2016.11.08

富士北麓が女子サッカーの新たな聖地に。サッカーの魅力が詰まったU-12女子大会は大盛況のうちに閉幕……フジビレッジカップ ガールズチャレンジ2016

1984年10月31日生まれ。山梨県甲府市出身。日本ジャーナリスト専門学校⇒編集プロダクション⇒フットサル専門誌⇒2011年からフリーとなりライター&エディター&カメラマンとして活動。元ROOTS編集長。現在はfutsalEDGE(http://www.futsaledge.jp )などで執筆中。

写真・文=本田好伸

チャレンジする姿を見せる子どもたち

 10年ぶりくらいに乗った富士急行線に揺られながら、何度経験しても、同じような反応をしてしまう。大月駅からしばらく進むと、向かって左手側に雄大にして偉大なる世界の“FUJIYAMA”が現れ、いつも背筋がピンとなる。そして河口湖駅に着くと、外国人観光客の多さに驚かされた。数年前に世界遺産に登録されたことで、国内外の富士山に対する価値が、再認識されているのだろう。そこから車で15分ほどの場所にある、鳴沢村へと向かう。“富士の麓(ふもと)”というだけで、テンションが3倍くらい上がっていた。

 10月15日、16日、山梨県・鳴沢村にある富士緑の休暇村で、U-12女子を対象にした8人制サッカー大会「フジビレッジカップ ガールズチャレンジ2016」が開催された。

 富士緑の休暇村とは、今大会を主催した富士観光開発株式会社が手掛ける施設であり、各種スポーツと宿泊、セミナーなどオールインワンで大会や合宿ができる場所。「フジビレッジ」と名付けられている人工芝グラウンドは、フルコート2面(100m×68m)、ジュニアコート5面(80m×46m)を取ることができ、富士北麓(ほくろく)と呼ばれるこのエリアで最大規模を誇っている。

「日本女子サッカーを盛り上げよう」を合言葉に開催された今大会は、山梨県U-12女子トレセンがホストチームを務め、同じく県内の女子チーム、武田消毒ジェイドFC、静岡県の富士レディースFCジュニア、東京都のSOCIOS.FC、Grant FC Joiasが参加。雲ひとつない晴天に恵まれ、まさに“サッカー日和”の中、子どもたちは広大なピッチを駆け回った。

 開会式では、小学生時代に群馬県選抜に選出された経験を持つという、プレーヤー出身のモデル・タレントの長谷川ゆう氏が、フジビレッジカップ ガールズチャレンジ応援サポーターとして登場し、進行を担当した。そして、富士観光開発株式会社の取締役副本部長・金子智弘氏が子どもたちの前で挨拶した。

「今大会の開催は、この場所を聖地にしたいというところから実現しました。皆さんが大人になるにつれて、益々サッカーをできる環境をつくり、女子サッカーの底辺拡大に努めていきたいと思います。ぜひ皆さんも頑張ってください」

 大会開催には、なでしこジャパンがリオ・オリンピック出場を逃したことも大きいのだという。女子選手の普及や育成、強化こそが必要であると痛感した同社が、その環境を提供していくことを決意し、手始めにU-12の女子大会の開催を推し進めたのだ。

 プレーする子どもたちに、そんな“大人の事情”が理解できるかどうかは定かではないが、ただ「ガールズチャレンジ」というメッセージに込められた思いは間違いなく伝わっていたようであり、選手たちは大会中、果敢にチャレンジする姿を見せていた。

 初日は予選リーグが行われ、2面に分かれて試合が続いていく。アップスペースにはキックターゲットやキックボウリングといったレクリエーションもあり、選手たちは夢中になってスコアを競っていく。試合中の真剣な表情と激しさ、試合後のくだけた笑顔と柔らかさの温度差が、U-12女子大会ならではの雰囲気をつくり出していた。

 そんな折、フローラン・ダバディ氏が大会を訪れ、選手と談笑する一幕があった。ダバディ氏を知らない世代の子どもたちは、目の前の人がかつて日本代表の通訳を務めた人物だと知ると、一気に目を輝かせて、矢継ぎ早に質問を投げ掛けていく。サッカーという言語を通じて、人々の距離が縮まり、学びの場が増えていくという光景は、まさにサッカーの魅力に他ならなかった。

“山梨対決”を制した県トレセンが大会初優勝!

 大会は初日を終え、これから“合宿”を楽しむ子どもたちは、疲れも見せずに宿舎へと向かっていった。仲間との交流を深め、“同じ釜の飯を食べる”ことの意義は計り知れない。そして翌日にはまた、一段と張り切った表情を見せる子どもたちの姿があった。

 2日目は、順位決定トーナメントの合間に、山梨学院大学女子サッカー部の田代久美子監督によるクリニックも開催された。参加選手を10グループに分け、パスやゴール、ボールコントロール、ドリブル、ゲームなどを意識した5つのセクションが用意された。田代氏は、「相手を見ること」、「チャレンジすること」を強調し、厳しくも温かいまなざしを選手に向け、子どもたちにメッセージを伝えながら指導をしていた。

 その後、大会はいよいよ、決勝戦を迎える。勝ち上がったのはなんと、山梨県トレセンと武田消毒ジェイドの2チーム。この“山梨対決”は、ハイレベルな戦いとなった。前半は互いにチャンスを作りながらも、互いのDFも機能して0-0。迎えた後半、カウンターから中央を抜け出した山梨県トレセンの中根舞姫選手がこのチャンスを確実に決めて先制すると、その数分後には、再び中根選手がゴールネットを揺らし、試合に終止符を打った。

 その後、閉会式が行われ、優勝、準優勝、そして3位のSOCIOS.FCが表彰。得点王争いは4得点で山梨県トレセンの九鬼ゆら選手、武田消毒ジェイドの一瀬葵夢選手、富士レディースFCジュニアの南條桜都選手の3人が並んだが、成績順で九鬼選手が得点王を受賞した。そして、決勝で2ゴールをマークした中根選手が、最優秀選手に輝いた。

 最後に、金子氏が「成績も大事ですが、こうした交流で仲間が増え、再会を喜べる関係になっていってくれたら嬉しいです。それと、将来のなでしこリーグ、ワールドカップ、オリンピックで活躍してくれることを期待しています」と参加した子どもたちにメッセージを送り、2日間にわたる大会が幕を閉じた。

 今大会には、本当に様々な選手が出場していた。スピード、テクニック、キック、パワー、アジリティ、バランス、戦術眼、判断力、決断力など、あらゆる能力に秀でた選手がそろい、自分の長所を試合で存分に披露していた。体の小さな選手が繰り出すダイナミックなプレーには、今後のさらなる成長が予感される。そして何より、純粋に試合を楽しむ選手が多かったことが、今大会で一番の収穫だったのかもしれない。

 3位を手にしたSOCIOS.FCの小林晃監督は「普段は男子チームで活動している選手が多く、女子との対戦機会が少ないので、自信を付けさせること、自分たちの力量を図るためにも良いと思って参加しました」と話したが、選手はまさに、試合ごとにプレーの精度を高め、自信を深めていく様子を見せていた。そして自信が深まることで、よりサッカーを楽しむことができるという、フットボール本来の魅力を選手たちは体現していた。大会はまだ第1回目を終えたばかりだが、女子サッカー、引いては日本のフットボールの未来を見据える大きな一歩が踏み出されたことは間違いないだろう。

 選手たちがピッチを後にして間もなく、辺りにはポツポツと雨が落ちてきた。山の天候は変わりやすいというが、なんだかこの大会が、富士山の力に後押しされていたのではないかと、ふと思わされた。そして、選手たちと同じように、合宿終わりの物寂しさのような、胸の中がポッカリと空いたような感覚を覚えながら、会場を後にした。

 この場所を、女子サッカーの聖地に――。またこの場所に、戻ってくると誓って。

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