2017.10.14

【ライターコラムfrom仙台】残り6試合へのリスタート…ルヴァン杯を終えた仙台が目指すもの

仙台を率いる渡邉晋監督 [写真]=Getty Images
ベガルタ仙台を中心に追いかけるライター。書籍に『在る光 3.11からのベガルタ仙台』など。

「おかしい、負けたのに……」。思わず、声が出た。2017年10月8日、17時26分頃、記者会見を終えたベガルタ仙台の渡邉晋監督は、湧き起こった拍手に戸惑いを見せた。

 等々力陸上競技場で行われた、2017JリーグYBCルヴァンカップ準決勝第2戦で、ベガルタ仙台は川崎フロンターレに1-3で敗戦。第1戦は3-2で勝っていたものの、180分合計4-5で敗れ、クラブ史上初の決勝進出への道は閉ざされた。

 試合後の記者会見で、渡邉監督は反省の弁を述べるとともに、仙台のメディアからも、中立的なメディアからも質問を受け、最後には長期的なチーム作りのコンセプトや理想まで丁寧に回答し、「長くなってすみません」と謝りつつ退席。その時に、どこからともなく、報道陣から拍手が起こった。

惜しくも決勝進出とはならなかった [写真]=Getty Images

 実は渡邉監督がこの場所での記者会見後に拍手を受けたのは、二度目のことである。最初は2016年、明治安田J1リーグファーストステージ第10節のことだった。当時は6試合勝ちが無い状態で、上位を走る川崎を相手にするという厳しい条件下で戦った。しかし、攻守ともに鋭い動きを見せ、自陣からの流れるようなパスワークから富田晋伍のゴールで先制した。それでも大島僚太の見事なドリブルからのゴールで追いつかれて勝利はできなかった。

「昨年(2015年)からなのですけれども、ボールをしっかり自分たちが保持する。その中でアタックを仕掛けるというものにトライしていますから、握る(保持する)ことが得意な川崎フロンターレさんを相手に自分達が握り返してやろうというような意気込みを持って臨みました」

 と、チームの方針を述べた渡邉監督が会見後に席を立つと、報道陣からは自然発生的に拍手が起きた。監督が勝てず、引き分けて拍手を受けたのは、就任してからホームでもなかったこと。敵地で、しかも仙台のメディアではない側から起こった拍手だった。

 それから約1年半後に、仙台はルヴァン杯で準決勝に駒を進めるチームとなった。ベスト4のうち、J1第28節終了時点で二桁順位なのは仙台だけ。しかし、序盤で負傷した平山相太と2種登録選手を除いた全選手がベンチ入りして、ここまで進んできた。

 実際のところ、この準決勝第2戦全体を見れば、仙台の出来は良くなかった。監督が「私の責任」と自ら采配ミスを認めた終盤は、1-2とした後に選手交代で3-4-2-1から4-4-2にフォーメーションを変えたものの、その際にこれまで磨いてきた動きも失ってしまった。「攻撃時のバランスが悪くなってしまった」。初期配置のポジションから、相手に先んじたり相手の出方に応じたりして有効なスペースにポジションを取り、パスワークを展開するスタイルを、存分に発揮できたとは言い難かった。遡れば、川崎に押されてポジションが取れなかった立ち上がりの時間帯もまた悔やまれる。

中野が反撃の狼煙を上げる一撃を叩き込む [写真]=Getty Images

 しかし、2点をリードされてから、中野嘉大のゴールで1点を返したあたりまでの時間帯に仙台が見せたもの……。ランニング、パスワーク、ボールを奪われても奪い返す守備、そして何より勝への闘志は、この日に初めて仙台の試合を見た人にも何かを残せるものだった。負傷や出場停止などで多くの主力選手を欠いた状態で、この試合を戦い抜いたことも付け加えたい。

 だからこそ報道陣からの拍手が起こったとも言えるが、指揮官の戸惑い同様、それで満足してはいけないところに、今の仙台は立っている。主導権を握れた時間をもっと長く作れれば、結果を得て、自信も得て、その先に進めたのだ。

「自分たちがここで、本当にタイトルが獲れたんじゃないかという悔しさを本気で味わう本当にいい機会だったかもしれないし、でもやはりそれではだめなんだと強く思って、本気で上を目指していかなければいけない」

 監督の言葉を受けるように、試合直後から選手たちも先を見ていた。「チームとしてある程度戦いができたところはありますが、もう一歩上に行くために、チームとしても個人としても、自分たちがもっとレベルアップしないといけない」(中野)、「『ここまで来て良かったね』というだけでは成長はないので、できたらケガ人が出た中でも、上に行けるチームにならなければいけない」(増嶋竜也)。

 仙台に今季残された公式戦は、リーグ戦の6試合。これからも成長を続けるために、一つも無駄にするわけにはいかない。

文=板垣晴朗

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