2017.11.10

【Jリーグと私】谷原章介(俳優)~地元・町田から夢は世界、愛するゼルビアの旗頭に~

[写真]=野口岳彦
サッカーキング編集部

 25年目のシーズンを迎えたJリーグ。今季はスカパー!を中心としたテレビ視聴からDAZN(ダ・ゾーン)が展開するネット配信視聴へと移行し、リーグ戦も1シーズン制が復活するなど、大きな変化があるワールドカップ前年のシーズンを戦っている。



『サッカーキング』ではJリーグ、各クラブを愛すると公言する人たちに、その魅力や観戦術などを聞くインタビュー連載『Jリーグと私』を掲載中。改めてJリーグの魅力についていろいろなジャンルの方に聞いていく。

 第4回は俳優としての活動以外にも、近年はクイズ番組、料理番組、音楽番組の司会を務めるなど、マルチな活躍をしている谷原章介さん。料理、音楽、野球など多趣味な谷原さんがサッカー、そして地元・町田にあるクラブ「FC町田ゼルビア」にハマった理由、魅力について聞いた。

インタビュー=小松春生
写真=野口岳彦

■サッカーの魅力は“常に動き続けるスリリングさ”

10月に行われた町田vs金沢でゴール裏のサポーターへメッセージを送った [写真]=野口岳彦

———まず、FC町田ゼルビアを応援するようになったきっかけから教えてください。

谷原章介(以下、谷原) ある方がずっとゼルビアを応援していて、これからプロ化、JFL、Jリーグを目指していくという社会人リーグ時代に、「お前は野球で広島(東洋カープ)を応援しているんだから、サッカーくらい地元を応援しろ」と言われたことがきっかけです。幼少期、すぐに横浜へ引っ越すことになったんですが、生まれは町田の(本拠地がある)鶴川で。そこから観に行くようになり、だんだんハマっていきました。JFL昇格を決めた2008年の全国地域サッカーリーグ決勝大会も、「これに勝たなければ」という試合は本当に緊張しました。

———それ以前はサッカーについての関心などはいかがでしたか?

谷原 いわゆる典型的な“日本代表の試合になると気になる人”でした。基本、野球はずっと追いかけていたので、スポーツニュースの流れからサッカーを見ていたことが中心でしたね。横浜に住んでいたので、昔はマリノスかフリューゲルスだったので、どちらかというとマリノス、という程度でした。

———深くサッカーに関心を持てるようになった競技としての魅力は何でしょうか?

谷原 攻守が常に入れ替わり続けることです。ブレイクがあったり、一個一個のプレーが止まらない、基本常に動き続けるという45分間はスリリングですよね。切れない競技だからこその見方がわかってきて、すごく詳しい方にも「誘う動きをしたことによってスペースができた」とか「飛び出していたことによってゴールが生まれるプレーにつながった」と教えてもらい、「なるほど。ボールがあるところだけ見てはダメなんだ」って(笑)。

■最初はチームの入れ替わりの激しさに馴染めなかったことも…

[写真]=野口岳彦

———谷原さんは野球もお好きでいらっしゃいますが、観戦の仕方や楽しみ方など、いろいろ違う部分があります。

谷原 サッカーと野球では、見ている側の選手に対する思い入れの抱き方が違うと思っています。野球の場合、フリーエージェント(FA)を取得するまで同じチームに10年くらい所属します。しかもFAを取得しても移籍しなかったり、選手の動きがそんな多くありません。でもサッカーの場合だと、選手がすぐ移籍してしまったり、レンタルで加入してくる選手だったり、動きが多く、応援していくことの難しさを最初は感じました。でも、ゼルビアを応援するようになって、ちょっとでもゼルビアに来てくれた選手や、もしくは移籍先で活躍している選手、その時にアウェー側に回っている選手も、一回でもゼルビアで頑張ってくれていた選手は応援したいという思いになったり、そういうサッカーのシステムがだんだんわかってきたことで、よりゼルビアやサッカーに対する思いが深くなっていきました。

———完全にサポーター目線ですね。

谷原 最初は馴染めなかったです。1年くらいで選手が移籍して、対戦相手となってゴールを決められたりすることもあるので。それが応援することへの不完全燃焼感になっていました。チームを応援するし、選手も応援する。一方で、メンバーがコロコロ変わったりすると「チームって何なんだろう?」という思いをどこかに抱いていました。でも、サッカーの場合は野球と比べると選手寿命が短いですし、出番がなく燻るぐらいだったら、違うチームに行ってチャンスを掴んで自分を成長させるという考え方もあると分かり、そこが野球とは全然違うと思ったんです。

———その違いもあって、サッカーにも没入できたんでしょうか?

谷原 そうですね。それが自分で腑に落ちてから入っていけました。それまでは「なんで出て行くんだろう」、「レンタルって何でするんだろう」と思っていたんですが、若手で伸びしろがある子は、“鉄は熱いうちに打て”ではないですが、J1からJ2へレンタル移籍をさせ、プレーする場を与えることが、選手のためでもあると思えるようになりました。

———レンタルで若手選手がゼルビアに来ることもありますね。

谷原 もちろんゼルビアで活躍してくれたら嬉しいですけど、所属元へ戻っても応援したいなって思います。サポーターはチームはもちろん、サッカー全体も愛しているのだろうなと。

■J2参入が決まった時、プロの世界に来られた感慨深さがあった

スタジアムでのトークショーに登場 [写真]=野口岳彦

———これまで、谷原さんはゼルビア一筋ですか?

谷原 ゼルビアです。

———そこまでブレずにいられたのは地元のチームだったことが大きいですか?

谷原 そうですね。あと、町田という街は多くのJリーガーを輩出しているんです。でも、地元にプロクラブがないことで、町田の選手が町田で活躍できないということがすごく歯がゆかったと、クラブ立ち上げの時に皆さんの熱い思いをうかがって。前身のFC町田は全国でも強豪だったにもかかわらず、プロ化できなかったことによって、どんどん選手が流出していった悲しさをおっしゃっていました。

 でもプロ化をあきらめず、社会人からJFL、JFLからJ2に上がって、途中でJ3に降格したこともありましたけど(苦笑)、一つひとつステージが上がることによって達成していっている喜びを、一緒に味わわせていただいていることは、とても贅沢なことだと思います。一方で、2012年シーズン後にJFLへ降格した時はすごく悔しかったんです。そのシーズン、同時にJ2へ上がった松本山雅FCがその後トントントンとJ1まで行って。ゼルビアはJFLに落ち、J3でも2シーズン過ごしましたが、あの時は悔しかったですね…。

———歯がゆい思いも共有できていることが支え続けていることにつながっているかもしれませんね。

谷原 はい。でも、悔しさと同時に山雅が上のカテゴリーへどんどん行ってくれたことで、「僕たちも行けるんだ」と思えました。山雅もクラブのスタートが松本の喫茶店で、そこに集まっていた人が頑張り、どんどん周りを巻き込んで大きくなっていった。なかなかそんなことないですよね、J1チームに関われるって。例えば今から僕がJ1の大きなクラブの中心に関われるかと言えば絶対に関われないですけど、ゼルビアの場合、僕もサッカーを学ばせてもらっていますし、同時にゼルビアが大きくなっていくことにずっと関わらせてもらえているという喜びを強く感じています。

———ちなみに、これまでで一番印象に残っているシーンは何ですか?

谷原 先ほどお話ししたJFL入りが決まった沖縄での試合はとても印象に残っています。あとは最初にJ2参入が決まった2011年末も印象に残っていますね。

———どんな心境でしたか?

谷原 「あ、Jに入れるんだ」という別世界に行く感覚でした。JFLは完全なアマチュアではないですが、完全なプロでもない。J2参入が決まって、本当のプロの世界にようやくゼルビアも来られたという感慨深さがありました。

———「J」がつくと少し誇らしい気持ちにも。

谷原 なりますよね。「僕が応援しているチームはJ2なんだ」と言うのはJFLと違いますね。

■ユース出身の選手がもっと増えてほしい

[写真]=野口岳彦

———谷原さんが感じるゼルビアの魅力を教えてください。

谷原 地元の人間が、地元で育った選手を導いて戦っていることですね。選手全員が町田出身ではありませんが、地元に目指せる目標ができたことによって、子どもたちが「僕もサッカーを一生懸命やればゼルビアに入れるかもしれない、入りたい」と、夢を持ってサッカーを頑張ってもらえるようになったと思います。橋村龍ジョセフ選手(17歳、町田下部出身)が今季出てきて、「そんな若い子が」とびっくりもしましたが、彼のようにユースから上がってくる選手がもっともっと出てくるようになると嬉しいです。Jリーグの魅力はゼルビアだけでなく、地域といかに密着、根付くかというところで。それをさらに一歩進んだ形でゼルビアにはやっていただきたいと思います。

———ちなみに谷原さんはお子さんをサッカー選手に、と思ったことはありますか?

谷原 サッカーはやっていますが、プロを目指すレベルでは…。小学校1年生ですし、「好きにやりなさい」と(笑)。「プロを目指したい」と言うようであれば、ゼルビアでやってくれたら嬉しいですけどね。

———地域密着と言えば、『ゼルビア×キッチン』という食堂も営業しています。そして、谷原さんといえば料理、というところで、コラボレーションをしてみたいというような気持ちは…。

谷原 いやぁ…、一人分くらいは作りますけど(笑)。僕も行ったことがありますが、あれだけ大量の食事をコストとバランスを考えて作ることは本当に難しいことです。大変さを感じますね。でも、そういったクラブの特色があることはいいことですよね。例えば地域のサッカー少年団が食べに来てくれてもいいですし、ゼルビアの選手たちは結構利用しているようですし。

■今季スタジアムでは2度観戦。行けない時はDAZNで

10月の金沢戦でハーフタイムにサポーターへ挨拶 [写真]=野口岳彦

———ゼルビアの今季はどうご覧になっていますか?

谷原 順位は無風状態ですよね(笑)。J3に落ちた時のことを考えると、降格が無さそうなことはいいことですが、来季を考えると流れの中の失点というより、リスタートから失点することが多いと思うので、そのあたりを改善してほしいと思います。あとは、コンパクトにギュッとまとまったサッカーがゼルビアらしさですが、その分、裏を突かれた瞬間の脆さもあると思います。そして今季は開幕前に鈴木孝司選手のケガもあって(アキレス腱再断裂で8月に復帰)。鈴木選手が万全の状態になってくれないと、上位に食い込むことは難しいと思っています。今の順位に甘んじていることは、その影響がとても大きかったのではないでしょうか。

———相馬直樹監督の印象はいかがでしょう。

谷原 すごく愛がありますよね。チームが一丸となっている感じを受けるんです。選手に信頼されていると思うので、相馬監督には今後も頑張っていただきたいです。

———スタジアムでご覧になる頻度は現在、いかがでしょう?スケジュールの合間を縫って、かと思います。

谷原 今季は2度ほど見に来ています。

———スタジアムで見られない時はネット中継などで追いかけて?

谷原 スポナビライブとDAZNは両方使っていますね。DAZNでゼルビアの試合と広島カープのホームゲーム、スポナビで広島のビジターをカバーしています(笑)。カメラの数がDAZNはすごく多いですよね。知り合いのカメラマンが「求められるクオリティがすごく高い」と言っていたことを思い出します。

■市民がプライドを持って守り、育てていけるチームになってほしい

[写真]=野口岳彦

———サポーターとして今後、ゼルビアはどういったクラブになってほしいですか?

谷原 チームはスポンサードしていただいている玉川学園さんや小田急さん、イーグル建創さんなどのサポートもあるからこそ成立していますが、ゼルビアは市民が愛し、育てているチームだと思うので、市民がもっともっとゼルビアというチームに参画をして、育てていけるシステムを構築してほしいですね。市民が、僕たちがゼルビアを応援して育てる、成立するチームになってほしいです。たくさんのバックアップを受けているチームではないので、J1に上がることができたりすれば、本当の市民クラブチームと言えるようになると思います。

———屋台骨を支えているのが街の人になってほしいと。

谷原 そうなってほしいです。例えば親会社が傾くとチームが傾くことはとても悲しいことです。日本は企業文化からスポーツが始まって、それが衣替えをしてプロになっているものが多いと思います。それで親会社が倒れた時、クラブチームも倒れてしまったら、サポーターにとってこれほど悔しいことはありません。ゼルビアはまだ小さなクラブですから、今の規模の時にいかにサポーターの方々に、経営に参画していただくと言うより、屋台骨の土台部分を支えていただけるようなシステムを構築できるのか。試合に来て、観戦することにお金を払っていただくだけではなく、市民がプライドを持ってゼルビアを守り、育てていけるようなチームになっていってほしいです。

———谷原さんもその旗頭として。

谷原 そうですね。僕は旗を振るくらいしかできないですけど(笑)。その流れで夢はJ1昇格、さらにAFCチャンピオンズリーグですね。そういう場所を目指していただきたいと思います。

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