2017.05.06

【コラム】新潟でJ1全試合先発出場の18歳MF原輝綺が描く驚異の成長曲線

市立船橋高から今季新潟に加入した原輝綺はJ1開幕戦でクラブ史上で初めてとなる、高卒ルーキーによる先発出場を果たした [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
スポーツ報道を主戦場とするノンフィクションライター。

 もっともっと成長してみせるという誓いと、ちょっぴりの心残り。2つの思いを胸に抱きながら、アルビレックス新潟のルーキー、18歳の原輝綺(市立船橋高卒)はプロの舞台で必死に戦い続けてきたモードを、選出されているU‐20日本代表のそれに切り替えた。

 誓いは自分自身に対する不甲斐なさに導かれたものだ。川崎フロンターレのホーム、等々力陸上競技場に乗り込んだ5日の明治安田生命J1リーグ第10節。左サイドバックとして先発フル出場した原は、0‐3のスコアで喫した惨敗に「自分にすべて責任があると思う」と唇をかんだ。

「試合への入り方はよかったし、相手を押し込む時間帯もありましたけど、先制点を食らったことが痛かった。しかも自分のミスというか、自分のところでやられて失点してしまったので」

 FWハイネルに来日初ゴールを決められたのは40分。新潟のバランスが失われている時間帯だった。2トップの山崎亮平と鈴木武蔵が前へ、前へとボールを奪いにいき、2列目の加藤大とチアゴ・ガリャルド、ボランチの小泉慶とロメロ・フランクも中途半端にポジションを上げてしまう。

「あの場面ではカンペイさん(CB富澤清太郎)が、『一回リセットしろ』と声をかけていたんですけど。自分は近いので聞こえていましたけど、前の選手にはどうしても届かない。僕たち最終ラインも前の選手たちの意図が分からないまま、ボランチとの間のスペースを使われてしまって」

第10節の川崎戦で左サイドバックとして先発した原は試合後「自分にすべて責任があると思う」と敗戦を悔やんだ [写真]=Getty Images

 新潟に生じた隙を川崎攻撃陣は見逃さなかった。最終ラインの前に生じたギャップに走り込んだMF阿部浩之へ、すかさずキャプテンのFW小林悠がパスを送る。半身の体勢でゴールへ向けて戻りながら、自身の背後にいたハイネルの存在を把握していたはずだった。

 しかし、突然ピンチを招いたことで、思考回路は混乱をきたしていたのだろう。ハイネルが走り込むコースを中へ変えてくると予想しながら、阿部の動きに目を奪われてしまう。実際に「22番」が目の前に現れ、ギアを一段上げられると、もう追いつくことができなかった。

 自身とCBソン・ジュフンの間をすり抜けたハイネルが、阿部のスルーパスにワンタッチで右足を合わせ、GK大谷幸輝の股間を抜く一撃をゴールに突き刺すシーンを後方から見るしかなかった。

「自分の中への絞り方も甘かった。あの場面では最悪、自分の外側を通させないと。ボランチの背後を突かれるとは思ってもいなかったので、その意味では次の展開に対する予測も足りなかった」

 濃密な日々を駆け抜けてきた。クラブ史上で初めてとなる、高卒ルーキーによる先発を射止めたのは2月25日のサンフレッチェ広島との開幕戦。以来、ボランチで5試合、サガン鳥栖との第6節からは左サイドバックに回り、10試合すべてで先発出場を果たしてきた。

 そのうち9試合はフル出場。時間の経過に比例するように順調な成長曲線を描く18歳に、守備力を高く評価して抜擢した三浦文丈監督も目を細める。

「危険なところを察知する能力がどんどん磨かれている。今は左サイドバックをやらせている中で、相手チームの名だたるアタッカーたちと対戦してもまったく引けを取らないので」

 ボランチから左サイドバックへ回ったのは、左サイドにおける守備が崩壊気味だったからだ。苦しい戦いが続く中、守備のオールラウンダーとして指揮官の厚い信頼を感じているからこそ、先制点につながった川崎戦でのパフォーマンスに納得がいかない。

「左サイドバックとしては、目に見える変化というものがあまりないというか。5試合もプレーしてきた中で、ちょっとでもできることを増やさないといけない。最後にボランチを務めたガンバ大阪戦では、ボールを上手く自分のところに呼び込めていたし、縦パスもどんどん入れられるようになっていた。ちょっとずつですけど、プレーの幅が広がってきた、という手応えがあったので。個人的には良い経験をさせてもらっていますけど、チームの結果が出ていない点で複雑な思いを抱かざるを得ない10試合でした」

原は韓国で20日に開幕するU‐20W杯の日本代表に選出されている [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

 韓国で20日に開幕するFIFA U‐20ワールドカップへ向けて、日本代表は11日から直前合宿をスタートさせる。最大でリーグ戦を4試合欠場することになるホープは、最も得意とするボランチでプレーする韓国の地での経験を新たな力に変えて、新潟に還元したいと意気込む。

「チームの雰囲気は正直、あまり良くないけど、そこはチームメイトを信じて、自分はしっかりと頭を切り替えて責任をもって戦ってきたい。帰ってきた時に、自分のポジションがあるとは思っていない。だからこそ代表でいろいろなものを吸収して、攻守両面でより幅を広げて、帰ってきた時に使われるポジションでそれらを上手く生かして、チームの勝利に貢献したい」

 冒頭で記したちょっぴりの心残りとは、1勝2分け7敗、7得点に対して19失点と精彩を欠き、17位に低迷する新潟を留守にすることだけではない。実は浦和レッズのボランチ、阿部勇樹に憧憬の思いを抱き続けてきた。くしくも自身が欠場する14日の次節で、浦和をホームのデンカビッグスワンに迎える。

「すごくやりたかったんですけど…決して目立たないけど、阿部さんがいるのといないのとではまったく違う。ゲームの展開や状況を読めるし、ボールを受ける位置を細かく、器用に変えることで相手を動かしている。ファウルすることなくボールを奪う回数も一番多いし、実際にカードも全然もらわない。阿部さんのような渋いボランチになりたいし、お手本にしています」

 韓国の地での戦いを終えて、夏を迎える7月9日には埼玉スタジアムでの浦和戦が待っている。代表への誇りを胸に秘めながら、一回りも二回りも成長して、眩しい背中を追い続けるレジェンドと同じピッチに立ってみせる。原が心の片隅に抱く心残りは、成長への誓いと表裏一体となっている。

文=藤江直人

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