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【ライターコラムfrom岡山】若手の台頭と競争が生んだルーキー武田将平のプロ初ゴール

2017.06.01

昨季、神奈川大から特別指定選手として岡山でプレーしていた武田は第16節の大分戦でプロ初ゴールを記録した [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

 開幕してから3カ月。同級生たちの活躍を報じるニュースは嫌でも目に入り、なにより同期の塚川考輝がピッチで躍動する姿を間近で見てきた。今季、神奈川大学から入団した武田将平は雌伏のときを過ごしてきたが、焦ることなく日々のトレーニングに向かい合ってきた。

「思い返しても高校、大学とカテゴリーが上がって最初からうまくいったことはなかった。高校のときはやっと3年生になって試合に出れたし、大学のときも1年生の秋からだった。これまでも試合に出れない時期があったので自分らしいな思っていたし、コツコツやっていればいつかチャンスが来ると思っていました」。


 だからこそ、いきなり訪れたデビュー戦でご褒美が与えられたのだろう。

 15試合を終えて一度もベンチ入りメンバーにも選ばれたことはなかった中、「今週の練習を非常に熱をもってやっていた」(長澤徹監督)ことが評価されて第16節の大分トリニータ戦の先発メンバーに選出された武田は、主戦場のボランチでプレーしていた前半からポジションが一つ前になった後半、3人目の動きでタイミングよくペナルティエリアに入り左足を冷静に振り抜くと、ボールは美しい弧を描いてゴールネットに吸い込まれていった。大分銀行ドームが鎮まる見事な一撃を決め、武田は記念すべきプロとしての一歩目に自ら花を添えてみせた。

 もっとも、試合後に取材を受けて「自分でもビックリしています」と紅潮した顔で語ったルーキーは、「でも、これからです」と先を見据えていた。「やっと一歩踏み出せただけで、今日はチームの力になれなかった気持ちの方が大きかった。自分が中心になってやれるようになりたいし、もっと欲を出してこれからやっていきたい」。爛々と輝く目の先はすでに次にチャンスをもらったときのために、練習場で汗を流す日々に向かっていた。

 試合は残念ながらその後に同点に追い付かれてドロー。負傷離脱者が多く安定したパフォーマンスを継続できないチームの現状は悩ましいが、「一人ひとりの成長、覚醒にかけてチーム作りをしている」(長澤徹監督)岡山にとって、新戦力の台頭は大きな収穫だ。

「もっともっと攻守にやれることはたくさんあると思いますし、おごらず謙虚にやっていける人間なので高い要求を突き付けていきたい」という長澤監督に発破をかけられて武田はさらに熱量を高めて練習に打ち込むに違いなく、その姿がチームメイトへの刺激を与えていくだろう。

今季の岡山は、新人ながら主力として活躍するMF塚川(左)や2年目でJ初ゴールを挙げた藤本(右)など若手の台頭が目立つ [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

 大分戦後、ボランチで武田とコンビを組んだ30歳の渡邊一仁は「試合でいいプレーができなかったから変えられると思っています。自分は違うところで価値を見出していかないといけない」とルーキーの活躍に刺激を受けていた。5試合連続で先発出場してようやく自分の良さを出せるようになってきた石毛秀樹も、「自分も結果を出さないと。今日デビューした将平が点を取って、まだ自分は取っていない」と同級生の活躍に触発されている。

 長澤監督は今季のチームを率いるにあたって選手一人ひとりの成長をポイントに挙げてきた。ブレイクスルーを果たす選手たちのエネルギーをチームのエネルギーに変えて活力的なチームにしていくつもりだが、徐々にその種火が起きつつある。勇敢にピッチを駆けるルーキーの塚川考輝や先日にようやくJ初ゴールを奪った二年目の藤本佳希の後を武田も追い掛けてきた。これから競うように成長していく若者が岡山を熱くしていってくれるはずだ。

文=寺田弘幸

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