青森山田のGK飯田雅浩はPK戦であるルーティンを行っていた [写真]=兼子愼一郎
ルーティンを重んじる選手は多い。パフォーマンスのアベレージを高めるために“いつも通り”を繰り返す。勝負に挑む上での『儀式』とも言うべき行動は、「これさえやれば大丈夫!」と選手の精神的な支えにもなる。
青森山田(青森)のキャプテンを務めるGK飯田雅浩にも1つのルーティンがある。12日に行われた第97回全国高校サッカー選手権大会準決勝、PK戦までもつれた尚志(福島)との大激戦で飯田はルーティンを武器にチームを決勝戦へ導いた。
PK戦で守護神が披露した正座
58年ぶりの“東北対決”となった尚志vs青森山田の一戦は、尚志の2年生エース・染野唯月がハットトリックを記録するも、青森山田も執念の粘りで3得点をマーク。互いに譲らす勝負の行方はPK戦に委ねられた。
後攻の尚志のキッカーがボールをセットした際、対する飯田はゴールの中で正座し、目をつぶった。少し間をおいて立ち上がり、ゴールライン上でシュートを待ち構えた。この動きを全キッカーに対して繰り返した。その効果か、尚志は3人目が枠外に外し、4人目のシュートは飯田がセーブ。最後の最後まで底力を発揮した青森山田が、2大会ぶりの決勝進出を決めた。
ルーティンを行う3つの理由
「2年前の廣末陸選手もやっていたんですけど……」。試合後、飯田は偉大なOBの名前を挙げてルーティンを説明した。2年前、青森山田を選手権初優勝に導いたGK廣末陸(レノファ山口)は、PK戦で同じルーティンを行っていたという。飯田は黒田剛監督のアドバイスでこれを真似し、PK戦に臨んだ。理由は3つ「自分を大きく見せるため」「自分のタイミングでPK戦を始めるため」「大舞台で心を落ち着かせるため」だ。飯田は以下のように説明した。
「自分の身体を小さく見せてから、ゴールラインに立ったときに大きく見せるということ。あとは、相手が(ボールを)置いて、自分が構えて、相手が蹴って――、というタイミングだと相手のペースに持っていかれる。相手が置いてから自分が正座をして時間を作って、自分のタイミングでPK戦を始めることを意識していました」
「PK戦の練習は結構やっていたんですけど、(黒田剛)監督から『廣末もやっていたから良いんじゃないか』と言っていただいた。本番までやるかは決めていなかったんですけど、あの大舞台で心を落ち着かせるということでも、正座をして正解だったと思います」
2年ぶりの全国制覇へあと1つ
連覇を目指した前回大会は、3回戦で長崎総科大附に0-1で敗れた。試合の度に選手たちは悔しさを口にしてきた。2年ぶりの決勝で相対するのは、昨年のファイナリスト・流通経済大柏(千葉)。総力戦を戦った青森山田に対し、流通経済大柏は準決勝で5-0と快勝を収めた。さらに、前半から得点を重ねたことで、5つの交代枠を全て使い、主力を温存。最終決戦へ余力は十分、万全の状態で青森山田との戦いを迎えようとしている。
準決勝に続き青森山田にとっては難しい試合になるだろう。それでも、飯田は最後に、「(決勝戦は)自分のサッカー人生で一番の晴れ舞台なので、どういう形でも勝利で終わりたいです」と意気込んだ。
2年ぶりの栄冠か、昨年のリベンジか……。決勝戦は14日、14時5分にキックオフを迎える。
取材・文=サッカーキング編集部
By サッカーキング編集部
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