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「日本風」を召し上がれ|二宮寿朗

2020.02.19

[写真]=Getty Images

 好奇心を持って受け入れて、広がりを持たせて、もっと良くならないかとアレンジして――。

 これって世界に誇れる日本文化の良さだとは思いませんか? 「食」に例えると分かりやすい。日本では和食、イタリアン、フランス、中華、韓国、タイ、インド……世界各国の料理を味わうことができる。こんなに多種多彩のレストランがそろっているのは、きっと日本くらいではないだろうか。自宅でも「昨日はピザだったから、今日は中華にしようか」みたいな会話はあるだろう。“食の世界旅行”が日本では日常になっている。


 しかし受け入れるだけでなく、日本人の舌に合うようにアレンジしていくのがニッポンの凄いところ。ラーメンにナポリタンスパゲッティにカツカレーに。アイデアやチャレンジ精神が詰まった「日本風」は、その料理に新たな魅力を生み出している。

 サッカーも、実はそうなのかもしれないと感じている。

 1993年にJリーグが開幕した当初、世界的なスターが集まってきた。ブラジルのジーコを筆頭に、アルゼンチンのラモン・ディアス、ドイツのブッフバルト、リトバルスキー、イングランドのリネカー……。日本のサッカーファンはJリーグを通じてダイレクトに“世界の味”を堪能できるようになった。

 ヴェルディ川崎、横浜マリノス、鹿島アントラーズなどは彼らを通じて南米の香りが漂い、逆に浦和レッズ、ジェフユナイテッド市原、サンフレッチェ広島などは欧州のエッセンスが滲む。こうやってクラブそれぞれの好奇心が違って自然に多様化するところが、実に興味深いところ。そしてクラブを支えるファン・サポーターも、それを受け入れて楽しもうとするのも面白いところ。

 ヴェルディのスタンドはブラジルのサンバが鳴り響き、マリノスのスタンドはアルゼンチンのごとく紙吹雪が舞う。相手を威圧するようなレッズの応援に欧州の雰囲気を感じた人も多かったに違いない。

 だが、「受け入れる」段階から次に移行にしていくには時間が掛かったようにも感じる。Jリーグバブルが弾けたことや景気の後退もあって、経営規模を縮小せざる得ないクラブがほとんどだった。世界的なスター選手は日本に目を向けなくなり、逆に日本のタレントが欧州を目指す時代に突入していった。

 その一方で日本代表はさまざまな国から監督を招聘して、いろんな味を取り込もうとした。フィリップ・トルシエ(フランス)、ジーコ(ブラジル)、イビチャ・オシム(ボスニア・ヘルツェゴビナ、オーストリア)、岡田武史、アルベルト・ザッケローニ(イタリア)、ハビエル・アギーレ(メキシコ)、ヴァイッド・ハリルホジッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ、フランス)、西野朗、森保一。

 一体、日本はどこの国のスタイルを参考にしたいのかというツッコミは当然だとしても、曲がりなりにもワールドカップは6大会連続出場を果たし、決勝トーナメントに3度進んでいるという実績もある。ポジティブに捉えれば“いいとこどり”。これも日本の文化らしいと言えなくもない。

 さて、Jリーグに話を戻そう。

 停滞感のあった時期を過ぎ、『DAZN』マネーの流入もあって再び活発期に入ってきた。アンドレス・イニエスタの参戦は最大級のインパクトをもたらし、フェルナンド・トーレス、ダビド・ビジャ、ジョーたちもやってきた。アジアに目を移せば、タイのチャナティップやティーラトンも味のあるプレーを見せている。外国籍枠の拡大に伴い、ワールドワイドなリーグとしてようやく「広がりを持たせる」時代が進んでいると感じることができる。

 ボールを保持して、技術、組織性、連続性を重んじる攻撃サッカーを志向するチームが増え、そのトレンドはいずれ日本サッカー全体へとつながっていくはず。

 昨年のJリーグ総入場者数1,140万1,649人は過去最高となった。「アレンジした日本風」となるには、つくり手のアイデアやチャレンジ精神が必要である。それを後押しして盛り上げていくのが、ファン・サポーターの役目。いずれ世界に誇る、日本サッカーの“味”にするために――。

文=二宮寿朗
     

By サッカーキング編集部

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