前回王者の岡山学芸館は今年も躍進なるか[写真]=金田慎平
5回目の出場となった前回の全国高校サッカー選手権大会。ノーマークと言っても過言ではなかった岡山学芸館は初戦の帝京大可児戦を突破すると勢いに乗って、日本一まで駆け上がった。
PK戦での活躍が印象的だったGK平塚仁(3年)や、MF田口裕真(3年)、MF田邉望(3年)といった経験者が残っているため、“今年も強い”と思われがちだが、チーム作りはそう上手く行かない。「全く注目されていないチームが一気に注目された。サッカーを知らない人からは2連覇できるんじゃないと言われるけど、そんな簡単ではない」と口にするのは高原良明監督だ。
選手権の勝ち上がりによって新チームの発足が遅れた影響もあり、2月に行われた県の新人戦は準決勝で敗退。8年連続で続けていた中国新人大会への出場が途絶えた。春になってもチーム状態は上を向かず、プリンスリーグ中国の序盤戦は黒星が先行した。当時について主将の田口はこう振り返る。
「春先は自分たちでもなぜ悪いのか分かっていなかった。選手権の時は楽しさしかなかったのに、楽しむとか、みんなで協力して試合に勝つといった気持ちが持てていなかった。(チームが上手く行かず)キャプテンを変わるなら、早い方がいいのかなという気持ちもありました」
夏のインターハイも全国にたどり着けたものの、チームが志向する“縦に速いポゼッションサッカー”を披露できず、3回戦で姿を消した。そうした中、チームに浮上の兆しが見え始めたのは、夏休みに実施した石川遠征だ。インターハイ予選は前線の大型選手を生かすため、長いボールを増やしていたが、「自分たちのスタイルを変えた。蹴るばかりではなく、相手を見てしっかり繋ごうと意識するようになった」(田口)。課題だった守備もDF平野大樹(3年)と高山隼磨(3年)を中心に粘り強さが増し、大崩れしなくなったという。
「岡山県の中で警戒される感じはあったけど、この子たちが力を出せば県は絶対突破できると思っていた」と指揮官が振り返る選手権予選も終わってみれば、4試合14得点無失点と危なげない戦いぶりで選手権への返り咲きを果たした。
「めちゃくちゃホッとしました。まずは出なければいけないというプレッシャーがあった。県予選で負けて、(前年優勝校が在籍する都道府県代表校が入る)第1シードで他の高校が行くのはカッコ悪い。出ないのに優勝旗を持って行くのもカッコ悪い。とにかく県は制さなければいけないというプレッシャーは今まで以上に一番ありました」。高原監督がそう振り返れば、田口もこう続ける。
「選手権予選中はマジで寝られなかった。学校では『頼むで!』と言われるし、先生からもキャプテンの力が問われると言われてきた。自分がどんな犠牲になってもいいから、とりあえず選手権に出たかった。昨年の代には失礼になるかもしれませんが、昨年日本一になった時よりも、この選手権予選で勝てた時の方がうれしかった」
前年王者として、選手権出場を義務付けられた重圧から解き放たれた今、選手たちは心の底からサッカーを楽しめているはずだ。全国でも岡山学芸館らしいサッカーを存分に発揮できれば自ずと結果は付いてくる。それだけの力は今年もある。
取材・文=森田将義
By 森田将義