2017.10.13

【ライターコラムfrom松本】「犠牲心」が育む成長曲線…高崎寛之、8年ぶりの自己最多得点へ猪突猛進

高崎寛之
松本山雅FCでプレーする高崎 [写真]=JL/Getty Images for DAZN
1978年生まれ、東京都出身。長野県内の新聞社で15年まで勤務し、現在はフリーライターとして松本山雅FCを中心に信州スポーツを幅広く取材。クラブ公式有料サイト「松本山雅FCプレミアム」編集長も務める。

「ああ…またか」

 松本山雅FCの1トップ・高崎寛之の仕事はたいてい、心の中でそう呟いてから始まる。試合開始直後、自らをターゲットにしたロングボールが飛んできたとき。相手のセンターバックだけでなく、ボランチやサイドなど複数に囲まれるからだ。特に今季は対戦相手から徹底的に警戒されるケースが目立っている。

 だが、熟練のストライカーはいささかも動じない。「2、3人に囲まれたりファウル覚悟で激しく来たりするので、そこで耐えるのかファウルをもらうのかキープするのか。選択は大変だけど起点にならないと(味方が)押し上げることができないので、そこは割り切って体を張っている。若い時より体力は衰えているかもしれないが、サッカーの知識や経験でプラスアルファを補えている」。先に触れなくてもファウルを得られればセットプレーのチャンスになるし、狙い通り落とせればMF工藤浩平やMF石原崇兆ら2シャドーが前向きに拾って好機をつくり出していく。

 その駆け引きの巧みさは、セットプレーでもいかんなく発揮されている。真骨頂とも言えるのが、明治安田生命J2リーグ第36節ロアッソ熊本戦で決勝点となったヘディングだ。マークに付いた相手DFの脳裏には、高崎がニアサイドに入る得点パターンが多いというデータがインプットされていたのだろう。そこで高崎はニアに寄るふりをしておびき出し、自らは動きを止めてまんまとゴール前でフリーになった。「分析されて結構早めに動かれることもあるので、それを逆手に取った。うまく駆け引きをして一瞬でも外せればゴールは取れる」。あとは188センチのサイズを生かした打点の高いヘッドで、豪快に仕上げるだけだった。

 このゴールで、シーズン途中加入だった昨季を上回る17得点目。8年ぶりのキャリアハイ更新もいよいよ視野に入っており、「残り6試合なので頑張って6点取りたい」と貪欲な姿勢もにじませる。ただ、現在3位のリーグ得点ランキング争いに話が及ぶと反応は控えめ。日本人トップ20ゴールの徳島ヴォルティスFW渡大生に対しては「PKなしで20はすごい」と率直に認めつつ「やっぱり負けたくはないけど、徳島とはフォーメーションもチームのスタイルも違う。自分は自分で、チームの中で役割を果たして犠牲心を持ってやりたい」と、飄々としたものだ。

高崎

前線で体を張る高崎 [写真]=J.LEAGUE PHOTOS


 この「犠牲心」というキーワードが、高崎のプレースタイルを象徴している。ロングボールの競り合いで潰れ役をいとわないのはもちろん、サイドのスペースに流れてボールを引き出すプレーも自在にこなす。第35節水戸ホーリーホック戦では右サイドの長い距離をトップスピードでドリブルし、石原の決勝点をアシスト。「真ん中にいるだけだとマークに付かれやすい。サイドに流れたりセンターバックを引き出したりというのは(反町康治)監督からも常日頃から言われていることなので続けていきたい」と力を込める。

 それだけではない。2-0から終盤に3失点して敗れた第34節レノファ山口戦後のトレーニング。高崎は全体練習が終わった後、チーム随一のプレースキッカーMF宮阪政樹にアドバイスを受けながら直接FKの居残り練習に打ち込んでいた。次の週もその自主トレは続行。まだ実戦で披露するには至っていないが、新たな取り組みへと衝き動かされた思考の出発点には「チームが勝つためにできることは何でもやる」という無私の精神が横たわっている。

「点は取れているけど、大事なのはチームが勝って順位を上げること。点を取れていない時期もあったので、それを踏まえるとまだ力不足だと思っている。トレーニングや自主トレでもっともっと自分のパワーを引き出したい」。J1昇格争いが大詰めとなる残り6試合、おそらく対戦相手は高崎に最大限の注意を払ってくるだろう。だが、それを上回る確かな蓄積と強烈な意志が、この男には宿っている。

文=大枝令

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