2017.12.22

【ライターコラムfrom京都】“継続”から“改革”へ舵を切った京都…1年を通して見えた課題と収穫とは?

京都
今季は苦戦を強いられた京都 [写真]=Getty Images
京都サンガF.C.を中心に取材するサッカーライター

 昨季、5位で挑んだ明治安田生命J1昇格プレーオフでセレッソ大阪に敗れたクラブは、継続ではなく改革を選んだ。複数の主力選手を含む16人(期限付き移籍中だった選手は除く)がチームを離れ、約半数以上の選手が入れ替わった。また、契約があと1年残っていた石丸清隆・前監督も解任し、新監督に布部陽功氏を選出。柏レイソルでのコーチとして高評価やJクラブの指揮官を送り出している“ネルシーニョ門下生”としての期待もある一方、監督経験は柏U-18を約2カ月率いただけという経験の無さは不安要素だった。そうして臨んだ今季の結果は14勝15分13敗、勝ち点57の12位。J1昇格を掲げていたチームにとって納得できるものではない。順位はプレーオフ圏内へ届かないどころか、1桁に一度も入れなかった。ここではスタートダッシュに失敗した序盤戦、11試合負けなしと立て直したように見えた中盤戦、昇格の火が消えていく中で調子が上向いた終盤戦に分けて今季を振り返ってみたい。

 チームは、序盤戦からつまづいた。ホーム開幕戦となる明治安田生命J2リーグ第2節・徳島ヴォルティス戦で今季初勝利をあげたものの、試合内容では同じく新監督を迎えたばかりの相手に完敗。その後は結果も出ずにチームは自信を失っていく。布部監督は鹿児島キャンプからボールを積極的に奪いに行き、攻撃でもサイド攻撃を軸に分厚い攻撃をしかけるアクションサッカーに取り組んでいたが、新チームが発足して間もない中で複数の主力選手が負傷離脱した影響などもあって機能したとは言い難い。チームとしての土台や昨年からの積み上げがあれば、結果が出ない中でもそこを拠り所として戦うことができるが、それがないチームは7試合を終えてわずか1勝。順位も21位へと転落した。

 一つ目の転機は第8節・愛媛FC戦だ。ベルギー人FWケヴィン・オリスとDF田中マルクス闘莉王がともに負傷から復帰したタイミングで、彼らを前線に配置してロングボールを送り込むキック&ラッシュに戦い方を代えて試合に挑むと、闘莉王が衝撃のハットトリックで6試合ぶりの勝利。その後も高さと強さを兼ね備えるツインタワーは敵陣で起点となり、ゴール前ではフィニッシュに顔を出すなど、相手の脅威となる。また守備でも3-4-3でマンツーマン気味にボールを奪いに行くやり方から、4-4-2でゾーンを形成する昨季の形へシフトすることで、一定の落ち着きを取り戻した。

闘莉王

FWとしても活躍した闘莉王 [写真]=Getty Images

 ただ、この“プランB”は苦境を乗り切る為の、あくまで一時的なものと思われていた。結果を出して持ち直すことができれば、そこから再び目指すサッカーへトライしていくだろう、と。だが、思った以上に結果が出た。出てしまった。正確な技術、巧みな駆け引き、そしてゴール前で誰よりも冷静に状況を見極めてFW顔負けのフィニッシュを繰り出す闘莉王の存在は絶大だった。チームは11試合負け無しで中位へ浮上。試合内容は物足りなくとも結果が出るとなれば、J1昇格を課せられている指揮官はそう簡単に方針転換はできない。だが、その裏では運動量の少ない前線の為に攻守で献身的なアップダウンを繰り返し、主将のGK菅野孝憲が「今はあの2人がチームの生命線」と話したMF小屋松知哉とFW岩崎悠人の両サイドハーフが疲弊していく。ビルドアップを含めた攻撃の構築という課題は改善されない一方で、前線にロングボールを送り込むスタイルはシンプル故に次第に相手へ対策されていった。ある選手は「トゥーさん(闘莉王)たちが空中戦に強いから、出し手も安易にロングボールを蹴りすぎた。もっと足元にパスを付けるとか、違う攻撃もすべきだった」と反省するが、それが現実的に難しかったのも事実だろう。“FW闘莉王”という劇薬に味を占めたチームは目の前の試合を戦うのに必死で、そこからの発展性を感じることは難しかった。

 J1昇格が数字の上でも厳しくなっていく中、二つ目の転機が迎れる。8月から9月上旬にかけて3分4敗、内容も上向かない状況の中を受けて、布部監督は第32節・モンテディオ山形戦後に戦術と選手起用の変更を決断する。GKには清水圭介、ボランチの吉野恭平をセンターバックへ下げて、FWにイ・ヨンジェを配置した。まず、清水はセットプレーからの失点が続いていたことを受けて、ハイボールへの対応を強化するための起用だ。元々、菅野が加入する前年度は守護神としてチームを支えた実力者。セットプレー絡みの失点を減らし、全体的にも安定したパフォーマンスを披露して定位置をつかんだ。

 チームとしての戦い方もようやく定まった。守備では3ラインをコンパクトにしてボール保持者へプレッシャーをかけ、ゾーンディフェンスの網に追い込んだところで奪いに行く。吉野はラインコントロールによりコンパクトな陣形を維持し、背後を狙われた際はスピードを生かしたカバーリングでピンチを防ぐなど、DF染谷悠太との好コンビで最終ラインを支えた。また、相手を追い込むには前からプレッシャーが必要となる。ツインタワーではおざなりになっていた部分を、イ・ヨンジェは献身的なランニングで実行して戦術を支えた。

 そして攻撃では、ロングボールと空中戦に依存した攻撃だけではなく、パスをつなぐ地上戦にも活路を見出したい狙いを強めていく。ここでも吉野は自陣からのビルドアップで、イ・ヨンジェはDFの背後を突いてボールを引き出しつつ、相手の最終ラインを押し下げて味方がプレーしやすい状況を生み出すなど貢献している。また、一時は出場機会を失っていたMF仙頭啓矢が成長を遂げて戻ってきたことも、攻撃を構築する後押しとなった。

 プランCのお披露目は奇しくもプランBと同じ相手となる第33節・愛媛戦のはずだったが、台風21号により延期。翌週の第34節・湘南ベルマーレ戦は首位を走る相手にスコアレスドローという結果だけでなく、試合内容でも互角の勝負を演じており、その試合を含むラスト10試合を5勝4分1敗という好成績で終えた。J1昇格が絶望となり、重圧から開放された状況とはいえ、最後の最後でようやく希望の灯をともすことができたと言えるだろう。

 今季は、チームとしての不安定さを払拭できないシーズンだった。原因は多岐にわたる。監督としてキャリアをスタートさせたばかりの布部監督は経験値の少なさを随所で見せてしまった。シーズン中に戦い方を変更せざるを得なかったことでチーム戦術の定着に苦労し、ピッチ上では個の能力に頼る場面が多かった。それが上手くはまる試合もあったのだが、やはり年間を戦い抜く上で連動性を伴った攻撃や守備を安定して発揮できなければ昇格争いに食い込んでいくことは難しい。選手交代でも、迷いが見える中でタイミングを逃してしまった試合が、特に前半戦では何度か見られた。

布部

監督経験1年目で京都を率いた布部監督 [写真]=Getty Images

 チーム編成でも反省点がいくつかある。その一つがボランチやサイドハーフといった中盤の選手層の薄さだ。序盤戦に吉野と韓国人MFハ・ソンミンの主力ボランチが揃って離脱すると、代役を任されたのは攻撃的な位置で持ち味を発揮する仙頭とMF望月嶺臣。シーズン終盤には試合経験を重ねる中で計算できるようになった2人だが、この時点では守備面のタスクをこなしきれずに失点を重ねている。ボランチに関しては獲得寸前だったMF田口泰士(名古屋グランパス)がギリギリで残留に傾くといった背景もあったようだが、結果としてアンバランスな構成のチームを指揮官に託さねばならなかったのは悔やまれるところだ。

 今季は単にJ1昇格を目指しただけのシーズンではない。現在のJリーグは3期連続で赤字になればクラブライセンスが支給されない制度だ。その中で京都サンガF.C.はJ1昇格を悲願として2期連続の赤字覚悟で予算を組んでいる。その勝負のシーズンを実績や経験のある監督ではなく、トップカテゴリーどころか育成年代でも監督経験がほとんどない新人監督に託すという判断がリスキーではないかという声は開幕前からあった。もちろん、誰しも監督としてのキャリアをスタートさせる1年目は存在する。例えば今季のJ1を制した川崎の鬼木達監督もその一人だが、川崎の場合は前任者からの継続路線の上に挑戦できる土壌があった。京都の場合、昨季から今季にかけて監督が代わり、選手も複数の主力を含む約半数が変わり、取り組むサッカーも変わっている。さらに選手編成は特定ポジションの選手層が薄く、夏の補強も充分に行えない。このような状況で結果を出すことは、仮に経験のある監督でも非常に困難だ。

 ここまで苦言を呈する内容となったが、収穫としては選手の成長があげられる。小屋松、岩崎、仙頭の京都橘高等学校トリオに加えて、終盤戦ではMF田村亮介やFW大野耀平といった若手から中堅に指しかかる選手が存在感を高めた。この点に関しては、柏でも若手の育成や中堅・ベテランの復活を手助けした布部監督の手腕が発揮された。高卒ルーキーながら35試合に出場した岩崎も「ボールを止める、蹴るのところ。それとプレーの緩急について、布さん(布部監督)のおかげでだいぶ成長できました。プレーの成功率も上がったし、イメージも膨らむようになってきた」と話している。また、仙頭は守備面やハードワーク、田村はボールを受ける前の動きや判断を指導されながら“優れた部分はあるが、それ以外のところが…”というレッテルを剥がしつつある。

岩崎

アンダー世代の日本代表で活躍中の岩崎 [写真]=Getty Images

 そうした課題と収穫を踏まえて、来季へ向けた準備は着々と進んでいる。戦い方は終盤戦のサッカーがベースとなるだろう。監督・選手ともに手応えを口にしており、走って、戦える選手で今度こそアグレッシブなスタイルを目指す意向だ。リーグ戦終了後に若手選手中心で行われた練習ではポゼッションに踏み込んだ内容を行うなど、すでに仕込みは始まっている。

 チームの陣容も徐々に見えてきた。総入れ替えとなる外国人選手は南米系になる予定だ。武者修行に出ていた複数の若手選手が期限付き移籍から復帰することも発表されている。また、フロントにも変化がある。ミスターサンガとしてクラブとともに歴史を歩んできた野口裕司・強化部長がJ1昇格を達成できなかった責任を取る形で退団し、後任には闘莉王をはじめとする元・名古屋勢の獲得や布部監督の招聘など現体制下でも辣腕を振るってきた小島卓氏が就任する。現場と強化の両輪を機能させて、今年の雪辱を晴らすことができるかどうかに注目が集まる。

 かつては昇格と降格を繰り返すエレベータークラブと揶揄されたが、現在は上へ昇るボタンを押すことができず、来季でJ2在籍8年目を迎える。J1昇格はもちろん目標だが、その為になにをするのか、どのような道を歩んで昇格したいのかという全体像をしっかりと構築していかなければならない。今季はサポーターをはじめクラブを支援する人から不安や心配の声が多く聞かれた。困難な状況は依然として続くが、来季がポジティブなシーズンとなることを節に願っている。

文=雨堤俊祐

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