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戻ってきた“名波の後継者”…新生ジュビロを担う背番号7・上田康太の覚悟

新体制発表記者会見に臨んだ名波監督(右)と上田康太(左)

「サッカー選手人生を懸けて、ジュビロの7番を背負う覚悟を固めました」

 2010シーズン以来、5シーズンぶりにサックスブルーのユニフォームを身にまとった上田康太は、憧れの背番号を託されたことに「めちゃめちゃうれしかった。特別な番号を着けることができるのは本当に光栄だし、その番号に恥じないプレーをしたい」と高ぶる気持ちを隠さない一方で、「中には『活躍して背負うべき番号だ』って言う人がいるかもしれないけれど、僕には時間がない。7番の重みを知っているからこそ、結果を残さなければいけないと思うし、この番号にふさわしい選手にならなければと思う。年齢も上になってきて、チームを引っ張るようなことも必要になる。J2が簡単なリーグではないことは肌で感じていますけど、ジュビロはそこにいるべきチームではないですから」と気持ちを引き締めた。


 ジュニアユース時代にレイソル青梅でプレーしていた上田がジュビロ磐田ユースに加入したきっかけは、当時のスカウトから「名波の次を担う選手として期待している」と誘われたことだった。ユース3年時の2004年には7番を背負い、同時にトップチームに帯同。2005年にトップへ昇格すると、正確な左足を武器とするボランチとして、名波にも「自分の後継者」と評されるなど期待を寄せられていた。加入一年目こそ空き番号の都合で33番を着けたが、「青梅二小SCで初めて背負った番号でもあったし、中学の頃から同じ左利きで日本を代表する司令塔だった名波さんに憧れていた」という7番への愛着は強く、2年目からは27番を背負って主力選手へ成長していく。

 2011年に移籍した大宮アルディージャでは17番を選び、自身最多タイのリーグ戦31試合に出場。翌2012年からはプロとして初めて7番を着けた。だが、以降は戦術的な理由もあって出場機会に恵まれず、昨シーズン途中に「やっぱり出場機会が欲しい。サッカー選手としてこのままじゃ終われない」と強い危機感を見せてファジアーノ岡山への期限付き移籍を選択する。背番号は「原点に戻るという意味とインパクトが欲しかったから」という理由から、Jリーグのルール上、自由に着けられる最も大きな番号である50番に決めた。

 これが彼にとって大きな転機となった。高い技術とボールコントロールが評価されながら、その一方で「守備が弱い」という声もあったのも事実。ただ、「これまでは守備が課題と言われていましたけど、自分でも意識して変えてきましたし、そこは全員で激しくプレスを仕掛ける岡山で変わりました。球際の強さと大切さと、ボールを奪いに行くかどうかのタイミングや責任感とかを学んで、守備面でも成長できた」と手応えを口にする。岡山では自慢のキックも冴え渡り、昨年7月にはJ2月間MVPに輝くなど途中加入ながらチームを上位争いに引き上げる大活躍を見せた。

 そしてシーズン終了直後、磐田の服部年宏強化部長からオファーが届く。成長させてもらった岡山、所属元の大宮からも誘われたが、「岡山と大宮にもお世話になったし、感謝しているけれど、やっぱりユースから育ててもらったジュビロは自分にとって特別なクラブなので、恩返しがしたかった」と古巣への復帰を決めた。

 一年でのJ1復帰に失敗した磐田にとって、今年はクラブ史において非常に重要なシーズン。そのシーズンを控え、服部強化部長が今オフに「外の選手にオファーを出した中で、一番最初に声を掛けたのが康太だった」という。「あとは運とタイミングだよね。名波が監督をやっていなかったら声を掛けなかったかもしれないし、康太がどんな選択をしたか分からない。彼はジュビロのサッカーを分かっているし、こちらも彼の人間性を知っている。細かなことを伝える必要がなかったのも大きい」と新シーズンの主軸として期待を寄せる。名波監督も昨年から「ジュビロのDNAを持ったメンバーを集めたい。岡山の50番とかね(笑)」と口にしており、服部強化部長からオファーを出す際に「7番」を託すなど、自分の“後継者”に期待し続けていた。

 上田自身も「名波さんはそんなに身体能力があるわけでも、足が速いわけでもないんですよね。そこは僕と同じで。それなのに左足で周りの選手を自由に動かして、相手を手玉に取っていた。パワーやスピードばかりではないサッカーの奥深さを感じさせるようなプレーに魅力を感じていました。もちろん、まだまだ名波さんのレベルには達していないです。ただ、そこを超えるつもりでプレーしなければ成長はないとも思います。名波さんには記者会見で『代表のピッチに立てる可能性がある』と言ってもらえましたし、僕も諦めたわけではないので、さらに上を目指して頑張っていきたい」と、単なる“後継者”ではなく、さらに上を狙う意気込みを見せた。

「岡山へ行った時もそうでしたけど、サッカー人生を懸けて、相当な覚悟を固めて来ました。特に今回は自分の古巣で、特別なチームで、ずっと憧れていた7番を任されて、『やらなかったら男じゃねえだろう』という気持ちはあります」

 決して気迫を前面に押し出すタイプのプレーヤーではない。今までは背中で引っ張る選手でもなかったかもしれない。だが、磐田を選んだ裏側には、“背水の陣”のごとき覚悟が見える。岡山で見せた目覚ましい成長は、自分との勝負に勝ったという自信にもなっているはずだ。伝統が染み込んだサックスブルーの7番。ジュビロ磐田の未来は、その左足と秘められた思いに託されている。

文=青山知雄

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