 前半37分に自身が出したパスをカットされた場面では、20歳の武田英寿に猛然と詰め寄り、ファウル気味に体を寄せてボールを奪い取る。これを目の前で見ていた琉球の樋口靖洋監督が猛抗議したが、本人は涼しい顔でプレーを続行する。こうした駆け引きの老獪さは40代になってより一層、磨きがかかった印象だ。

 スコアレスで折り返し、迎えた後半4分。ベテラン司令塔は冷静に先制点をお膳立てする。ペナルティエリア右外からのFK。遠藤の蹴ったボールをルキアンが頭で落とし、左足を合わせたのは鈴木雄斗。喉から手が出るほどほしかった1点が生まれ、磐田は一気に勢いづいた。

 その後、琉球が巻き返してきたが、磐田の守備組織は崩れない。後半32分には課題と言われた追加点を手に入れる。起点となったのはまたも背番号50だった。中盤左寄りの位置でボールを保持すると左タッチライン際の松本へ絶妙なスルーパスを出した。次の瞬間、途中出場の金子翔太へボールが渡り、ゴール前のルキアンへ。これをエースFWが押し込み、磐田は2-0で勝利。勝ち点を66に伸ばした。

 この2点目のシーンを抜き出すと、遠藤には近い位置にいた金子やルキアン、右ワイドの鈴木と複数のパスコースがあった。その中で最もゴール確率の高そうな松本への配球を選択した。瞬時に多彩な情報を収集してゴールへの道筋を逆算し、的確な判断を下せる戦術眼と高度な技術は年齢を重ねて衰えるどころか、成長しているようにも映る。記録には残らない地味なプレーではあるが、背番号50が2-0勝利を演出したのは間違いないだろう。

「僕自身、新しいチャレンジをしたいと思っていましたし、まだまだ違いを生み出せる自信もある。しっかりといいモチベーションとコンディションを保てればできると思ってここに来た。J1昇格のために全力を尽くします」

 2020年10月の磐田移籍会見から間もなく1年。琉球戦に象徴される通り、「磐田の遠藤保仁」は異彩を放っている。今季はここまで24試合出場3ゴールという実績を残しているが、プロ24年連続得点にJリーグ700試合出場と偉大な記録を次々と作りながら、ここまで戦い抜いているのだ。

「これだけ長いことやっていると数字もついてくる。それをジュビロで迎えられて嬉しいですし、チームに感謝しながら新たな歴史を作っていきたい」と本人も周囲に感謝しながらピッチに立っている。

 もちろん年齢を重ねた分、四六時中、走り続けていられるわけではないし、若い頃に比べると運動量や走行距離は低下しているだろう。そのことを承知の上で、鈴木政一監督は山田や山本康裕、松本ら走れる面々にカバーさせ、チームとして機能する形を作り出している。その戦術や采配も遠藤の大きなプラスになっている。

 仮に1年前に移籍を決断せず、今もガンバ大阪にとどまっていたとしたら、遠藤はここまで存在感を示せただろうか。

「試合に出ないと選手は楽しくない。競争があるのは当たり前。若い選手だったり、ベテラン選手だったり、しのぎを削りながら、その部分も楽しめればいいと思いますし、試合に出て勝って楽しめればいいし、これからもサッカーを純粋に楽しんでいければいいと思います」と本人も語っていたが、今はサッカー人生を楽しめる理想的環境に身を投じることができている。40歳の決断が奏功したのは紛れもない事実と言っていい。

 上位2位以内をキープした状態でリーグ終盤まで来た以上、遠藤は「J1昇格請負人」としての責務を果たすしかない。

「鈴木監督が前にジュビロの監督をしていた20年前は『ホントに強いな』と思ってプレーしていました。みんなが面白いサッカーをしていて、楽しそうにしていた。『こんなサッカーがしたいな』と思いながら試合をしていましたし、まともに勝った記憶がない」

 こうしみじみ語ったように、黄金期を知る男にとって磐田は名門中の名門。その復活の一助になってこそ、遠藤保仁の存在価値が改めて証明される。

取材・文=元川悦子


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