2014.01.30

日ノ本学園を史上初の二冠達成に導いた「感謝する気持ち」

日ノ本学園
インターハイと高校女子選手権の二冠を達成した日ノ本学園 [写真]=日ノ本学園サッカー部

 男子の高校サッカー選手権大会と同様、高校女子サッカー選手権大会が1月に開催されるようになって2年目となる今年の大会は、夏のインターハイに続き兵庫の日ノ本学園が優勝。選手権後、二冠を達成したチームを冬霜の立つグラウンドに訪ねた。

■夏冬連覇、史上初の二冠達成!
 6日間で5試合。31得点という圧倒的な得点力のみならず、失点は決勝戦の1点のみと、ディフェンスの強さも見せつけた日ノ本学園。キャプテンとしてDFを率いた羽座妃粋は、「二冠を今年一年の目標にしていた」と言う。「ただ、インターハイの関西予選で優勝できず、不安を抱えた中での一年のスタートでした。でも、その大会で負けたからこそ、自分達がこのままではダメだと感じた部分もありますし、チームとしてもその時はばらばらで全然まとまっていなかったので、まとまらないとこういう結果が生まれてしまうんだなと実感しました。インターハイで優勝して、皇后杯では常盤木学園にも勝って、どんどん自信を持てた中での選手権だったので、モチベーションも高く、チーム状態も良かったと思います」と一年を通して成長をしてきた様子を教えてくれた。

 高校生から大学生、社会人、なでしこリーグまで幅広いチームが参加する皇后杯で日ノ本学園は、2回戦でライバルと言われる宮城の常盤木学園に勝利すると、3回戦ではなでしこリーグ4位の伊賀と対戦。一時は同点に追いつくなど、格上相手に健闘した。

 選手権で8得点を挙げ、得点女王に輝いた入江未希は、「伊賀には敗れましたが、自信はすごくつきましたね。伊賀の個の高さとチーム力で負けたので、通用した点、しなかった点を選手権までに修正できたので、すごく良い大会でした。相手がなでしこリーグに所属する強いチームだからということで、前半は自分達のサッカーができていなかったんですが、後半2点差がついてしまったので、開き直ってポゼッションを高める自分達のサッカーをし始めると、ゴール前までつなげるようになりました。個の力では勝てないので、ボールをつないでポゼッションを高めていけば、互角にやりあえる、というのが実感できて自信になりました」と敗戦の中で手応えを感じていた。

 一方、監督の田邊友恵は「自分の中で、皇后杯でなでしこリーグのチームと対戦するというのは一つの目標としていました。伊賀に勝つというところに私も本気で向かっていっていれば、勝てる試合だったんじゃないかと、今では思います。ただ、冬に向けた流れの中での試合というとらえ方をその時はしていたので、勝ち負けではなく、いかにチームを選手権に向けて持っていくかという考えだったので、その結果として、常盤木に勝てて、伊賀に負けたという印象です。皇后杯に向けてということではなかったので、難しい大会でもありましたね」と皇后杯を振り返った。

 12月7日に伊賀に敗れてから1カ月。課題を修正して迎えた選手権。チーム発足時から二冠を目指していたわけではないと田邉は言う。「結果だけにこだわりすぎると足元をすくわれると思うんです。私は、選手を育てることを一番に考えなきゃいけないので、そのバランスをどう取るかですよね。今年は生徒が結果を求めてきたので、自分もそこに向かって本気でやってきましたけど、根元のところは、それぞれが今後も良い選手になっていくっていう部分を持っていたからこその、結果だったのかなと思います。結果ばかりに目が行き過ぎると、生徒は違う方向を向いてしまうのかなという感覚です。うまく言えないですけどね」と笑いながら語る監督には、生徒たちの成長を願う教育者としての姿が伺える。

■感謝する力をチームの礎に
 田邊がチームを引き継いだのは、2012年の秋。初開催となったインターハイで日ノ本学園が優勝した後である。「上に立つプレッシャーってすごいんですよ」と率直に話す田邉だが、結果を残し続けてもいる。昨年の選手権は準決勝で常盤木学園に敗れたものの、今年は夏のインターハイ、冬の選手権と二冠を獲得。ただ、成績より前に、チームとして大事にしていることがある。「前任の上嶋先生からの考え方で、日ノ本の良さは周囲への感謝の気持ちだと思うんです。自分でも足りているとは思えないんですが、選手たちにも言い続けていることですね」

 上嶋前監督は、自身の体験をもとに、感謝することで、頑張れるようになる、と常日頃話していた。「サッカーって、性格が出るスポーツだと思っています。だから普段から技術やフィジカルよりも人間力を育てたいと考えています。献身的な動きができるか、人のためにできるかということが、大事になるスポーツですし、あと一歩の頑張りができるか、が大事なんです。頑張る力っていうのは、感謝の気持ちがどれだけ強いかっていうことだと思っています。女子サッカーですから、まだまだサッカーができる環境も限られていて、親御さんの送り迎えが必要だったり、いろんな人のお世話になっているんですよね。頭の中では分かっていても、なかなか感謝ってできない。それに気づいてもらうことが、一教師としての私の役割であると思っています」

 こうした日ノ本の「感謝する気持ち」は、監督から監督へ、そして選手から選手へと引き継がれている。選手権で、スタンドから声を枯らして応援を続けたメンバーたち。キャプテンの羽座は、サブメンバーたちについてこう話す。「応援してくれている控えのメンバーたち、保護者の方々が色々な企画をして支えてくださって、本当にチーム一丸となって達成した二冠だったのではないかと思います。選手ごとにオリジナルの応援歌もあって、自分が試合に出られないから、本当にしんどいとは思いますけど、チームのために、心を込めて歌ってくれたことには、本当に感謝しています」

「生徒の個性に応じた指導ができる引き出しのある指導者」へと更なるステップアップを目指す田邊だが、二冠を達成した現在でも、まだまだ本物の強いチームにはなれていない、と断言する。あくまでも謙虚に、感謝の気持ちを持ってサッカーに取り組む日ノ本学園が、高校女子サッカーに新たなスタンダードを築いている。

田邊友恵(たなべ ともえ)|1980年、千葉県生まれ。現役時代のポジションはFW。小学1年からサッカーを始め、東京女子体育大で1年からレギュラー。2003-07年にアルビレックス新潟レディースでプレーし、引退後はサッカーの専門学校「JAPANサッカーカレッジ」で指導者。2012年秋から日ノ本学園監督に就任。

羽座妃粋(はざ ひすい)|1996年3月19日生まれ、兵庫県出身。167cm・55kg、DF。日ノ本学園サッカー部キャプテン。卒業後は、大学へ進学

入江未希(いりえ みき)|1995年9月21日生まれ、奈良県出身。153cm・47kg、MF。卒業後は、ベガルタ仙台レディースへの入団が内定

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