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ケガを乗り越えたエース、負けから学んだチーム…女王奪還を果たした藤枝順心の強さとは

2020.01.13

決勝ゴールを挙げた池口響子 [写真]=吉田孝光

 第28回全日本高等学校女子サッカー選手権大会は12日、ノエビアスタジアム神戸で決勝戦が行われた。

 ここまでわずか1失点の藤枝順心高校(東海2/静岡)と、全試合で得点を重ねてきている神村学園高等部(九州1/鹿児島)の一戦は、エース・池口響子の決勝点により、1―0で勝利した順心が2大会ぶり4回目の優勝を果たした。

 順心は神村のハイプレスに苦しめられながら前半を終えたが、60分に歓喜の時を迎えた。準決勝で先制点を決めた順心の池口は、小原蘭菜からパスを受けて右サイドを突破。神村の國生乃愛からチェックを受けながらも力強く右足を一振りすると、神村GK若松杏海の右手をかすめるように、ゴール右上に決まった。

 値千金の決勝点を決めた池口は、前回大会決勝を上回る6469人が集まった観客席から、この試合一番の歓声を浴びた。

 2試合連続弾に晴々とした表情で試合後のミックスゾーンに現れた池口は、ゴールシーンについて当初、「あんまり覚えてないけど(ゴールは)狙ってないです」と言っていたが、話が進むにつれて「入るかもと思って(クロスを)上げたのもある」と徐々に変化し、記者たちの笑いを誘った。

 池口は前回大会の1回戦・常盤木学園高校(宮城)戦で、現在と同じ背番号13で先発出場したが、開始1分で受傷。5分後にそのまま途中交代となり、連覇を目指すチームもPK戦の末にまさかの1回戦敗退を味わった。

 右ひざ前十字じん帯断裂から、公式戦復帰まで10カ月を要した。現実主義で歯に衣着せない順心の多々良和之監督からは、「今季のチームは点が取れない」と評されていたが、それに対して池口は「得点を決められる選手になろうと思いながらリハビリを頑張っていた」と当時を回想する。そして、「女子サッカー選手は同じケガで苦しんでいる選手が多いので、自分が復帰してから点を決めて、同じケガの選手に勇気を与えられればと思っていた」との想いを込め、数カ月前には自身を苦しめていた右足から順心の優勝を呼び込んだ。

 これには多々良監督も「本人の想いが実ったゴール。努力の賜物。1年間、この日を目指して頑張ってきたから」とエースをねぎらった。

 3年生の中には、1年時に高校女子選手権優勝を経験した選手もいるため、多々良監督は「順心史上最強を目指すと大きなことを言っていた。夏のインターハイは1回戦で負けて、順心史上最弱かと思われたけど、よく優勝をつかみ取った」と、半年前を思い出しながら微笑んだ。

 夏のインターハイ1回戦負けは、チームのメンタル面を見直すきっかけにもなった。夏以降、逆境に立っても崩れないためのメンタルトレーニングを実施。「明らかに精神的に成長した。点が取れないのは昨季と一緒だが、昨季だったら耐えきれずに失点していたと思う。メンタル面で辛抱強くなった」と多々良監督は感慨深そうに話した。

 エースの見事な復活と、負けから学んだチームの成長。そのふたつが凝縮された高校女子選手権決勝だった。

文=馬見新拓郎

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