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ジャイキリ本の著者が明かす③「意見の対立を超えるプロセスを経ないと、チームにはなれない」

2016.09.12

中小企業の経営者や大企業の管理職に向けて「チームビルディングプログラム」を展開する仲山進也さんは、組織の成長過程を「フォーミング(形成期)」「ストーミング(混乱期)」「ノーミング(規範期)」「トランスフォーミング(変態期)」の4つに分類する。そして、「勝てる組織になれるかどうかは、意見の対立を超えた経験があるかどうか」だと話す。

「ストーミング」の時期に“意見の対立”が起こる。対立はできれば避けたいような気もするが、なぜチームの成長に不可欠なのか。「ストーミング」を効果的に乗り越えるアプローチを聞いた。

インタビュー・文=菅野浩二
写真=兼子愼一郎

――仲山さんの著書『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則――「ジャイアントキリング」の流儀』を拝読しました。組織が成長する4つのステージの中でも、「ストーミング(混乱期)」の話がとても印象に残りました。メンバーが意見をぶつけ合う時期のことで、組織の成長として避けられない局面ではありますが、対立や衝突は時にネガティブに捉えられてしまいますよね。

仲山進也 その通りです。ただ、見落としがちなのが、第1ステージの「フォーミング(形成期)」をちゃんと進めることなんです。すなわち、相互理解を深めることで「ここまでなら本音を言っても大丈夫かな」という関係性をつくることで、自然とストーミングが起こっていきます。いきなり場を混乱させるようなアクションをとることとは違うんです。
 あと、「ストーミング」を超えやすくするためには、仕事でいきなりやろうとするより、ゲームのようなアクティビティで体験するほうがリスクは小さいです。

――確かに、仕事だとそれぞれの立場があってなかなか自由に意見が言いにくい場面もあります。

仲山進也 しかも、失敗できないから慎重になりますしね。私が手がけている「チームビルディングプログラム」だと、ゲームのようなアクティビティで「ぷちストーミングを超えて成果が出る」という体験ができるので、その体験を共有したメンバー同士だと「仕事もアクティビティだよね」と言いながらチャレンジができるようになります。

あと、「ストーミング」が起きやすくするには、「誰もやり方がわからないことをやる」というのがポイントです。メンバーで誰かがやり方を知っていると、その人のやり方や言う事に従おうとします。特に、上司が「俺はこのやり方を知っているから」と言うと、メンバーはそれをただ聞くだけになってしまう。そうなると「ストーミング」は起こりません。いずれにせよ、「ストーミング」を超えるプロセスを体験しないと、意見を言い合う大切さにも気づきにくいし、チームとして成長していけないのです。

――意見をぶつけ合う時の難しさとして、意見や企画に異議を唱えているだけにもかかわらず、何か人格を否定されているかのように感じてしまうこともあります。

仲山進也 「ストーミング」は無駄に感情的に言い合うことではないんです。「ストーミング」の本質はそこにいるメンバー全員が、思っていることや見えているものを場に出して、それをすり合わせながら、自分たちのやり方やルールを決めていくコミュニケーションです。たとえば、全員がポストイットに意見を書いて、「せーの」で見せ合うだけで「ストーミング」が進んだことになる。内容と発言者を切り離したいなら、名前を書かなればよいですね。

「目的地が「富士山の頂上」だとわかれば、ビーチサンダルを履いてくる人はいなくなる」

――「ストーミング」を超えるにはビジョンが大切というお話が本にもありました。ビジョンの立て方として一番わかりやすいのは数字だと思います。サッカー選手だとゴール数、ビジネスパーソンだと売上目標のようなものですよね。一方で、大義のようなもの、あるいは夢のようなもののビジョンの掲げ方もあります。

仲山進也 ビジョンって絵ですよね。つまり目に見えるイメージです。だから単なる数値目標はビジョンではないのです。売上10倍を目指すとして、みんなが持っている「10倍になったときのイメージ」はバラバラなのが普通です。「売上が10倍になったとき、こんな品揃えで、商品はドローンも使って配達していて、こんなお客さんに囲まれていたいね」のようになるとビジョンです。

「夢」というのも、人によってはフワッとしすぎていてビジョンと呼べない場合もあります。カーナビでいえば「現在地と目的地」がみんなで共有されている状態がチームです。それらがはっきりしていれば、その間を埋めるために何が必要か見えてきて、それぞれの考えもズレにくくなります。目的地が「富士山の頂上」だとわかれば、ビーチサンダルを履いてくる人はいなくなるわけです。

――ビジョンを示す人は、世の中の先を見据える能力に長けている必要がある気がします。

仲山進也 楽天の三木谷(浩史)社長は私が入った20名の頃、「日本の中小企業を元気にする」ことで「世界一のインターネットサービス事業」を目指すと言っていました。当時は「楽天市場」しかありませんでしたが、おそらく三木谷の中にはもっと先の絵があったと思います。
 当時、銀行を辞めて楽天を起業したストーリーを取材されていて、記者の方から「金融はやらないんですか?」とよく聞かれていました。三木谷は「うちは楽天市場一本でいきます」と答えていましたが、「いずれネット金融事業を」という思いはあった気がします。今いるメンバーがワクワクしやすいように、「現状で共有すべきビジョン」と「もっと先のビジョン」を使い分けていたように思います。

ジャイキリ本の著者が明かす①「当時の楽天はまだ20人しかいなくて、日々新しいことが起こる状態でした」
ジャイキリ本の著者が明かす②「これまでの会社が30年くらいかけて経験する4つのステージの成長痛を、楽天では5年で経験できた」
ジャイキリ本の著者が明かす④「言われたことしかやらずに自分で仕事をつくっていかない人は「やる気がない」のだと誤解していました」

楽天株式会社 楽天大学 学長
仲山考材株式会社 代表取締役
仲山 進也(なかやま しんや)

北海道生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。
シャープ株式会社を経て、1999年に社員約20名の楽天株式会社へ移籍。初代ECコンサルタントであり、楽天市場の最古参スタッフ。
2000年に「楽天大学」を設立、楽天市場出店者42,000社の成長パートナーとして活動中。
2004年、Jリーグ「ヴィッセル神戸」の経営に参画。
2007年に楽天で唯一のフェロー風正社員となり、2008年には仲山考材株式会社を設立、Eコマースの実践コミュニティ「次世代ECアイデアジャングル」を主宰している。
著書『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則』
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By サッカーキング編集部

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