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清水の若きストライカー北川航也、エース大前元紀の離脱で求められる奮起

2016.06.10

得点を決め、サポーターに向かって喜びを表す北川 [写真]=平柳麻衣

「元紀君のために勝たないといけない」。清水エスパルスのFW北川航也は、エース離脱の危機を救う活躍を誓った。

 8日に開催された2016明治安田生命J2リーグ第17節で、清水はFC町田ゼルビアと対戦。1点リードで迎えた35分に“悲劇”は起きた。町田のCKの場面で相手選手と競り合った大前元紀が負傷し、そのまま途中交代。試合は2-1で勝利したが、大前は「左第5・6・7・8肋骨骨折および肺挫傷」と診断された。全治期間は発表されていないが、小林伸二監督は試合後の会見で、「内蔵や肺に影響があるようであれば、少し時間がかかりそう」とコメント。長期離脱を覚悟している。


 今季全17試合に先発出場し、J2得点ランキングトップの12ゴールをマークしていた絶対的エースの離脱。そう簡単に替えの利く選手ではなく、大幅な戦力ダウンは避けられない。だが、その穴を埋める活躍が期待されるのが、昨季トップチームに昇格した生え抜きのストライカー、北川航也だ。町田戦では63分から出場し、82分に決勝ゴールをマーク。六平光成からの浮き球に抜け出し、後ろから来たボールに対して右足で的確にトラップすると、最後は左足で冷静にシュートを決めた。

「ミツ君(六平)がボールを持った時に相手の背後を見て、その後(六平と)目が合ったので走り込もうと思った。トラップがうまく決まれば自分の形に持っていけるので、ボールが出た瞬間はまず止めることを意識して、しっかりと止められたことでリラックスしてシュートを打てた」

 ユース時代から最終ラインの裏への飛び出しを武器にゴールを量産してきたが、プロのレベルではなかなか通用せずに苦戦していた。「やっと自分の形で入った。久々に気持ち良かった」という会心のゴール。また、トップチーム昇格後、自身のゴールが初めて勝利に結びついたことへの喜びも大きい。「やっぱりチームのために仕事をすることが大事。点を取ってもチームが勝たなければ素直に喜べないので、今日は心から良かったと思う」

 今季は開幕から第4節までスタメン出場が続いていたが、チャンスを生かしきれず、以降の先発出場は1試合のみにとどまっていた。エースの離脱は、出場機会に飢える若武者にとって大きなチャンス到来となる。北川は言う。「これまでチームを引っ張ってきたのは元紀君なので、チームにとっては大きな痛手になる。でも、元紀君がいないから何もできないとは言われたくない」

 小林監督は、これまで大前個人の高い能力に頼ってきた攻撃面に変化が生まれる可能性を示唆した。「大前がいないことで、(他の選手たちが)コンビネーションを高められる可能性もある。試合に出ていない中にも良い選手はいるので、(そういう選手を)上手く使うことができれば、大前が帰ってきた時にもっと大前の個の良さを出せると思う」。中でも北川に対しては、「若いので自信を持って次につなげてほしい」と期待を寄せる。

「僕は元紀君ではないので、引いてゲームを作ったり、ボールをさばいたりすることはできない。だから、背後への飛び出しとか、自分の得意なプレーをできればいいと思う。元紀君のためにも勝たないといけないし、自分が出たらしっかりと仕事をしたい」

 今季から背番号23をつける北川。清水の「23番」は、日本代表FW岡崎慎司(現レスター)がかつてつけていたエースナンバーだ。やむなく戦列を離れるエースのためにも、そして自身の未来を切り開くためにも、北川は“ゴール”という結果で存在感を示していく。

文=平柳麻衣

By 平柳麻衣

静岡を拠点に活動するフリーライター。清水エスパルスを中心に、高校・大学サッカーまで幅広く取材。

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