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浦和が日産の「実質支配下」と見なされる可能性大…J規約抵触を懸念して回避策検討へ

2016.06.10

JFAハウスの入口で記者の質問に応じた浦和の淵田敬三社長 [写真]=田丸英生(共同通信社)

 浦和レッズの筆頭株主の三菱自動車が、横浜F・マリノスの親会社である日産自動車と資本業務提携して傘下に入ることを受け、Jリーグは9日に東京都内のJFAハウスで臨時理事会を開催。現状のままでは一つのオーナー(日産自動車)が二つのクラブ(浦和、横浜FM)を実質支配下に置く「クロスオーナーシップ」を禁止するJリーグ規約に抵触する可能性が高いことが確認された。

 日産自動車は横浜FMの株を75パーセント保有し、三菱自動車の株の34パーセントを取得して傘下に収める。その三菱自動車は浦和レッズの約51パーセントの株を持っているため、このままでは浦和が日産自動車の「子会社」か「関連会社」と見なされて規約に反する恐れがある。


 資本移動が正式に完了した後に会計監査人の判定を受けることになり、この際に基準となるのは株の保有率だけでなく、実質的な関係性から総合的に判断される。Jリーグの村井満チェアマンは浦和に対して、「子会社や関連会社と認定されないよう、クラブとして資本政策に努力してほしい。浦和レッズが今までどおり浦和レッズとして、地域に根差して活動することをリーグは期待しているし、クラブもそれを目指している」と語った。

 一方、対策を求められることになった浦和の淵田敬三社長は「今日すぐに連絡して、検討を加速してもらうことで動かざるを得ない」と、まずは三菱自動車の意向を待つことを明らかにした。今後は筆頭株主に何らかの動きがあるとみられるが、クラブは2005年から三菱自動車との損失補填契約を解除して経営的には自立しているため、いわゆる「市民クラブ」という道も考えられる。多くのサポーターに支えられてJ1最多の観客数を誇り、昨年度は営業収入が6年ぶりに60億円を超え、実にその約36パーセントが入場料によるものだった。

 それでもJリーグ開幕前の日本リーグ時代から三菱重工、三菱自動車のサッカー部として活動してきた長い歴史があり、「レッドダイヤモンズ」という会社名が示すように、三菱グループとの結びつきは極めて強い。「浦和という地域に根差して、浦和レッズの赤というブランドを守る」と言う淵田社長は、広告自粛中であってもユニフォームスポンサーを続ける三菱自動車に対して「今までずっと応援してくれているので、引き続き応援してもらいたいという気持ちが強い」と愛着を口にする。今後は三菱自動車が持つ50.625パーセントの株を手放すなどの対策が必要になりそうだが、現在1.25パーセントずつ株を持つ四つのグループ会社が保有率を上げることも想定できる。

 今月末には来季のクラブライセンス申請の締切日を迎えるが、その時点ではまだ日産自動車の出資が完了していない可能性が高い。村井チェアマンは「通常は秋口までにライセンス判断をする。ただ、例えば9月時点でまだ資本移動が成立していなければ『いついつまでにどうなる』といった資本政策上のスケジュールを伺って判断材料とする」と柔軟に対応していく方向性を打ち出した。このタイミングについて、淵田社長は「遅くとも年末までに決まると思っている」との見通しを述べた。

 二つの大企業とビッグクラブが絡む案件であるため、結論が出るまでにはまだ時間を要する見込みだ。村井チェアマンは「一つの戦略として三菱グループの他(の会社)が持つこともあるし、いわゆる地域の人が持つソシオかもしれない。選択肢はいろいろな形があるので、それはクラブに委ねる」と、今後の行方を静観していく構えを示した。

文・写真=田丸英生(共同通信社)

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