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徹底的「チャレンジ&カバー」 明秀日立、守備でリズムを作って勝利

2019.01.01

昨年度ベスト8の明秀日立が今年度も初戦を突破 [写真]=野口岳彦

取材・文=本田好伸(提供:ストライカーデラックス編集部)

 この試合は間違いなく、明秀日立の「守備力の勝利」だった。前半、大阪学院は左サイドハーフの田中英哲を中心にサイドから果敢に攻略を狙い、実際に何度も、縦へ、中へと進入してみせた。しかし、明秀日立は最後のところでことごとくそれを封じ込めた。ほかにも、前半に6本ものCKを与えたが、長身がそろう守備陣がすべてをはじき返して、「守備では絶対に負けない」という気迫を、試合を通して見せていた。

「相手の10番を抑えたい気持ちがありました。いつもの形ではなく、器用な飯塚(翼)をそこに当てれば、最悪でも帳消しにできるかなと思っていて、そこの決断が今回は難しかった」

 萬場努監督は、スカウティングに基づいて、自分たちから仕掛けていく指揮官だ。この試合における一つのキーポイントを、相手のテクニカルなドリブラーがいる自陣右サイドに定め、その対応を普段は左サイドバックの飯塚に託した。その戦略は「逆だったらもっとやられていたと思うので、よくやってくれました」と、及第点の出来。しかし、実際に突破されるシーンも多く、完璧に封じることはできなかった。

 そこで生きたのが、明秀日立が信条とするチャレンジ&カバーだ。

「今日は右サイドバックが深町(琢磨)くんだったので、試合前からチャレンジ&カバーをしっかりしようと。それに、自分の裏のスペースも狙われていたので、そこの修正も試合中に話していました。正直、自分のところでやられたくはなかったんですけど、もし裏を取られても深町くんがいる信頼があったので」

 飯塚は、右サイドで相手を追い込みながら、かわされたとしても、カバーに来ている味方が対応している間に再びカバーリングする動きで、決定打を与えなかった。そうやってサイドから最終的に崩されなかったことで、後半は大阪学院も中央から右サイドを使うようになり、明秀日立が守備でペースを手に入れた。

 この試合は、同時に中央の対応も秀逸だった。萬場監督が「代えの効かないというか、いるだけで違うことをよく感じましたし、彼を中心に作ってきたので、ダメでも心中しようと思った」と絶大の信頼を寄せるセンターバックでキャプテンの高嶋修也が中央全域をケアした。しかし、高嶋はつい数週間前に負ったヒザの負傷を抱えながらの出場であり、ハイパフォーマンスではなかった。実際、「入れ替われることを嫌がって、ラインを下げてしまっていた」と、積極性や試合勘で鈍さをかいま見せる場面もあった。

 ただ、ここでも明秀日立のチャレンジ&カバーがポイントになった。

「大阪を勝ち上がってきただけあって、前半にその実力を感じて、後半はかなり危険だろうと思っていました。だから最終ラインは気合いを入れ直そうと。チャレンジ&カバーをはっきりすれば、2人目のところで絶対に取れると話しました。それで深町や(飯塚)翼が積極的にチャレンジしてくれて助かりました」

 高嶋が100パーセントではない分を周りがカバーしたことで、中央のピンチは皆無。さらにそこは、アンカーを務める成島茉宏の存在も大きかった。「あそこでどっしりと構えてくれるのは、最終ラインの自分としては安心できます。対人でも負けない強じんな体もありますから」と、高嶋が裏を取られても、あらかじめカバーリングしてくれる“縦のパートナー”がいたことも、明秀日立の守備を強固にしていた。

「守備から攻撃しようというのはずっと心掛けていたことです。前には津村(夢人)や二瓶(優大)などテクニックとスピードのある選手が多いので、大きくクリアしてもそれがアシストになって点が決まることもあります。だから守備から攻撃につなげようという意識はいつも持っています」

 高嶋がそう話すように、彼らの強さは守備からリズムを作るところにある。フィジカルや高さという武器に加えて、積極性と味方のサポートという、チームワークが生み出す最高の守備力。昨年、2回目の出場ながらベスト8に勝ち上がる快進撃を見せた彼らは、さらにパワーアップした姿で大会に戻ってきた。

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