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白星を掴むのはセレッソかガンバか…41回目の“大阪ダービー”間もなく開戦

2017.04.15

 産声をあげてから今年で四半世紀を迎えたJリーグでは、さまざまな種類のダービーマッチ、簡単に説明すれば「共通の条件を持つクラブチーム同士の対戦」が生まれている。

 ナショナルダービーから都道府県や市区町村などの自治体、東北から九州までの8つのエリア、歴史や地理的に交流のある地域同士などが舞台となっている中で、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の決勝トーナメントで火花を散らしたのは「大阪ダービー」以外にない。


 1993シーズンのオリジナル10に名前を連ねることのできなかったセレッソ大阪が、3年目にして悲願のJリーグ昇格を果たしたのが1995シーズン。同年のゴールデンウイーク中の5月3日、約1万3000人のファン・サポーターで埋まった長居第2陸上競技場で歴史の火ぶたが切られたガンバ大阪との「大阪ダービー」が16日午後2時、セレッソのホーム・ヤンマースタジアム長居でキックオフを迎える。

 J1における両者の対戦は33度目で、公式戦全体では41度目。その中には先に記したACLも含まれている。2011年5月24日。一発勝負の勝者がベスト8へ進む、生きるか死ぬかの一戦を制したのはセレッソ。延長戦突入の気配が漂い始めた88分に千金の決勝点をもぎ取り、敵地・万博記念競技場を沈黙させた試合後に、ヒーローになったDF高橋大輔(現セレッソ大阪U-23コーチ)はこんな言葉を残している。

高橋大輔の劇的弾でセレッソがACLベスト8に駒を進めた [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

「ここまでの歴史の中で、大阪と言えばガンバ、という印象を覆すことができなかった。こうして舞台が整った中で、大阪にはセレッソもあるということを何としても見せたかった」

 両チームの対照的な歴史が、今現在に至る強烈な対抗心を生み出した。関西サッカー界は、実はセレッソの前身・ヤンマーディーゼルがけん引してきた。1965年に始まった日本リーグでは8チームの一つに名前を連ね、不世出のストライカー釜本邦茂を擁した1970年代には黄金時代を迎えた。

 日本リーグを制すること4度。天皇杯全日本サッカー選手権も3度制した名門には入部希望者が殺到し、まともな練習ができないとの理由から、1972年には2軍となるヤンマークラブが創設された。もっとも、日本リーグ2部にまで昇格した矢先の1979年限りで、会社側の都合でヤンマークラブは突然トップチームに一本化される。

 納得いかない水口洋次監督は数人の部員ともに、松下電器産業サッカー部へ転籍。奈良県リーグ2部から1980年に再起を期したチームがガンバの前身となった。水口監督は1990年の天皇杯制覇を置き土産に勇退し、ヤンマーディーゼルの同期で親友でもある釜本監督が就任。イタリア語で「脚」を意味するガンバに改められたチームはオリジナル10に名前を連ね、Jリーグブームに乗って一気に認知される。

 昇格後も2002シーズンをJ2で戦うなど、今ひとつ波に乗れなかったセレッソが歴史を塗り替えるチャンスもあった。2005年12月3日。セレッソは首位でJ1最終節を迎え、ホームにFC東京を迎えた一戦で勝てば、ガンバに先駆けて初タイトルを手にすることができた。

 果たして、元日本代表FW西澤明訓の2発でリードを奪い、後半アディショナルタイムに突入する直前でまさかの悪夢に見舞われる。混戦の中から同点ゴールを叩き込み、セレッソを一気に5位にまで転落させたのは、今現在はガンバでプレーするMF今野泰幸。そして、引き分けたセレッソに代わって悲願の初タイトルを獲得したガンバは2006シーズン以降、「西の横綱」としての地位を確立していく。

今野泰幸がセレッソ初栄冠の前に立ちはだかった [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

 対照的に2007シーズンからの3年間を再びJ2で戦ったセレッソは、宮本恒靖(現ガンバ大阪U-23監督)、稲本潤一(現北海道コンサドーレ札幌)、宇佐美貴史(現アウグスブルク)らの日本代表選手を、「黄金郷」と称賛された下部組織から輩出したガンバに追いつけ、追い越せを合言葉に育成型クラブへの転換を宣言する。

 現役時代はヤンマーディーゼルやセレッソでDFとして活躍。強化部長として「育成のセレッソ」の礎を築いた梶野智氏から、2013年の夏にこんなビジョンを聞いたことがある。

「関西に4つのJクラブがあり、特色を出さなければ絶対に勝てない中で、お金があるクラブではないセレッソとしては選手を育てて代表に送り出し、いつかは他のクラブへ売り出す。それを(香川)真司でスタートさせて、乾(貴士)と清武(弘嗣)も続いた。育成組織出身の選手でもいいし、他のチームから獲得した選手でもいい。要はセレッソの中に入れてから代表選手に育てる。そういうプロジェクトを今も継続している。育成を大事にしてきた姿勢が、ようやく成果として出てきたということです」

 その後に柿谷曜一朗や南野拓実(ザルツブルク)、山口蛍らも海を渡り、一方で2016シーズンからは古巣へ戻ってくる道も用意。柿谷や山口が復帰した昨シーズンはJ1昇格プレーオフを勝ち抜き、2人がピッチで号泣したシーンは記憶に新しい。

 確固たるチームの方向性を築けたセレッソのJ1復帰に伴い、3シーズンぶりに復活する「大阪ダービー」。前回は1勝1分けの星を残したガンバが2度目のJ1制覇を達成し、2000シーズンの鹿島アントラーズ以来、史上2チーム目となるヤマザキナビスコカップ(現YBCルヴァンカップ)、天皇杯を含めた国内三冠独占も達成した。

J1昇格即3冠という偉業を成し遂げた [写真]=Getty Images

 リーグ戦の通算成績は19勝4分け9敗、公式戦でも22勝6分け12敗とガンバが大きくリードしているが、直近の成績を見ればガンバはサンフレッチェ広島との前節でリーグ戦初黒星を喫し、対照的にセレッソはサガン鳥栖、横浜F・マリノス、鹿島にすべて完封で3連勝。徹底してフィジカルを鍛える尹晶煥新監督の指導が奏功してきたのか、開幕直後の停滞モードから一気に逆襲に転じてきた。

 キックオフ前の順位はともに勝ち点11で並び、得失点差でガンバが4位、セレッソが6位となっている。ガンバの今野、セレッソの清武が負傷離脱中なのは残念だが、それでもこれまでの対戦成績が参考にならないほど、上位チームへの挑戦権をかけた実力伯仲の好勝負が展開される予感が漂ってくる。

文=藤江直人

By 藤江直人

スポーツ報道を主戦場とするノンフィクションライター。

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