2016.05.20

「観戦が支援になる」…収入減と支出増に悩む熊本を支えるためのアクションとは

ロアッソ熊本
フクダ電子アリーナで行われた震災後初の公式戦で声援を送る熊本サポーター [写真]=兼子愼一郎
学生時代から全国のスタジアムへ通い続けてきた経験と人脈を生かして、Jリーグを取り巻くピッチ内外のネタを探り続ける。

 ロアッソ熊本がようやくJリーグに帰ってきた。そして今週末から当面の間、ホームゲームをアウェーで戦わなければならないという過酷な道のりが待っている。

 平成28年熊本地震の影響でリーグ戦5試合の開催を延期した熊本は、「Jリーグの日」でもある5月15日にフクダ電子アリーナで行われたジェフユナイテッド千葉戦で震災から約1カ月ぶりの公式戦に臨んだ。

ロアッソ熊本

約1カ月ぶりの公式戦に臨んだロアッソ熊本 [写真]=兼子愼一郎

 選手たちは被災地への支援活動を続けながらトレーニングを積んできたが、結果は0-2の敗戦。巻誠一郎は試合後、「勝負の世界はそんなに甘くない」と話しつつ、「チームがやってきたことは間違いなかったなという思い、できることはやったなという思いの両方が入り混じっています」と率直な思いを口にした。

 試合に向けたコンディション調整の難しさは触れるまでもないだろう。90分間のゲームを行ったのは震災前が最後。GK畑実ら自らも避難所で暮らす選手がいる中で、避難所を巡って生活に必要な物資を配り歩き、サッカー教室では子どもたちに笑顔を届けた。ホームタウンに支えられて戦ってきたクラブとして、地元へお返しできることに務めてきた形だ。

 そんな状況下で“突貫工事”を経て迎えた千葉戦では、早い時間帯から足がつってしまう選手が出る。だが、彼らはそれでも走り続けた。清武功暉は足を引きずるようにしながらスプリントを重ね、今年39歳になる藏川洋平は終了間際まで奮闘して果敢なオーバーラップを披露した。巻は左顔面を強打しながらプレーをやめなかった。前線でボールを追い続けた巻は、選手たちとチームの思いをこう紡いだ。

清武功暉

清武は足を引きずりながらもプレーを続けた [写真]=兼子愼一郎

「後半は苦しくて何度も足が止まりそうになったし、諦めそうになったし、本当に何度もゴールに向かうのをやめようかと思いましたけど、そういう中で僕も含めて選手みんなに思い浮かんだのは、熊本で家がなくなったり、今でも苦しい思いを抱いている人たちの思いや顔。それに比べたら僕らがきついことなんて本当に小さなことだと思いますし、そういう思いが僕らの足を最後まで動かしてくれたし、ゴールに向かわせてくれたと思う。だから最後までボールに執着して諦めなかったんだと思います」

 ミックスゾーンでは目を真っ赤にして、上を向いて話し続けた巻の姿が印象的だったが、試合後には場内を回る熊本イレブンにスタンドから温かい声援が飛び、多くの選手が目頭を押さえていた。被災地の現状を心に刻み、対戦相手のサポーターから勇気のエールをもらったことで、堪え切れない思いが溢れたのだろう。「想いは言葉に宿る」とも言われるが、ミックスゾーンで話す巻の力強い口調は、まさに彼らが抱いていた強烈な決意を表していると感じた。

巻誠一郎

温かい声援を受けた巻(中央)ら熊本の選手たち [写真]=兼子愼一郎

 震災発生直後から日本中のサッカーファミリーに支援の動きがあった。復帰初戦は結果こそ伴わなかったが、地元で応援してくれているファン、そして日本中の仲間たちに戦う姿勢や感謝の気持ちは見せることはできたはずだ。

 しかし、今後はクラブとチームにとって厳しい戦いが待ち構えている。本拠地のうまかな・よかなスタジアムが今回の地震で被災し、耐震構造チェックのために当面は使用不可。スタジアム内部に一切の問題がないという前提条件付きで、7月3日の明治安田生命J2リーグ第21節セレッソ大阪戦での利用再開を目指しているというが、しばらくの期間は同スタジアムが使用できず、これまで年間数試合を開催していた水前寺競技場も本年度が耐震工事に入っていた関係で使うことができない状況にある。つまり熊本はしばらくの間、同県内でホームゲームを開催することができないというわけだ。

 まず22日のJ2第14節水戸ホーリーホック戦は、熊本の池谷友良社長がかつて監督を務めた柏レイソルの厚意もあり、日立柏サッカー場で開催されることになった。そして28日の第15節FC町田ゼルビア戦はノエビアスタジアム神戸で行われ、6月のホームゲーム2試合は九州エリアで実施予定だという。徐々に熊本へ近づいているように見えるが、もちろん普段のトレーニングは地元の熊本で行い、通常のアウェーゲームを挟むため、選手たちに掛かる負担は想像を超えるものになるだろう。今後は延期になった5試合がミッドウィークを中心に組み込まれてくる。

 そして財政面の不安も残る。うまスタ開催試合の今季平均入場者数は7653人。これが県外開催になることで集客の減少は避けられない。となれば、入場料収入への影響は言わずもがなだ。ホームゲームの“アウェー開催”は、選手やスタッフに移動の負担が発生するだけでなく、交通費や宿泊費などの経費負担も必要となる。現実的には被災地から関東や関西へ遠征できるファンの数は限られ、各地の熊本県人会などの尽力もあって徐々にチケットが売れていると聞くが、それでも一気に数千人規模の集客増は難しい。クラブは今後、収入減と支出増の悩みとも戦わなければならないわけだ。

 そこで全国の、そして熊本のホームゲーム開催地域にお住まいの皆さん、サッカーファミリーとして何らかの支援をしたいとお考えであれば、彼らのホームゲームを観戦に行ってはいかがでしょう。スタジアムへ足を運ぶことが、競技面でも財政面でも彼らへの支援となるわけです。困難な戦いを続ける熊本の選手たちを多くの人で埋まったスタジアムで戦わせてあげたい――。自分もチケットを購入した上で水戸戦を取材させてもらおうと考えています。

 『熊本とともに。〜熊本地震復興支援マッチ〜』と銘打たれた22日の水戸戦では、歌手の水前寺清子さんら熊本出身の著名人によるチャリティー募金活動に加えて、漫画『キャプテン翼』の作者・高橋陽一先生らのチャリティーサイン会も実施されることになった。すべては少しでもロアッソ熊本の戦いを盛り上げ、お客さんに集まってほしい、そしてチームの力になりたいという思いからの動きだ。

 日立柏サッカー場で行われる水戸戦のキックオフは22日(日)15時。「観戦が支援になる」というフレーズを合言葉に、仲間とともにスタジアムへ足を運んでくれる人が一人でも増えることを願っています。

文=青山知雄

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