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昨年度の準優勝を“超越”するために 大津、財産と成長を選手権の舞台で

2022.12.28

2大会連続19回目の出場となる大津 [写真]=森田将義

 チーム史上最高成績を塗り替え、決勝まで進んだ昨年度の高校選手権は、青森山田に0-4で大敗。迎えた今年は、“超越”をテーマに掲げ、日本一のタイトルを本気で狙っているのが大津だ。

 とはいえ、昨年のチームを越えるチーム作りは簡単ではない。選手権での活躍もあり、新チームが立ち上がった当初はDF碇明日麻(2年)、MF田原瑠衣(3年)、FW小林俊瑛(3年)がU-17高校選抜に選ばれ、不在となる期間も多かった。選手が抜けたポジションも多く、新たな適任者を見極める作業からのスタート。4月に始まったプレミアリーグも選手を固定できず、昨年の躍進を支えた粘りと我慢の堅守が再現できず、8月に入るまでの9試合は1勝2分6敗と黒星が先行し、下位に低迷した。

 7月のインターハイは昌平を押し込みながら決定力を欠き、準決勝で敗退するなど、目標とする“超越”はなかなか果たせなかった。だが、夏を越えてからチームは著しい成長を遂げていく。大きく変わったのはチーム全体での守備意識だ。前から積極的にボールを奪いに行き、自陣まで運ばれても守備陣が身体を張って失点を回避する。攻撃もボールを持った選手が前方を追い越して行く動きが増えた。サイドハーフは攻守両面でハードワークを強いられるが、夏までに様々な選手を起用したことで、選手層の厚みがアップ。スタメンで出た選手が惜しむことなく、全てを出し切り、終盤になるとフレッシュな選手が交替で入る仕組みも上手く機能した。

 10月以降のプレミアリーグは6勝1分と負けなしを維持し、6位でフィニッシュ。「前期は全く駄目だったけど、後期は夏の遠征からみんなの自信がついてきた。インターハイで負けてから、和倉遠征など経験し、いざ後期が始まったら、自分たちがやってきたことをやれていた。うまくいかないこともありましたが、試合をどんどん重ねるに連れて慣れていき、行けるんじゃないかと自信がついてきた」。好調の支えた田原はこう口にする。

 試合に出ていた選手、出ていない選手含め、決勝まで進んだ昨年を経験しているのは大津にとっての財産になっている。「選手は、“負けないだろう”というメンタリティーを持っている。調子に乗っているわけではなく、精神的にタフになっているのは、去年から引き継げている部分。粘り強く継続してやれれば、大丈夫だ!みたいな精神的な強さはある」(山城朋大監督)。そうした自信は、チームの成長とともに確かな手応えに変わっているのは、間違いない。

「目指すのは選手権での優勝のみ。昨年の借りを返したい」。そう意気込む田原を筆頭に、この1年は昨年の悔しさを晴らすため、全てをサッカーに注いできた。“超越”に向けた準備は確実に進んでいる。あとは新たな歴史の1ページを開くだけだ。

取材・文=森田将義

By 森田将義

育成年代を中心に取材を続けるサッカーライター

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