2016.08.15

東京五輪“期待の星”がJ1の舞台で輝く…G大阪MF堂安「この世代を引っ張っていくという気持ちで」

堂安律
8月13日の磐田戦に途中出場したG大阪MF堂安律(中央)。今季2度目のJ1出場で結果を残した [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

 グループステージ敗退に終わったリオデジャネイロ・オリンピック日本代表が帰国した直後のゲームで、東京五輪世代のエース候補が輝きを放った。

 2016明治安田生命J1リーグ・セカンドステージ逆転優勝へ向け、ガンバ大阪の長谷川健太監督が「本当に重要なゲーム」と位置づけたジュビロ磐田との第8節。エコパスタジアムで行われた重要なゲームで、指揮官は2枚目の交代カードに38番を背負う東京五輪世代の高校3年生を選んだ。起用理由に関しては「練習で良かったから使っただけ」と素っ気なかったが、プロ入りしてからトップチームで得点もアシストも記録していない選手に託す決断は簡単なものではない。攻撃に関して下した指示はシンプルで、「点を取ってこい」というものだった。

 その高校生、堂安律もここが勝負どころだと感じていた。今季2試合目の出場で、3節前の柏レイソル戦でも残り10分での交代出場ながらも「感触は良かった」と静かに手応えを得ていた。トレーニング内容についての感想は監督と一緒。「今年一番、調子が良いくらいだったかもしれない」。体はキレていて、意欲も十分。1-0とリードした状況で投入されたため、「追い付かれたどうしょう」という気持ちも実はあったと笑うが、それでも「ビビるんじゃなく、攻めようと思った。結果を出すことだけを考えていた」と強い気持ちでピッチを駆けた。

 16歳の若さでトップチームにデビューし、今季はプロ契約を締結してユースから“卒業”した逸材である。G大阪の未来を背負う選手と見込まれており、本人にもその自負がある。しかし今季、彼の時計は専らU-23のメンバーとして、J3という舞台で流れるようになる。G大阪はトップチームとU-23で練習を分けていることもあり、4月17日に行われた明治安田生命J3リーグ第5節FC東京U-23との試合後には、「このピッチに満足したくない。早くJ1に行きたい」と焦燥感をのぞかせていた。

 強い自負があったからこそ、「(J1と)ギャップがあり過ぎた」ことに苦しみ、「腐ってしまって、やる気が出ない日もあった」ことを正直に吐露した。しかし實好礼忠U-23監督らの働き掛けもあり、FC東京U-23相手に目の覚めるようなボレーシュートを突き刺したこの日はすでに気持ちを立て直していた。「まずここでやる。数字を出し続けて、(長谷川)健太さんに認めてもらうしかないと思っている」(堂安)。

 長谷川監督から言われてきたことも、「数字にこだわれ」という指示だった。堂安が「それしか言われてない」と苦笑するように、いいパス、いいドリブルで満足する選手ではなく「試合を決める選手になれ」と言われてきた。J3でゴールを決めても、監督から掛けられる言葉は「2点目も取れたな」。負けん気の塊のような若者の反骨心は煽られ続けてきた。「結果を残せないと上がれない」と自分を追い込みながら、J3で15試合にフル出場して7得点。アシストも記録しながらチャンスを待ってきた。

 単に試合で結果を残すことだけに取り組んだわけではなく、フィジカルトレーニングにも励んで肉体改造にも着手。体重はそのままながら、筋肉を増やして体脂肪を落とす形で肉体をシャープに整えた。二桁だった体脂肪率は10パーセントを切るまでになったという。そして迎えた8月13日、磐田とのアウェーゲームで今季2度目のチャンスが巡ってきた。

 得点、もしくはアシストで数字を残す――。狙っていたシンプルな目標に近づいたのは、投入から5分が経過した83分だった。今野泰幸のパスを受けて前を向くと、「(相手選手を)はがしながら『遅いな。行ける』と感じた」という自分の感覚そのままに縦へと突破。一気に相手を置き去りにし、「シュートしか考えていなかった」とルックアップしてGKの位置を確認すると、周辺視野の端っこにフリーの味方が見えた。「ニア上(にシュートを)行こうとしていたけど、見たらいたので」と、とっさにクロスへ切り替え。フリーのFW長沢駿はこのボールを押し込むだけで良かった。

 試合後の記者会見、長谷川監督は「堂安が初めてアシスト、得点のような“結果”を残してくれた」と満足げに語り、起用の理由については「練習から状態が非常に良かったので」とシンプルに語った。この自他ともに認める良い状態は心理面での影響もあったのかもしれない。TV越しに見るリオ五輪の映像は、青黒の18歳を刺激しないはずもないものだったからだ。

「(井手口)陽介くんという身近な人も出ていたし、4年後『あそこに出たい』と改めて思いました。俺がこの世代を引っ張っていくという気持ちでやりたい」

 プロとして初めてトップリーグで“数字”を残した8月13日。堂安律の視線は早くも4年後を見据えていた。

文=川端暁彦

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