2015.11.20

“育成”への危機感…J3へのセカンドチーム参戦がもたらす日本サッカーの未来

J-22選抜
昨年からJ-22選抜がJ3に参戦。だが、育成の場として思うような効果は挙げられなかった。 [写真]=Getty Images
2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

 11月17日に行われた2015年度第11回Jリーグ理事会で、いくつかの重要な決定がなされた。中でもクリティカルだったのが、来シーズンから明治安田生命J3リーグに「U-23チーム」の参加を承認したことだろう。直接的にはJ3のみにまつわる案件だが、日本サッカーの未来に大きく関わる決定と言っていい。

 SNS上でそんな話をしたところ、「あれ? 今までも参加してたでしょ?」というリアクションが届いてしまった。「いやいや、違うのだ。今まで参加していたのは『Jリーグ・アンダー22選抜(J-22選抜)』で、新しく参加が認められたのは『各クラブのU-23チーム』」。この二つは似て非なるものである。

  J-22選抜は所属チームで出場機会のない選手に実戦経験を積ませる場として昨年のJ3誕生とともに産声を上げた。高卒1年目から4年目(早生まれに関しては5年目まで)の選手たちをターゲットに、リオデジャネイロ・オリンピック出場を目指す代表チームの強化もにらみながら活動を続けてきたわけだ。基本的にJ1、J2の各クラブでベンチ入りできなかった選手をJ3リーグ戦の前々日に招集して試合に臨むというコンセプト。いわば急造選抜チームを逐一組んで、年間のリーグ戦を戦った。

 その実情には難しさがあった。MF喜田拓也(横浜F・マリノス)のように本制度を意欲的に活用して飛躍を遂げた選手が出た一方、全体としては思ったほどの効果を挙げられなかった印象だ。そこにはまず、単純にモチベーションの問題があった。「ベンチ入りできなかった」、「試合に出られなかった」というある種の失意とともに全国から集まってくる選手たち。中にはハッキリと「行きたくない」と漏らす選手もいた。代表チームへの招集は栄誉だが、この選抜チームへの招集は必ずしも栄誉とは認識されなかった。集まれる選手は毎度バラバラで、チームとしての継続性が失われたことも問題だった。

 チームや選手の強化を図る際に用いられる用語として、「マッチ-トレーニング-マッチ(MTM)」というフレーズがある。試合をして、試合で出た課題をトレーニングしながら次の試合に備え、また試合をして新たな課題を発見してトレーニングに落とし込んでいくという意味だ。この繰り返しでチームと選手の双方が伸びていくという考え方である。だが、J-22選抜はあくまで急造であり、チームとしてこのサイクルは回せない。個人としても、試合で課題が出たとしても、それがトレーニングに反映されるわけではなく、次の試合に向けてトレーニングするわけでもない(そもそも呼ばれるかどうかも分からない)。

 今シーズン、J-22選抜がレノファ山口に0-8と大敗してしまった試合があったが、次の試合にほとんどの選手が招集されなかったのは、まさに「MTM」が機能していない典型だと感じた。大敗で突き付けられた課題を感じていたとしても、それを消化してぶつける場がないのでは、若い選手を伸ばすための環境とは言えなかった。

 さらに言及すると、J-22選抜が試合をしているタイミングで、各クラブの控え組が練習試合を組んでいることも非常に多く、J3でのプレーがポジション奪取につながらないという感覚を多くの選手が持ってしまっていたことも問題だった。各チームの監督にしても、間近で控え選手を一望できる練習試合のほうが比較も見極めもしやすいという一面はある。そして練習試合の内容を、翌日以降のトレーニングに落とし込むこともできるからだ。

 そこで今回の「U-23チームのJ3参戦」がある。控え組による練習試合は各チームで広く行われているが、練習試合ゆえに真剣度は低下しがち。実戦に強い選手を育てていく場にはなり切らない面がある。そのために公式戦に出場できるJ-22選抜を組織したわけだが、前述のような問題を抱えてしまっていた。ならば、控えチームそのものをJ3にエントリーできるようにしてはどうか。そう考えた上での強化策である。

 今回のU-23チームは、当該シーズンの12月31日時点で23歳以下である選手に加えて、3名のオーバーエイジ選手を加えることができる。どうしても実戦機会が少なくなるGKに関しては、年齢フリーで使えるというのが大枠だ。年齢に関して下限はないので、アカデミー所属の選手を起用することも可能になる。選手登録はトップチームとU-23チームで別々にするのではなく、自由な入れ替えが認められており、例えば土曜日にJ1でベンチに座っていた選手を日曜日のJ3で起用することも可能。経験値という点でもそうだが、「活躍すればトップ昇格が見える」という直接的なモチベーションも生み出せる。

 また五輪代表を含む年代別代表チームの強化という視点で見ても、メリットが大きい。これまでは「ベンチ入りしながらも試合に出ていない選手」を最も鍛えたいと考えていたが、現状のルールではJ-22選抜への招集が難しかった。時には試合前夜に強行招集したこともあったが、同一クラブのU-23チームであれば、より自然な形で「あと一歩でレギュラー」というラインの選手が実戦経験を積むことができるはず。また選手の行き来に制限を掛けないことで、無理に保有選手数を増やすことなくU-23チームを持てるメリットもある。試合日は基本的にトップチームの試合と重ならないようにする配慮をすることも村井満チェアマンの口から発表されている。

 ここまで“育成”の部分を強調してきたが、一方でJ3にU-23チームが参加する問題点は何だろうか。一つはプロの興行として行われているJ3に“育成”を目的としたチームが参加することによるリーグとしての盛り下がりだろう。この点については「J3のブランドイメージ低下を危惧する声はあった」と村井チェアマンも認めたとおり。「真剣勝負の場に、勝敗を直接的な目的としないチームがいてもいいのか?」というスポーツ的な視点でも議論はあったという。

 一方で「だからこそ育成に意義がある」(村井チェアマン)とも言える。今シーズンのJ-22選抜が惨憺たる戦績(13チーム中12位)で終わったことからも分かるように、目的意識を欠いた急造チームが通用するような甘い場ではないからこそ、育成の場として単なる練習試合よりも大きな価値を持つとも言える。この真剣勝負のリーグを通じて『MTM』のサイクルを回すことで伸びていく選手はきっといるだろう。またアカデミー所属の選手にとっても、貴重な学びの場となっていくはずだ。

 ただ、興行面について言えば、「果たしてU-23チームがどの程度、客を呼べるのか」は未知数の課題でもある。村井チェアマンは「真剣にJ3を一緒に盛り上げていこうという意思のあるチームにだけ参加を認める」と強弁していたが、これがどこまで実効性を伴うか。オーバーエイジで起用される選手によっては、思わぬビッグネームがJ3の舞台に立つことも考えられるため、こちらを興行面で期待する声もあったようだが、これこそ未知数の要素だろう。選手育成を企図した結果、J3クラブの経営にガタが来るのでは、まさにリーグとしての本末転倒。興行への影響については、改めて真剣に見定めていく必要がある。

 2年前、J-22選抜の参加決定時、日本サッカー協会の原博実技術委員長(現専務理事)は「本来はセカンドチームの参加があるべき形だとは思っている」と漏らしていた。その「本来の形」が果たしてどういう成果を生み出すのか。今回の理事会で同時に承認され、かつてのサテライトリーグを想起させる「育成マッチデー(仮称)」を含めて、「若手が育っていない」という日本サッカー界の率直な危機感を反映した諸改革。10年後、「あの時にやっておいて良かった」と言える結果が出ていることを期待したい。

文=川端暁彦

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