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天皇杯“前代未聞”の再PK戦に…一般からの問い合わせで発覚「クリティカルなミス」

2018.06.11

会見に出席し、謝罪した小川JFA審判委員長(左)、須原JFA天皇杯実施委員長

 日本サッカー協会(JFA)は11日、天皇杯JFA第98回全日本サッカー選手権大会の2回戦の名古屋グランパスと奈良クラブの一戦において次ラウンド進出チームの決定に直接影響を及ぼす、担当審判員による明らかな競技規則の適用ミスがあったことが確認されたことを発表。同日、会見を開き、説明を行った。

 名古屋と奈良の一戦は1-1のまま120分を経過して、PK戦に突入。奈良が2-4で迎えた4人目、金久保彩のキックはネットを揺らしたが、主審がキックフェイントと判断して、蹴りなおしを命じた。蹴りなおしのシュートもゴールとなり、3-4となると、名古屋は5人目の佐藤寿人が失敗して同点に。6人目のキッカーで名古屋DFワシントンが失敗したことで、奈良が3回戦進出を決めた。

 今回の「明らかな競技規則の適用ミス」は、キックフェイントと審判が判断した場合、当該選手は警告を受け、キックは失敗として蹴りなおしをすることはできないという点。今試合で言えば「4人目のキッカー終了時点で4-2となり名古屋の勝利」となるはずだった。しかし、実際は主審が蹴りなおしを指示したことで続行となっている。

 JFAは同事案について国際サッカー評議会(IFAB)にも確認した上で、11日に臨時の天皇杯実施委員会を開催し協議を行った。その結果、ペナルティーマークからのキック(PK方式)を1人目からやり直すことが決定した。

 会見に臨んだ須原清貴JFA天皇杯実施委員長は冒頭で、選手や関係者、サポーター、県サッカー協会など、各所へ謝罪。

「適用ミス」は審判団の「判定ミス」とは異なるものであると話し、「主審の判断の入り込む余地のない」ことと言明。「本来の競技としてのルールを適切に適用できなかったことに判断の余地はなく、非常にクリティカルなミス」と述べると、IFAB(国際サッカー競技会)とも議論を重ねた上で出した結論とした。

 問題の場面では、金久保のキックがフェイントであったかどうかはあくまで主審の判断となり、その決定が尊重されることを強調。その行為の是非ではなく、フェイントとみなした際の対応が誤りとなった。同試合を裁いた清水修平主審をはじめ、審判団については、「テストとしてこの問が出れば、間違いなく答えられるはずですが、ピッチで表すことができませんでした。真摯に受け止め、謝罪を述べています」と、話す一方で今後の審判委員会で、何らかの処分が下される可能性を示唆している。

 奈良の4人目のキックが失敗となり、そこで名古屋の勝利と判断してもよいのではないか、という点も議論されたが、1996年までは「PK戦は試合の一部ではないという競技規則がある」ため、最新のものにはその文言がないものの、IFABとも協議して確認したため、120分の延長戦までが成立し、試合の結果に直接影響を及ぼす場面での明らかな適用ミスであるため、PKそのものが成立していないものとみなすと判断したと説明。

 JFAの主幹試合では「過去、このような事例はありませんでした」というPK戦やり直しだが、発覚したのは試合翌日の7日、一般の方からの問い合わせだった。「3級審判員の方で、ルールの確認をしたいと。このケースは警告およびミスで終わるべきだったのでは?と問い合わせがあり、そこから我々も気づきました」(小川佳実JFA審判委員長)。その後すぐ、IFABに問い合わせ、8日には両クラブに状況を伝えている。

 再PK戦の日程や会場などはすべて未定となっている。6日のPK戦開始時のメンバーがそれぞれ出場し、なるべく早く開催することが望ましいと、あくまで協会としての希望を話した須原委員長だが、「私どものミスであるので、競技規則でガチガチに縛ってしまうのはどうなのか」「両クラブに非は全くなく、非は我々にあります」と、謝罪とともに、あくまで両チームの要望も受けつつ、判断していく。

 須原委員長は会見の最後、目を赤くさせつつ、「両クラブ、特に選手に申し訳ないことをしました」と改めて謝罪。「こういったことが今後無いよう、審判員の指導、全体の底上げを改めて徹底してまいります」と、審判の質の向上を誓っている。

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