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【平畠啓史氏はこう見る!】2戦連続痛恨ドローも見据えるのは残留のみ…最下位に沈む栃木が今節も戦う姿勢を貫く

2015.11.11

最下位の栃木は、J2第41節で京都と対戦する [写真]=Getty Images

 素晴らしいパスやシュートに感動することは多いが、サッカーは基本的に足でボールを扱う競技ながら、ゴールを守るために体を投げ出したり、ひたすら懸命にボールを追いかけたりする姿に感動することも多い。

 前節、ギラヴァンツ北九州vs栃木SC戦における栃木のキャプテン廣瀬浩二のプレーぶり、そして生き様は感動的だった。165センチと小柄ながら、サイドに流れて起点を作り、ゴール前に飛び込んでヘディングシュートを決め、プレスバックで相手からボールを奪う――。とにかく働きまくった。そんなプレー以上に、彼の表情が実に良かった。苛立ったり、焦ったりするような様子はまるでなく、感情が昂ぶり過ぎているようにも見えない。ただ、集中力が極限に達しているのか、邪念が抜け落ちたような表情をしていた。「うまく見せたい」、「格好良く見せたい」。そんな欲は全く感じなかった。「勝ちたい」とか「負けたくない」という欲求さえ、超越しているようにも見えた。そこには、「自分の仕事を極限まで全うすれば、必ずや結果がついてくるに違いない」という信念が感じられた。数字上の可能性以上に、自分や他のメンバーやクラブの可能性を信じて、とにかく戦う廣瀬。60分で杉本真と交代したが、ベンチに戻る廣瀬の表情は全く崩れていなかった。全身全霊でキックオフから走り続け、疲れていないわけがないが、そんな様子を少しも見せず、しっかりと前だけを見据え、ベンチに引き揚げてきた。戦う男の魂のプレーは感動的だった。


 廣瀬と同様に、この日も栃木のイレブンは走っていた。北九州がボールを動かすたびに、丹念にスライドを繰り返した。最終ラインのイ・ジュヨンと尾本敬のコンビも、北九州の強力2トップ、小松塁原一樹にほとんど仕事をさせなかった。前半、北九州の2トップはボールに触れず、結果的に原は前半だけでベンチに下がることになる。しっかりとしたブロックを作りながらも、ボールを奪えるとなればボールホルダーに襲い掛かり、奪ったボールを松村亮が細かいステップのドリブルで運び、何度も中央を切り裂いた。

 69分、荒堀謙次が中央からスーパーロングシュートを突き刺し、スコアを2-1とした。歓喜に沸く栃木ベンチ。その後、北九州がボールを保持する時間が増えたが、栃木もうまくゲームを運び、アディショナルタイムに突入。そして「ここを凌げば」というラストワンプレー。コーナーキックを得た北九州のキッカーは川島大地。その左足から放たれたボールはゴール前を通過し、ワンバウンドして小松の目の前に。小松のヘディングシュートがネットを揺らした瞬間、タイムアップの笛が鳴った。

 栃木にとっては、前節の徳島ヴォルティス戦に続き、2試合連続で試合終了間際に同点弾を喫して痛恨のドロー。ずっしりと重い結末となった。分かっている。集中しなければいけないと、選手はみんな分かっている。だけど、なぜか足が動かない。これこそが1年間戦ってきたシーズン終盤戦の重み。誰のマークがずれたとか、なぜコーナーキックになったとか、そういう具体的な要因だけのものではないだろう。ただ、厳しい状況ではあるが、彼らの戦う姿勢は間違いなく胸に響く。ホーム最終戦、サポーターの後押しがあと一歩を動かし、今節も最後まで戦い続けるに違いない。小手先のテクニックではなく、栃木は戦う姿勢を貫くだろう。

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