2017.08.16

【ライターコラムfrom松本】「ワクワクした」名古屋戦…下川陽太、J初先発の舞台で感じた“自信と課題”

下川陽太
名古屋戦で初先発を果たした下川陽太 [写真]=J.LEAGUE
1978年生まれ、東京都出身。長野県内の新聞社で15年まで勤務し、現在はフリーライターとして松本山雅FCを中心に信州スポーツを幅広く取材。クラブ公式有料サイト「松本山雅FCプレミアム」編集長も務める。

 31,481人。今季の明治安田生命J2リーグで2位となる大観衆をのみ込んだ名古屋グランパスとの大一番で、松本山雅FCの下川陽太は初先発に抜擢された。来季の加入が内定済みの大阪商業大4年生。チームの台所事情が芳しくなかった側面はあるが、特別指定選手をリーグ戦で先発起用するのはJ参入6年目で初めてのチャレンジだった。

 年代別代表など目立った実績がない自身にとっても、人生最大の晴れ舞台。だが周囲の不安をよそに、実に伸び伸びとしたプレーを披露してくれた。「硬くなるのが一番いけないと思っているから、リラックスして試合に臨むようにしている」と下川。それは多くの選手があの手この手で試みていることだが、ぶっつけ本番で実現できたのは「普段からボケッとしているから(笑)。ああいう場面ではいい方向に出たんだと思う」という強心臓の賜物かもしれない。

 J1を彷彿とさせる雰囲気にも臆せず、左ウイングバックで持ち味を存分に発揮。まずは13分、クリアボールを足元に収めてのカウンターで左サイドからペナルティーエリア内に侵入した。利き脚の右でシュートを打つフェイントをかけて切り返すと、相手DF3人を置き去りにして縦に突破して左脚シュート。これは枠をわずかにそれたが、十分にゴールの可能性を感じさせた。さらに22分、再び左サイドをえぐって深い位置からグラウンダーのクロス。ファーに詰めていたセルジーニョには惜しくも合わなかったが、これも下川の積極性が生んだシーンだった。

 試合は2-5の大敗だったが、「ワクワクしたし楽しかった。やれると思って入ったし実際こういう舞台でやれたのは自信になる。1つレベルが上がったかなと思うし、いい経験ができたと思う」。名古屋に対しては「近寄ってもボールを取れないシーンがあって、僕自身としてもチームとしても質が全然違うと思った」と舌を巻いたが、それでも「自分がボールを持っている時の1対1や、サイドで当たり負けずボールを取りに行く積極性はいい形で出せたと思う」と強気な言葉を自然に紡ぐ。とはいえ後半になって以降は目立ったインパクトを残せず。90分通じて安定したパフォーマンスを出すという課題も新たに生まれたし、ディフェンス時のポジショニングなど改善の余地もある。

2-5と大量失点を喫し、ほろ苦い結果に [写真]=J.LEAGUE

 関西学生リーグ2部Aの後期のスタートに伴い、9月中旬からは再び大学に戻ってプレーする下川。それまでの期間、プロの環境でどれだけ経験を積めるかが重要な意味を帯びる。「今は山雅にいるので、大学のことはあまり頭にない。『大学生だから』と思われるのが僕の中では一番イヤだし、プロとして見てもらえるような振る舞いとか姿勢を先輩から学ばせてもらっている」。高崎寛之や宮阪政樹など面倒見のいい先輩にさまざまなアドバイスをもらいながら、日々着実に進化を遂げていくつもりだ。

文=大枝令

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