2018.06.02

【ライターコラムfrom熊本】“サポーターがスポンサーになる” 新しいサポートのかたち

ロアッソ熊本東京応援団がサポートカンパニー契約を締結 [写真]=井芹貴志
1971年生まれ。大学卒業後、タウン情報誌の編集者を経て2005年にフリーランスとなり、ロッソ熊本(当時)の取材を開始。現在、「J’s GOAL」「EL GOLAZO」「サッカーダイジェスト」等でロアッソ熊本関連の記事を執筆。その他、webマガジン「kumamoto football journal」(http://www.targma.jp/kumamoto/)も展開中。

 5月27日(日)、とあるリリースが手元に届いた。発信元は「ロアッソ熊本東京応援団」(以下、東京応援団)。その内容は、「ロアッソ熊本東京応援団が、ロアッソ熊本とサポートカンパニー契約を締結した」というものだ。

 このリリースに先立ち、同日フクダ電子アリーナで行われた明治安田生命J2リーグ第16節のジェフユナイテッド千葉戦前、アウェイ側ゴール裏スタンドをバックに、東京応援団の代表を務める時任聰明さん(神奈川県川崎市)が今季から熊本のGMとなった織田秀和氏にスポンサー料の目録を手渡した。サポーターがクラブのスポンサーになる――。25年目を迎えたJリーグの歴史の中でも過去に例のないサポートのかたちは、どのような背景で実現したのだろうか。

「きっかけは、2年前の熊本地震ですね」

 東京応援団で代表を務める時任さんはそう話す。4月14日の前震、16日の本震と、2度に渡って大きな揺れに見舞われた熊本地震のあと、チームは1カ月間に渡ってリーグ戦から離れ、2016年5月15日にこの日と同じフクダ電子アリーナでの千葉戦からリーグ戦に復帰。アウェイ側スタンドは、関東在住の熊本県出身者のみならず、少なくないサッカーファミリーによって真っ赤に染められた。試合自体は0-2で敗れたが、このゲームが、首都圏を中心にした新たな動きを加速させる転機になった。

「それまで関東での試合を見に来たことのなかった熊本出身の方も見にきてくれましたし、熊本出身ではないけれど熊本を気にかけてくれている方、熊本が好きだという方もいて、あの試合以降、関東でのアウェイゲームに足を運んでくれるようになった方がいるんです。あの日の試合をきっかけに熊本が気になり始めて、初めて熊本へ旅行に行ったという人もいます。首都圏で、ロアッソ熊本だけではなく熊本県のファンになってくれる人をつかまえて送り込むというか(笑)、より好きになってもらうための活動をやっていきたいと考え始めました」

[写真]=井芹貴志

 ロアッソ熊本の応援が、その入り口となった。関東圏で行われるアウェイ戦には以前から有志で参戦、首都県外の東北、北関東へはレンタカーを借りての弾丸ツアーなどを行なっていたが、2014年にクラブ公認の応援団となったのを機に呼びかけはさらに広がり、バスツアーを出すまでに。もちろん試合中は声を出して選手たちを後押しするが、東京応援団の活動はそれだけにとどまらない。

 開幕前にはキックオフカンファレンスに合わせて上京するクラブ幹部や監督などチーム関係者を招くキックオフパーティを行って士気を高め、試合前後にはお酒を酌み交わして交流を深め、さらには熊本出身の力士やレスラー、女優さんの応援にも足を運び、ときには復興支援につながる県産品販売のイベントなどにも参加して、サッカー以外の場面でも強い絆を結びながら、熊本を発信する。

 こうした活動の根底にあるのは、「だご(とても)楽しかファースト」という思い。自分たちがまずは楽しむ、というスタンスがあるからこそ、勝てないゲームが関東で続いても、様々な取り組みに思い切ってトライできている。

「昨シーズン、あるゲームに負けて東京に帰りながら、『どうしたらもっと強くなるんだろうね』という話になって。『スポンサーの力ももっと必要だよね』という話から、『サポーターって、スポンサーにはなれないのかな?』という声が出てきたんです。クラウドファンディングのような感覚で、バスツアーやイベントの余剰金や寄付などを集めて、まずは4ランクある“サポートカンパニー”になりました。個人個人ではファンクラブに入ることで直接の支援になるわけですが、東京応援団として、支えるという思いを形にして還元したい。ゆくゆくはもっと支援の輪を広げて、ホームゲームのピッチボードまで出せるようになればと思いますし、それともう一つ、熊本の人って、やっぱりお互いにライバル意識を持っていたりするので、『東京応援団がスポンサーになれるんだったら、うちの会社にもできるんじゃないか』という風に、熊本出身の在京の経営者さんなどの刺激になれば、という思いもあるんです」(時任さん)

[写真]=井芹貴志

 実は27日の千葉戦も、「チバ1000プロジェクト」と銘打ち、アウェイ側ゴール裏に1000人を集めるという集客イベントを行なっていた。ニッパツ三ツ沢球技場で行われた第14節の横浜FC戦に敗れた後、告知用のカードを2000枚作成。20名前後が協力し合い、県出身者が営む居酒屋などに配布して、2週間弱、観戦、応援を呼びかけた。

 ただ、同日、横浜アリーナで行われたバスケットボールのB1・B2リーグ入れ替え戦に出場した熊本ヴォルターズ(結果は惜しくも3点差で敗れ昇格はならず)の応援に足を運んだ人も少なくなかったため、残念ながら目標とした1000人の集客には届かなかったものの、それでも熊本から来たサポーターも含め、450人余りがゴール裏スタンドに集った。

「ヴォルターズももちろん応援してますから、日程が重なってしまったのは残念でした(笑)。でも、2016年の千葉戦をきっかけに見にきてくれるようになった方が知人を連れて来てくれたりするようになったおかげで、関東の試合でもゴール裏の人数が増えてきて、町田ゼルビア戦でもかなりの方が来てくれました。だから余計に、関東で勝利を味わってほしい。楽しみながら応援していく一方で、今までロアッソを見たことがない人、試合を見に来たことのない人もスタジアムに呼びたいんです」(時任さん)

 東京応援団の今回の活動からは、クラブをサポートするかたち、コミットの仕方は様々で、ホームタウンから離れて暮らすからこそ見えるもの、できることがある、ということがうかがえる。

 関東では2015年シーズン第26節の千葉戦に勝ったのを最後に勝利がない熊本。しかし後押ししてくれる存在は地元以外にもいる。こうした熱いサポートに応えるためにも、今季、関東圏で残るヴァンフォーレ甲府、大宮アルディージャ、東京ヴェルディ、水戸ホーリーホックとのアウェイ戦では勝利を届けたい。

取材・文=井芹貴志

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