2016.09.02

SC相模原の「MOVE」に出会う旅 第1話 初代コールリーダーはかく語りき

サッカーライター

牧歌的と統一化された雰囲気をもつスタジアム

 2016年6月19日の天候は曇り時々雨だった。この日、J3に加入するSC相模原は、カターレ富山との試合を控えていた。相模原ギオンスタジアムには、5668人の観客がスタジアムを埋める。15時4分にキックオフを告げる笛が鳴らされた。ゴール裏の芝生席には、子どもを連れた家族が多くいた。牧歌的な雰囲気が漂う優しい空気がスタジアムに流れる。同時に、サポーターが選手を鼓舞するためのコールが響き渡る。一方が牧歌的な雰囲気をもって、他方が統一化された雰囲気をもつ。ちょっとだけ不思議な光景に見えた。

 試合が進むにつれて、相模原の選手がシュートを外すと、大きなため息がスタジアムを包み込む。そのため息は、「残念」という音色と「期待」という音色を含んでいるように聞こえた。「ああ、外すのか」という残念さ。「次は外さないように」という期待。こうしたスタジアムの観客の音色と同調するように、サポーターたちが奏でるコールがスタジアムに一体感をもたらしていった。

 試合が終わってから監督会見に出て、そのあとで選手に話を聞く、という一通りの仕事を片付け、関係者出口から外に出る。アスファルトが濡れていることに改めて気づく。そして私は、SC相模原の初代コールリーダーの東山修司に会うことになる。

牧歌的と統一化された雰囲気をもつスタジアム土のグラウンドからの出発

 東山修司は、2008年に相模原が神奈川県3部リーグに所属していたときからのコールリーダーである。つまり、クラブが設立した当初を知る貴重なサポーターの1人だと言える。東山に、当時を振り返ってもらった。

「県3部リーグから見ています。試合は土のグラウンドでやられていましたね。たとえば、前の試合が押してしまえば、『すいません、試合が10分遅れます』『いや、20分遅れになります』ということが平気でありましたから。神奈川県リーグ、関東リーグはある意味で衝撃的ではありました。そうした環境にそれなりに順応してきたつもりです」

 J3に身を置く今現在のSC相模原は、彼にどのように映るのだろうか?

「クラブが、大きくなったというのが正直なところです。当時は、Jリーグを目指すというクラブが多かったんですけれども、ここまで大きくなるとは思っていませんでした。さらに、J3というカテゴリーができるということも想定してなかったんです。だから、Jリーグの一員になっているということにびっくりしています。Jリーグを目指すというチームはどこもそうなんでしょうけど、カテゴリーが上がっていくにつれて、いろんな障害が出てきて断念していくという背景がありますよね。そこで、J3という受け皿になるカテゴリーが作られるとも考えていなかったので、いま相模原がこのカテゴリーにいることに驚いているんです。当時は、J2とJ1しかなかったので、そこまでのカテゴリーにいくにはいくつもの障害があるだろうと考えていて。たとえば、スタジアムの問題やスポンサーの問題などもろもろありますよね。社会人リーグからJリーグへ。華やかさという意味ではびっくりしているんです」

 社会人リーグからJリーグにクラブが昇格して、応援のやり方や取り組み方に変化はあったのだろうか。東山は、次のように話してくれた。

「僕は、神奈川県3部からJFLまでコールリーダーをやらせてもらい、クラブがJ3になってサポーターの団体のトップをやらせてもらったんです。そのときに、周りの反応として、J3にふさわしい応援を求めてきた人たちがいました。僕自身の考えは、まずいまここにあるサッカーのスタンスを大切にして応援してもらえればいい、と思っていたので、どのカテゴリーにいようと、カテゴリーの浮き沈みに捉われないで応援する方かいいと考えているんです。このギオンスタジアムで、自分たちの好きなサッカーを見られる、というスタンスを持ってもらえれば、というように思っています。いまもたぶん、そのスタンスは次のコールリーダーや次世代のサポーターに受け継いでもらっていると思います。早くJ2に上がろうとかではなく、そうなるには機運が高まるまで頑張らないといけない。やらなければならないことが山ほどあります。だから、ただ試合を見ておしまいじゃなくて、自分たちでもっとSC相模原というクラブを世間に広げていかないとならないと思います」

市民に愛されるクラブになるために

 SC相模原は、地元の市民にどれだけ存在を知られているのだろうか?

「知名度の問題は、大事なことだと思っています。まだまだ相模原市民に知られていない。『サッカークラブを知っていますか?』という質問に、3年前は全人口の5%という数字がでていました。その数字を知って『ああ、まだまだだな』と。究極は、72万人全員がSC相模原という存在を知っているという状態ですね。もっと言えば、72万人すべての人が一度はスタジアムに来たことがあるというもの。そうすれば、スタジアムはいつもフルハウスになっていますから。そうすれば、サッカーが相模原に根づいていると胸を張って言えると思うんです。とにかく、市民に愛されるクラブになってほしいですね。SC相模原というクラブは、大きい企業がついたりですとか、何万人が見にくるというクラブにすぐになれるとは思っていないんです。クラブの価値を高めていくことからはじめなければならない。まずそのための第1歩として、ホームタウンと呼ばれる相模原市民に愛されるクラブ作りをしていくことが大事だと思うんです。サポーターの団体には、現在約150人以上が参加してくれています。もし、試合を見にきたいという人がいるなら、別に、レプリカ着たり、ユニホーム着たりしなくてもいいんです。最初からそれは難しいと思う。僕、実はユニホーム着ていなくて、チームカラーの緑色のシャツ着てるんです。最初に試合に来たりする人は、その人が馴染めるようなスタイルがいい。試合を見にいきたいという人を増やしていきたいですね」

 さらに東山は、地元出身の選手を獲得することが愛されるクラブになるための条件でもあると話す。

「地元の選手、今だと工藤祐生がいます。2年前までいた鈴木淳(アスルクラロ沼津所属)という選手が地元出身だったのでファンから愛されていました。もっと相模原出身の選手がいて、彼らがファンから愛される存在になればいいと望んでいます」

 しかし、J3のカテゴリーにクラブがいるということは、所属選手が他チームに頻繁に移籍していくという現実を見なければならないのである。それがたとえ、愛される存在となった地元の選手であってもである。

「レベルが合わないと移籍していくのはしかたがない。クラブの資金力を見れば、このカテゴリーにいるチームの宿命だと思っています。引き止める、引き止めない、というのは、まあ、そこにこだわってもしょうがないことです。選手たちも上のカテゴリーでやりたいと思うのは当然ですよね。海外に行きたい、というのもしょうがない。当然、お金の問題もあるので、今のクラブ以上の金額を提示されたら、選手も生活がかかっているので。その点では、僕は……受け入れています」

 おそらく、寂しくて悔しくて悲しい気持ちがあるのだろうが、何度も同じ経験を繰り返してきたからなのか、「僕は」と言って言葉を選んでから「受け入れています」と語る東山に、チームへの深い愛情を垣間見せられた。

新監督の薩川了洋のサッカー

 監督の薩川了洋は、今季からSC相模原の指揮を執る。東山は、薩川がやろうとしているサッカーを次のように解説する。

「僕自身、薩川さんによって、クラブの哲学を落とし込んだサッカーにしてもらえればありがたいと思っています。監督が変わったらコロコロと変わるサッカーというのもなんですし。薩川さんの色を出しつつやられていく中で、攻撃に関しては制限をかけずに自由にやっているという風に見えます。ただ正直、まだ見えない部分が多くある。薩川さんが仰っていることなんですが、『この子たちは、ポテンシャルがある、技術がある、もっと走ったらもっと良くなる』と、いろんな媒体で仰っている。夏場でも走れるだろうという片鱗は見させてもらっています。今日の試合(対カターレ富山戦)も全力を出し切った、と感じています。例年にないチームのできだと思います。実は、『SC相模原は走らないチーム』という印象を受けていたので、今年は走れるサッカーを見られるんだとワクワクしているんです」

 注目選手は誰なのかを、東山に尋ねる。即答で選手名が返ってきた。

「菊岡(拓朗)選手ですね。特にセットプレー。今までキックに違いをもたらしてくれる選手はいなかったんです。セットプレーからの得点の期待がもてる選手がいるというのは大きなことだと思います」

 インタビュー前に行われた富山戦についての印象を聞いてみた。試合は、0-1で相模原が敗れる結果となる。

「今日の試合は、何も隠さずにいうと『監督!もっと早く動けなかったの?』という印象です。前半終了前に先制点を与えていたので、後半からは当然、オープンになる展開も見えていました。前節の大分(トリニータ)戦も前半ロスタイムに失点して後半5分以内に失点して、またロスタイムに失点するという、一番緩むところで点を取られたんです(6月12日、0-3で大分の勝利)。今日も前半0-0で折り返せば、勝機はあるなと思ったので、前半、点を取られたときに厳しいなと感じました。前回の敗戦で自信を失っているように見受けられたんです。だから、早いうちに事故でもいいから、オープンな展開の中で結果をだして、勝ち点1を拾えばいいと望んでいました。まあ、事故に期待するというのもおかしな話なんですが。ただ、もっと早く、10分間、放り込みを見てみたかったな、と。まだ選手たちが監督の要求に対してついていけないと思うんです。体力的に難しいのかな。今日は、純粋なFWが存在しなかったので、そう言った意味で、厳しい状況だったとは言えます」

 インタビューを終えて、スタジアムをあとにしようとしたとき、ユニホームを着た1人のサポーターが歩いていた。

「彼が、新しいコールリーダーなんですよ」と、東山が教えてくれる。

「これからどんなスタイルで応援していくんですか?」

 そう尋ねた私の質問に彼が答える。

「僕は後進に道を譲ったので、フリーの立場から試合を見ていこうと思っています」

 東山が築いてきた道を次の世代が受け継ぐ。彼が、ふと、後ろを振り返ったときに、後進たちとクラブはどのポジションに立っているのだろうか。もしかしたら、東山の先に進んでしまっているかもしれない。それでも、一人のコールリーダーが築いてきた道を、誰ものが思い出すはずだ。

「チームの応援は、土のグラウンドの時代からはじまったんだ」ということを。

第2話に続く

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