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ターニングポイントは監督へぶつけた“不満”…四中工の10番・森夢真が選手権で開花するまで

今年度の選手権で5得点を決めた森夢真 [写真]=野口岳彦

 1年生から名門・四日市中央工業(三重)の10番を背負うMF森夢真(3年)の才能は誰の目から見ても明らかだ。ボールを持ったら姿勢の良いドリブルで相手DFを切り裂く。ただ、上手いだけでなく、ボディーバランスの良さも魅力でタフに当たられても体勢を崩すことなく前進できる。囲まれたら相手の意表を突くスルーパスで味方を使うこともできるまさに天才肌のMFだ。

 一方で、足りない物も明確だ。昨年は運動量の少なさが仇となり、スーパーサブとしての器用が主になった。今年に入ってからは、メンタルの弱さが原因で波のある1年を過ごしてきた。ただ、才能を認める伊室陽介監督は「森夢真と心中する」とこの1年、誰よりも愛情を持ち、誰よりも厳しく指導し、晴れ舞台で輝く日を待ち続けた。そうした恩師の愛情ある指導が実ったのが、今回の選手権だったと言える。

チームはベスト8進出、森は5ゴールを記録

森の活躍もあり、四日市中央工はベスト8進出を果たした [写真]=野口岳彦

 今大会は、今季の主戦場となっていたボランチではなく、より持ち味を発揮できる左サイドMFでのプレーできたのが輝けた1つ目の要因だ。転機となったのは、選手権直前の練習試合だった。試合のスタートはボランチだったが、点を取るために試合途中で左サイドMFに移動。すぐさまゴールが生まれたため、ポジションを戻すことなく、大会に挑んだ。「ボールを受けた時に前を向きやすし、仕掛けやすい。シュートも打ちやすいので、やりやすかった」と振り返る通り、適職に入った森は水を得た魚のようにピッチを大暴れ。1回戦での日大明誠(山梨)戦では、前半13分にMF和田彩紀(3年)の右クロスをダイレクトで合わせて、今大会初ゴールを記録。後半7分には左サイドをドリブルで仕掛け、技ありのコントロールショットを決めた。幸先の良いスタートを切った森は2回戦と3回戦でもゴールネットを揺らし、得点王争いのトップに立った。

 上り調子で準々決勝の矢板中央(栃木)戦を迎えたものの、思い通りにゲームは進まない。序盤から「ドンドン蹴ってくる相手に対して、蹴り合いにならずもうちょっと繋げたら、惜しい試合になっていたと思う」と話した通り、チームとしての攻撃が機能しなかった。個人としても、ボールを持ったら徹底した包囲網を敷かれ、決定的な仕事は極わずか。苦しみながらも、ドリブルで活路を見出そうとしたが、「僕がボールを持った際に相手はすでに前にいたので、やりづらさがありました」。

 試合後は、「チームの目標であるベスト8は成し遂げたけど、今日の試合は本当に勝ちたかったので悔しいです。チームとしてもっと上に行きたかった」と悔しさを口にしつつも、「自分は今まで全国に出ても何もできずに終わっていたので、やっと輝けた」と、どこかホッとしたような表情を浮かべていたのが印象的だった。

「キャプテンを辞めたいと伊室さんに不満をぶつけた」

[写真]=小林浩一

 眠れる天才が最後の最後で輝きを放ったのには、理由がある。自らの代を迎えた今季は自らが志願してキャプテンになった。2月の新人戦こそ今年にかける想いを感じさせる好プレーを見せたが、3月以降はスランプに陥った。チームも7月のインターハイで初戦敗退。モヤモヤを抱えた森は選手権予選が始まる直前の10月に、「チームに対する不満が色々あった。堪えきれなくなって、キャプテンを辞めたいと伊室さんに不満をぶつけた」。

 もちろん、大事な時期になってそんなワガママが許されるはずがない。ましてや、伊室監督が監督初年度を懸けた森なら尚更だ。「キャプテンを辞めるなら試合に出さない。引退した3年生の気持ちを考えろ」と即座に却下されたが、森は「そこがターニングポイントかなって今は思う。言いたいことを言えてスッキリした。自分に足りなかった点にも改めて気づき一から頑張ろう、自分のストロングポイントを出そうと思えた。最後まで伊室さんについて行って良かったと今は思う」と口にする。

 選手権での活躍は苦しい時期を乗り越え、人間的に逞しくなったから。伊室監督は準々決勝後にこんな言葉を口にする。

「彼の良さを皆さんに見てもらって自信になったと思う。それは彼が苦しい時に堪えたり逃げずにやってきた成果だと思う。彼がそうしたことができない選手なら、1回戦で負けて誰にも力を見てもらえずに終わっていたと思う。5点取れたり、多くの人に取り上げてもらえたのはチームを鼓舞したり、苦しい時に諦めずに走ったから光が当たった」

 プロ入りを希望しながらオファーがなく、進退をかけて選手権に挑んだが、今では前向きに獲得を検討するチームもある。改めて森の才能を評価するJクラブのスカウトもいるため、大会後に嬉しいニュースが届く可能性は少なくない。眩いばかりの輝きをこの先のステージでも放ってくれるのを多くの人が待ち望んでいる。

取材・文=森田将義

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