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“タレント集団”から“真のプロ集団”へ……浦和、無敗ステージVの要因を探る

第1ステージを制した浦和レッズの選手たち [写真]=清原茂樹

文=青山知雄

 屈辱のV逸から196日。歴史に残る大失速で「勝負弱い」と揶揄された浦和レッズが、Jリーグ史上初となる無敗でのステージ制覇を成し遂げた。

 すべては昨シーズン終盤に味わった悔しさから始まった。

 残り3試合で1勝すれば優勝という優位な状況から急ブレーキが掛かり、しかも最終節は結果的に引き分けでも頂点に立てる展開になりながら終了間際に勝ち越しゴールを許して終戦。2013年にも優勝争いに加わる中、第33節でサガン鳥栖に1-6と大敗して可能性を消滅させていた。毎年のように大型補強を繰り返しながら勝負どころで結果を出せずにタイトルを獲得できないのが、近年の浦和レッズだった。

 そして今シーズン開幕前にはAFCチャンピオンズリーグを含めて公式戦3連敗というふがいない成績に終わっていたが、フタを開けてみれば、無敗のままファーストステージを独走。20日に行われた明治安田生命J1リーグ第16節ヴィッセル神戸戦では、退場者を出して数的不利を強いられながら1-1で凌ぎ切って土付かずのまま優勝を決めた。

 いったい、昨シーズンまでと何が変わったのだろうか。

 試合を見ていると、明らかにチーム全体の意識変化が見て取れる。ボールを奪った瞬間や奪われた瞬間に攻守を切り替える早さ、相手のボールホルダーへプレスを仕掛けるスピードと連動性、球際の強さ、そしてルーズボールへの予測と反応。相手が浦和対策として同じ3-6-1システムを採用し、良さを消し込む“ミラーゲーム”に持ち込んでくることが多いため、試合自体は各ポジションで潰し合いになってしまって見どころの少ない展開となることは珍しくないが、それでもこういった勝負どころで主導権を握れていることが好結果につながっていたと見る。

 そして最も変わったもの――それがピッチ上でのコミュニケーションだった。

 リーグ優勝を逃した昨シーズン最終節終了後、槙野智章は「仲良し集団じゃダメ。もっとお互いが要求し合うことが必要だと思います」と反省を口にしていた。

 確かに今シーズンの浦和は、プレーが切れた瞬間に選手同士が話し合っているシーンが何度も見られるようになった。槙野は昨シーズンとの一番の違いにコミュニケーションの部分を挙げる。

「切り替えが早くなっているし、試合での集中力はすごく高くなっています。何よりポジションの近い選手同士でプレーごとに積極的に話すことができているのは、昨シーズンまでになかったことですね。失点直後、得点後、誰かがケガで倒れている時……自分たちが何をしなければならなければならないのかを、ピッチ上で自然と集まって話し合えるようになったのが、いい方向に進んでいる大きな要因だと思います。それに賢い選手、ゲームを読める選手が数多く出てきたこともあります」

 何かを変えなければならない。同じことをしていても結果は出ない。そう考えた中で導き出した一つの方法が、積極的に求め合うことだった。決してチームメートを非難するのではなく、いいチームになるため、お互いがいい選手になっていくためのコミュニケーション。これによって、ちょっとしたポジショニングやマーキング、狙いのズレをすぐに共有することで選手間の意思統一が図れるようになった。槙野自身も「この取り組みが一人、二人、三人……と広がっていく中で、みんなが話し合うようになった。チームとしていい時間ができている」と手応えを語る。悔しい思いをしたからこそのポジティブな姿勢が、チームにしっかりと伝播していった。

 優勝を決めた神戸戦でも、76分に宇賀神友弥が退場になったところで3バックと両ボランチ、GKが瞬時に集まり、「ここが自分たちにとっての勝負どころ。試されているところだ。それに、残り5分を切ったところでピンチは必ず2回ある。みんなでそこを乗り切ろう」と前向きな話し合いがなされたという。数的不利を強いられてネガティブな空気が流れそうになっても、前向きに考える姿勢があった。終盤に阿部勇樹が傷んで試合が止まった際にも、槙野は「ここで頑張ろう。やるべきことをしっかりやって最後の一歩を出そう。勝ちたいという欲までを出そう」と声を掛けた。

「あそこは『頑張れ』としか言えないですよ。みんな足がつってましたし(苦笑)。攻撃の選手が最終ラインまで戻って守備する場面もありましたし、とにかくみんなで攻撃、みんなで守備っていう意識がいい結果を生み出していると思います」

 ファーストステージは無敗で突っ走った。だが、彼らには年間勝点1位、そしてJリーグチャンピオンシップ制覇という目標がある。興梠慎三は言う。「2ステージ制だと、勢いのあるチームがステージ優勝することがあると思う。でも、今の浦和には勢いも力もある。もちろんこのまま負けずに年間チャンピオンのタイトルを取りたい」と。キャプテンの阿部は「今日だけはみんなで喜んで、明日からまた再スタート。(アルビレックス新潟との)最終節で勝たなければ無敗優勝じゃないし、ホームでしっかり勝って終わりたい。セカンドステージもこういう状況が続くように努力していかないと、崩れちゃうのは一瞬なんで」と笑顔を浮かべながら、しっかりと気を引き締めた。

 昨シーズン終盤に味わった悔しさをバネに奮起した選手個々の意識変化とチーム全体のまとまり。能力の高い選手たちが綿密にコミュニケーションを取りながら、サッカーの原点となる気持ちの入ったプレーを当たり前にこなせば、結果が出るのは必然だろう。簡単そうで簡単ではないことをしっかりとやってのける。試合中の勝負どころを全員で共有しながら一丸となって戦うことで、浦和がチームとしての勝負強さと負けないサッカーを手にした。

 ただし、タイトルに渇望した男たちの歩みは、まだ道半ばにすぎない。無敗記録を伸ばしている期間中、選手たちは口をそろえて「目の前に試合に集中するだけ。目標は年間チャンピオンですから」と語ってきた。それはステージ優勝を決めた神戸戦のあとも同じ。彼らにとってステージ優勝はあくまで通過点でしかない。まだ手にしなければならないものがある。“タレント集団”から“真のプロ集団”へ。高い意識と強さを手に生まれ変わった浦和が、大きな目標に向かって走り続ける。

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