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イニエスタこだわりの新スパイクに込めた想いとは? 開発チームに聞く「イニエスタとアシックスがサッカーを変える未来」

[写真]=Getty Images

 2018年10月からアシックスとアドバイザリー契約を締結している、ヴィッセル神戸所属のMFアンドレス・イニエスタ。そのイニシャルである『AI』を冠したシグネチャーモデル『ULTREZZA AI(ウルトレッツァ エーアイ)』が発売された。

 本人が「アシックスのチームの皆さんと数カ月にわたって準備した」と話す、細部にまでこだわったという新しいスパイクは、イニエスタの希望する“履き心地”を「自分の体の一部」であると感じられるほど、徹底的に追求。その一方で、新作を購入したユーザーにも、長く大切に使ってもらうため、アシックス側のアイデアも数多く落とし込まれており、まさにイニエスタとアシックスが作り上げたスパイクとなった。

“イニエスタモデル”はどのように完成したのか。プロダクト開発を担当した新堀正博さん(コアパフォーマンススポーツフットウエア統括部開発部)、デザインを担当した小泉匡史さん(コアパフォーマンススポーツフットウエア統括部デザインチーム)に、開発の喜びや苦労、イニエスタとのエピソードを聞いた。

インタビュー=小松春生

―――まず、お二人の普段の業務内容についてお聞かせください。

新堀 私は開発を担当しておりまして、マーケティングの部署から上がってきた企画に対してどういった機能や構造を持った靴にするのかを考察し、形にすることがメインの仕事です。

小泉 私は企画に対して素材や色使い、デザインのストーリー性をマーケティング、開発と話しながら絵に起こし、ラフスケッチ、デザイン画にしていき、ソール図面やアッパーパターン作成を開発と一緒に進めています。開発チームとは密に連絡をとっていて、僕らはデザイン画を描く、開発チームは発注書を作るというのが、明確に分担する作業であって、その他の業務は一緒に進めていくので、一緒のチームとしてやっていますね。

―――一緒のチームとして作り上げていくのは、社風でもあるのでしょうか?

新堀 そうですね。各部署の垣根を取り払い、みんなでモノを作っていこうと。モノ作りをみんなが重視していますね。

―――アシックスのサッカー用スパイクでは『DS LIGHT X-FLY』シリーズが定番としてあります。これまで多くの有名選手が着用してきましたが、今回はイニエスタ選手のイニシャルが入るシグネチャーモデルの開発となりました。その経緯を教えてください。

新堀 我々はヴィッセル神戸とスポンサー契約を以前から結んでおり、イニエスタ選手がその神戸に加入したということで関係がスタートしました。その中で、「ぜひ、共同でのスパイク開発を」という話が出てきたんです。世界を代表するサッカー選手ですし、特別なもの、オリジナルなものを製作しようということになりました。イニエスタ選手本人が一番欲しているものを作ることは、会社としての意見でもありましたし、ご自身が「自分のシグネチャーモデルを作りたい」という想いもお持ちだったので、「ぜひ製作しましょう」となりました。

―――イニエスタ選手の想いを具現化するというプレッシャーはありませんでしたか?

小泉 社内の中でいろいろな方がチェックする、厳しい目で見られる、という意味でのプレッシャーはありましたが、本当に良いスパイクができるかという不安みたいなプレッシャーはありませんでした。個人的には、終始一貫してポジティブな気持ちで楽しみながらプロジェクトに携わる事ができました。

新堀 プロダクトに対しての自信はありました。高機能なもの、よりプレーの質を上げられる、引き出せるものを作れると思い、進めてきました。

小泉 社内にサッカー好きがたくさんいますし、細かくフィードバックを取ったり、綿密にやり取りができ、アイデアがどんどん出てくる状況や環境がありました。逆にたくさんありすぎて、まとめる難しさがあったくらいです。私たちもイニエスタ選手のリクエストに対して100点のものを出せる気持ちでデザインも開発もやっていました。

―――スパイク発表会でイニエスタ選手は、履き心地やタッチの部分にこだわったと話していました。オーダーも細かかったのではないでしょうか。

新堀 履いた瞬間の感覚と、体の一部であるように感じること、全ての動きに対してスパイクによる違和感をなくすことに、すごくこだわりをお持ちでした。材料、構造を考案し、中底やライニング材の微調整を行うことでイニエスタ選手が感覚的にハマるものを何度も作り直しました。

小泉 イニエスタ選手にはこれまで『DS LIGHT X-FLY 4』を履いていただいていましたが、『DS LIGHT X-FLY 4』はとにかく軽く、素足に近い感覚というコンセプトがあります。『DS LIGHT X-FLY 4』をイニエスタ選手用にカスタムするとき、フォームの厚みを足すなどの細かいリクエストがあったので、今作は足と一体になって包み込んでくれるよう、フロント部分のカンガルー革と、後ろの部分に弾性のあるメッシュとフォームを一体にさせて、そのリクエストに応えるという対応をしてきました。新たなスパイクのキャラクター付けが必要でしたね。

新堀 イニエスタ選手の中での感覚の世界があって、読み取る部分での難しさもありました。スパイクというものをよくご存知ですし。開発の意見交換では、同席した理学療法士の方含め、ケガを防止する機能についてもかなり念入り、詳細に要求されていました。

―――お二人も実際履かれてみて、履き心地などを感じる部分がありましたか?

新堀 包まれるような感覚はかなりありますね。自分でもこだわって作り込んだところなのです。材料を使い分けて、スパイクとして柔らかさが欲しい部分はカンガルーレザーを使い、中足骨付近から後ろのクォーター部分はホールド性を持たせています。アッパーには伸縮性に優れたメッシュ材を使い、変形しながらも足に添わせる形にしました。

 あと、イニエスタ選手からの要望にもあった、いろんな動きに対して阻害をしない、スムーズな動きができるように、ソール前方には様々な方向への蹴り出しをサポートする『X Guidance』(エックスガイダンス)を用い、ソールの中央には剛性を保ちつつ、内側と外側への体重移動を容易にする『TORQUE TRUSS』(トルクトラス)という機能を持たせています。ヒール部分には自然に前重心を実現するための『5mm Heel Gradient』を使い、様々な動きもスムーズにできるスパイクとなりました。イニエスタ選手と同じような動きやイメージに近づけると信じています。

小泉 私も履いてプレーしましたが、イニエスタ選手の様な選手に向けた、とてもいいスパイクが出来上がったと思いました。これまで、様々なスパイクを履いてきたのですが、新しいフィット感があると思います。前足部にほしい、ボールタッチの柔らかさと、中足部以後の締め上げ感が絶妙なバランスです。ソールに関しては、さまざまな方向にも動き出しやすく、かつ、ボールをどの角度で蹴っても、良い足抜け感でした。足裏の動きに追従してくれているので、足と一体になってくれているように感じます。

 それと、カラーもフラッシュイエローでテンションが上がりました(笑)。ボールタッチが柔らかくなった様に感じられましたし、足の捌きも軽やかになった様に感じました。15メートル先からでも目立つカラーバランスにしてありますので、ボールをたくさん触ってプレーしたい選手は、チームメイトからたくさんパスが貰えるのではないでしょうか(笑)。

―――開発を進める上での意見交換は、頻繁にされましたか?

新堀 通常は企画段階でお話しを聞き、サンプルを作って選手側に持っていくのがベースです。今回は企画の内容を説明し、デザイン段階でどういう機能があるかを説明し、モデルが出来上がって説明し…、と選手とここまで密に進めることはなかなかないことだと思います。

―――デザイン段階でのオーダーはいかがでしたでしょうか。

小泉 私たちからも「こうしたらイニエスタ選手のパフォーマンスが上がる」という立体の形状や、アッパー素材の切り替わるべきデザインラインを提案しましたが、結構、それを納得して受け入れて頂けました。通常アスリートと共同開発する際、選手からのフィードバックをそのまま反映するのが一般的なのですが、細かいところにこだわりすぎると、尖ったものができてしまいます。そうすると選手を選ぶというか、履く人を選んでしまいます。

 でも、イニエスタ選手の場合は、ご本人以外にも、これからのサッカー界を支えていくべきであろう若い選手をはじめとした、多くのサッカー選手が履いた時に、しっかりと「良い」と思えるものを作り上げてほしい、という考えを持っていたのが印象的で。自分が履くためだけと思っていない事が、とても嬉しく、素晴らしいと感じました。

新堀 「君たちが提案してくれて進めてくれたものを履いてみるよ」と言ってもらえて、すごく嬉しかったです。セッションを重ねていく中で、提案を受けて、どんどん試してもらえる関係性を築けたことも良かったです。

―――履き心地を追求することはシューズとしての原点に立ち返ることでもあると思います。それは例えばケガの防止にもなると思います。

新堀 靴の中で足がズレたり、動いたりすることはケガにつながることもあります。イニエスタ選手もケガのことはかなり気にされていました。緩衝性を持たせることで、ひざへの負荷、体への負荷を減らせますし、安全面でもこだわりを持っています。クッション材は私たちが独自開発しているFUZEGEL(フューズゲル)という軽量衝撃緩衝材を使用しています。我々もイニエスタ選手のケガの履歴を把握するところから始め、「こういうケガがあるから、こういう機能を入れたほうがいい」という提案もしました。

小泉 「こういう機能があると、イニエスタ選手にとってプラスになる」といった話はデザインとマーケティングで一緒にアプローチしました。外観だけではなく、機能をしっかりデザインする、なおかつ履き心地は絶対に妥協しないというのが、アシックスのデザインの強みだと思っているので、それを踏まえた上で提案させてもらいました。

―――ちなみに、イニエスタ選手って「あ、意外とこんな人なんだな」と思ったことはありますか?

新堀 イメージ通りと言いますか、すごく紳士的で、最初から優しく接していただけました。僕らのような開発者の提案もすごく真剣に聞いていただけ、自分の意見も述べながら、ディスカッションしていただけました。「かっこいいな」と思いました(笑)。すごい人格者です。

小泉 食事の間のリラックスしている時間に、ゆっくり話をしながら、進めることもありました。僕個人も自伝を読んだり、プレーをたくさん見て、プロジェクトに挑みましたが、物腰が柔らかい印象は本当に見たままと言いますか。物静かですが、多くを語らずとも核心だけを話してくれる印象がすごく強いですね。

―――最後にアシックスを代表して、お二人がこのスパイクに込めた想いを聞かせてください。

小泉 これでアシックスがサッカースパイク業界の流れを良い方向に変えたい、と思っています。私以外も、携わっている社員全員が意気込んでいます。イニエスタ選手がボールを持つと何かが起きるんじゃないかというワクワク感がありますよね。一撃必殺のスルーパスや、細かいステップワークで相手を剥がして局面を一気に変える。見た目や斬新さが偏重されつつあるサッカースパイク業界の局面をアシックスが変えていきたい、というビジョンと重ね合わせています。「アシックスのサッカースパイクって履き心地良いけど、見た目も新鮮になったよね」と、お客様に思ってもらえる様にと強く願っています。

新堀 私も、このスパイクが今後のアシックスのサッカーをさらに伸ばしていく、変えていくきっかけになってほしいと思っています。実際、イニエスタ選手という素晴らしく、高次元でプレーされている選手の想いと、アシックスの技術を詰め込めたスパイクになっています。少しでもイニエスタ選手に近づけるようなスパイクに仕上がっています。若い選手もそうですし、世界中のプレーヤーにこれを履いてほしいですね。

■ULTREZZA AI

イニエスタとアシックスが強力タッグ! 新スパイクを共同開発
「究極=ULTIMO」+「技巧=DESTREZA」=『ULTREZZA』
イニエスタのイニシャル「AI」を組み込んだ、初のシグネチャーモデル
「360」空間と瞬間を支配せよ!

■Soft Upper Lining
伸縮性に優れたメッシュ材をアッパーに使用。フォーム材をアッパー全体に入れて、やわらかな履き心地を追求。

■X Guidance
X形状に配置したガイダンスが様々な方向への蹴り出しをサポート。

■TORQUE TRUSS
中足部の剛性を保ちながらも、内側と外側への体重移動を容易にし、スムーズなターンをサポート。

■5mm Heel Gradient
ヒールレイズ構造を採用し、自然な前重心の実現と、足への負担を軽減。

イニエスタ選手が着用する『ULTREZZA AI』は7月28日から全国のショップ、オンラインストアで販売中

ULTREZZA AIに関する情報はこちら

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